現場から:相模川の今昔 /神奈川
毎日新聞 2012年07月31日 地方版
相模原市緑区上大島の相模川左岸べりに住む井上勇さん(78)は、流域で最後の舟大工だ。自宅前はアユの好漁場。若いころ、暇があれば釣りをした▼上流に城山ダムができる1960年代初めまで、川はスイカの香りが漂うほどアユが群れた。往時、大島近辺で30人の専業漁師がいた。舟を操っての友釣り。1人の持ち場は約50メートル区間で、それぞれ軽く50匹は釣れた▼ウグイは、漁師それぞれが石を積んで産卵場を設け、投網を打った。魚は仲買に売り、半原(愛川町)や近くの田名(緑区)の料亭に卸された▼農業用取水堰(ぜき)ができ、アユの遡上(そじょう)が減った。60年代半ばまで下流域で盛んに砂利が採取された。ダムで砂利の供給もストップした。川床が約4メートルも低くなった▼河川環境が激変する中、上大島の友釣り区域で5年前、アユが縄張りを作れるように人頭大の石が数多く投入された。以来、例年8月半ばから体長30センチ級の尺アユが出る。井上さんの懐古談を聞きながら今昔を思った。【高橋和夫】
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