第96条【行政権と内閣】
日本の行政権は、会計検査院、独立行政委員会、および、人権救済局を除き、すべて内閣に属する。
(2)内閣には、行政の説明責任と実行責任がある。
第97条【内閣の組織】
内閣は、法律の定めにより、その首長たる内閣総理大臣1名およびその他の国務大臣で組織する。
(2)(イ)元自衛隊に属したことのある人、または、(ロ)本条発効以後に警察組織もしくは海上保安組織に属したことのある人は、内閣総理大臣およびその他の国務大臣になれない。
(3)内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。
第98条【内閣総理大臣の指名、衆議院の優越】
内閣総理大臣は、国会が国会議員の中から議決で指名する。国会議員は、自らこの指名を辞退する権利がある。この指名は、他のすべての案件(あんけん)に先だって行う。
(2)衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、(イ)法律の定めにより両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、または、(ロ)衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に参議院が指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
(3)内閣総理大臣は元首(げんしゅ)ではなく内閣の長である。
第99条【国務大臣の任免】
内閣総理大臣は、内閣総理大臣以外の国務大臣を任命する。国会議員および国民は、自らこの任命を受諾する権利と辞退する権利をもつ。
(2)内閣総理大臣以外の国務大臣の任命において、内閣総理大臣は、性別、人種、民族的出身、国民的出身、居住地域、言語、歴史的被差別集団、家系、婚内子婚外子の別、社会的出身、社会的地位、宗教、政治的意見、思想、信条、教育、財産、収入、遺伝的要素、体の特徴、病気、心身の状況、性的少数者か否か、その他不合理な理由、によって差別してはならない。
(3)国務大臣の任務と人数の変更は、法律で定める。
(4)内閣総理大臣およびその他の国務大臣の過半数は、国会議員の中から任命しなければならない。
(5)国会議員以外から任命されて就任した国務大臣は、就任期間中、国会議員から任命されて就任した国務大臣と同様、公務員とされる。
(6)内閣総理大臣は、理由を明示して、いつでも任意に内閣総理大臣以外の国務大臣を罷免できる。内閣総理大臣は、すみやかに任命により欠員を補充しなければならない。
第100条【内閣総理大臣の職務】
内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務および外交関係について国会に報告し、ならびに行政各部を指揮監督する。
第101条【内閣の事務】
内閣は、他の一般行政事務のほか、次の事務を行う。
1 法律を誠実に執行し、国務を統括すること。
2 国会が批准した条約を締結し公布すること。ただし、事前に、万(ばん)やむをえないときは事後に、国会の批准決議を経ることを必要とする。内閣が条約を締結後に国会が批准を否決した場合、内閣はその条約締結をただちに取り消さなくてはならない。
3 本憲法および法律の規定を実施するために、政令を制定し公布すること。ただし、政令には、その法律が特に委任しない限り、罰則を設けることができない。
4 外交関係を処理すること。
5 法律の定める基準にしたがい、国家公務員に関する事務を専管処理すること。
6 予算を作成して国会に提出すること。
7 大赦(たいしゃ)、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権を決定し公布すること。
(2)(イ)憲法、法律および政令の公布、(ロ)外交文書の認証、(ハ)条約の署名、批准、締結の公布、(ニ)国際法規の認定の公布、(ホ)国務大臣その他法律の定める公務員の任免、(ヘ)国会の召集、(ト)衆議院の解散、(チ)国政選挙の施行の公示、(リ)国民投票の施行の公示、(ヌ)大赦、特赦、減刑、または復権、ならびに、(ル)死刑の執行命令、は、内閣総理大臣の名において内閣が自ら行わなくてはならず、他に委任してはならない。
第102条【儀礼官(ぎれいかん)】
