新潟久紀ブログ版retrospective

土木部監理課18「降格並みの出向内示に耳を疑う(その2)」編

●降格並みの出向内示に耳を疑う(その2)

 人事の幹部たる相手は「暫く考えさせてくれ」という反応を想定していたようで、私の即決に少し驚いたようだ。通常、国から県、県から市町村という人事交流に際しては、国の課長補佐なら県に部長で赴任するといったように、経験の幅広さや奥行き等を踏まえて"格付け"を上げて処遇するのがよく見られる形態だ。県の課長級職員が部長制を敷いている市役所に出向するに当たっては、部長格で処遇されるのが従前での倣いであった。それが今回は、県の課長級を4年も経験した私を部長制を敷く燕市役所に課長職で出向させるという。部局の人事と労務管理を担当してきたほかならぬ私自身がその異例さに、つまりは実質的な降格並みの扱いとなる出向に、少なからず抵抗するだろうと予測していたように見受けられた。
 私は逆に、近年の人事と労務管理に精通してきたからこそ、今回の打診を受けようという思いに至ったのだ。この打診を断っても県本庁の中で今より力を出せる処遇を受けられるとは思えない。横スライドの異動で、場合によっては庁内でしばしば見られて噂されているように、女性登用の急進のために抜擢された女性課長を支えるための黒子として、下働きや汚れ役に徹っすることで年月を都費するかもしれない。こんな閉塞感には見切りを付けた方がましなのかもしれないと思えたのだ。
 市役所という外部の団体への出向であるので早めに打診を頂いたのであるが、正式な異動内示まではまだ月日がある。私が内諾したことは私の上司である副部長限りで伝達されたようだが、同僚や部下に漏らすわけには行かない。異動内示までは何食わぬ顔で監理課参事としての執務を行う日々を重ねるのであるが、私は水面下で、燕市の企画財政課長に赴任すると同時に遺憾なく力を発揮するための準備を始めた。
 出向先のポストは県から初めての受け入れになるとのことで、前任者となる県職員がおらず本音や裏話を交えた引継ぎを受けることができないという。一方で、市役所の職員達や市議会議員達としては「県職員なんぼのもんじゃ」と待ち構えているに違いない。市役所プロパーにとっては貴重な課長ポストに県職員である私が割り込むわけだから場合によっては敵意すら持っているかもしれない。四面楚歌の地への赴任といえば財政課から病院局へ異動した時を思い出す。
 それにしても、市役所の企画財政課長といえば、県でいう知事政策局政策課と総務管理部財政課というように企画と財政の両方を統括するポストだ。責任の大きさに気が重いが、"やりがい"も大きいに違いない。頭の切り替えの早い私はそう思うと同時に、そうでも思わないと、客観的に見たこの"降格左遷"は自分の心の中で飲み込めないとも感じていた。
 3月の半ば、定例の異動内示が発表されると、部下など周囲はざわついた。私の燕市役所への出向が初めて知れ渡ったのだ。口の悪い旧知の職員からは早速、励ましなのか蔑みなのかわからないようなアイロニックな声がけを頂く。「県の課長級職員が部長制をとる市役所に課長職で出向って、これ降格左遷じゃね」と。返す言葉もない。土木部監理課参事として最後は、苦笑いしてやり過ごす日々が年度末まで続いたのだ。

(「土木部監理課18「降格並みの出向内示に耳を疑う(その2)」編」終わり。県職員としては異例の職場となる燕市役所の企画財政課長への出向の回顧録「燕市企画財政課1「出向の事前準備」編」に続きます。)
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