長良川下流域は豊かな漁場。川漁師の大橋さん兄弟はモクズガニ漁を行っている。しかし、長良川の河口には河口堰が建設され、上流は三五キロ付近までその影 響で流れが緩やかになっている。その場所で行われるモクズガニ漁。どうやって、カニの通り道をみつけてカニカゴを仕掛けているのか?その謎を探っての二回 連載!一回目です。
長良川の下流域で秋に行われるモクズガニ漁。
一昨年のこと、漁を始めるという日に、撮影の準備をして大橋さん宅を訪ねた。すると、弟の修さんが意外なことをおっしゃった。
「今日は舟に乗せられんよ」
大橋さんの舟に乗せてもらうようになって二十数年、春のサツキマス漁など毎年何度となく漁に同行させていただいていたが、いままで同乗を断られたことなど一度もなかったのだ。
モクズガニ漁は籠(かご)を水中に設置する籠網漁だ。舟を追って橋の上から漁を見学することにした。
長良川河口から30キロ、大藪大橋でしばらく待つ。やってきた舟にはカニカゴ、篠竹(細めの竹)が積んであった。舟のエンジンを止め、竿で川底を探る。場所を決め、竿をさして舟の位置を固定する。その場所に5mくらいの篠竹を川底に差し込む。その作業は相当の力業で舟は激しく左右に揺れた。篠竹には餌となる魚のあらを入れたカニカゴが結わえてあった。
当時75歳という修さんは舟の上を舳先に行き、艫(とも)にもどってほとんど小走りに動き回りながら、一連の作業を行うのだった。これでは舟に同乗することはとても無理だ。
見ていると不思議なことが気になりだした。橋の近くでは中央に、すこし上流では右岸がわに、そしてさらに上流の場所では左岸近くと、カゴを設置する場所を変えている。漁場のある場所は河口から30から36キロ、長良川河口堰ができて水位の変動が小さくなり、流れが緩やかになった区間にあたる。水面は平坦で水面下の様子は遠目にはわからないのだが大橋さんは何らかの河床の違いを見通しているようだ。
船着き場で待って、どのような場所を選んでカゴを仕掛けるのか尋ねた。
「通り道に仕掛けんとカニはとれん」
謎のような答えが返ってきた。
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