内閣は、法律の定めにより、儀礼官(ぎれいかん)を、国民の中から指名し、国会の議決を経て任命することができる。国民には、この指名を自分の意思で辞退する権利がある。
(2)儀礼官は公務員であり、その唯一の任務かつ唯一の権限は、(イ)外国首脳、大使、公使、および国内外から政府への公式の来客の接受(せつじゅ)、および、(ロ)外国首脳の冠婚葬祭への出席、である。その他の国内外のイベント、議院、閣議および裁判への出席および国内の冠婚葬祭への出席はできない。
(3)儀礼官は元首でも国民の代表権者でもなく、前条の権限を超える権力および権威は与られず、また、国家権力または権威の裏付けのある演説、発表、認証、批准あるいは署名をすることはできない。
(4)儀礼官にも、公務員として憲法順守義務がある。
(5)儀礼官は0~4名で、その任期は1年以上30年以内の範囲で法律で定める。儀礼官を一生に2期以上務めることはできない。儀礼官を世襲で任命すること、および禅譲で指名することを禁止する。儀礼官は、儀礼官以外の公務員と兼務できない。儀礼官は一般公募または選挙することができる。内閣は、いつでも任意に儀礼官を罷免できる。儀礼官は自分の意思でいつでも辞任できる。
(6)儀礼官は、他の公務員と同様の待遇を受け、法律の定めにより、国庫から、内閣官房長官(かんぼうちょうかん)の年間報酬を超えない適正な水準の報酬を受ける。儀礼官の家族であって儀礼官でない人には、特別な任務、および特別な待遇は与えられない。
第103条【法律・政令の署名、連署】
すべての法律および政令には、法務を所管(しょかん)する国務大臣が署名し、内閣総理大臣も連署することを必要とする。
第104条【条約の締結】
内閣は、締結を考える条約を、自動執行か非自動執行かの区分を明示し、原文が日本語でない場合はさらに、(イ)内閣法制局による日本語公定訳案(こうていやくあん)、および、(ロ)その日本語公定訳案と原文の同一性に関する、民間の委員を含む同一性検証委員会の合格証、を添付して、国会に提出する。同一性の責任は内閣が負う。国会は、法律と同様の手続の決議をもってこの条約を批准する。内閣は、国会に批准された条約を締結し、公布する。批准され締結された条約の日本語公定訳は、原文に準じる法的効力をもつが、原文と相違する場合は原文が優先する。国会に批准されなかった条約は、締結できない。
第105条【違憲と判決された政令・条約・行政行為への対応】
最高裁判所または一般裁判所によって特定の政令、条約または行政行為が違憲であるという判決が下された場合、内閣は速やかにその事案を検討し、行政機関として必要な対応をする。
第106条【衆議院の内閣不信任】
(イ)衆議院が内閣不信任案を出席議員の過半数で可決したとき、または、(ロ)衆議院が内閣信任案を出席議員の過半数で否決したとき、は、10日以内に衆議院が解散されない限り、内閣は総辞職(そうじしょく)をしなければならない。
第107条【衆議院解散の要件】
内閣総理大臣は、(イ)衆議院が内閣不信任案を可決したとき、または、(ロ)衆議院が内閣信任案を否決したとき、または、(ハ)内閣が内閣と衆議院との相互信頼を失う理由があると判断したとき、は、理由を明確に宣言したうえで衆議院を解散することができる。
(2)前項の衆議院解散理由は、(イ)参議院が内閣不信任案を可決したこと、(ロ)参議院が内閣信任案を否決したこと、および、(ハ)内閣が内閣と参議院との相互信頼を失う理由があると判断したこと、を含んではならない。
(3)解散・総選挙後の特別国会で、内閣総理大臣は、前の解散と同じ理由で衆議院を解散することはできない。
第108条【参議院の内閣不信任】
(イ)参議院が内閣不信任案を出席議員の3分の2以上で可決したとき、または、(ロ)参議院が内閣信任案を出席議員の3分の2以上で否決したとき、内閣は、衆議院の解散をすることなく、ただちに総辞職をしなければならない。
第109条【内閣総理大臣の欠失または総選挙後の総辞職】
(イ)内閣総理大臣が欠けたときは、または、(ロ)衆議院議員総選挙のあと最初に国会の召集があったとき、内閣はただちに総辞職をしなければならない。
第110条【総辞職後の内閣の職務】
内閣総辞職の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されただちに国務大臣が任命されるまで、引き続きその職務を続行する。
第111条【国務大臣の不逮捕特権】
国務大臣は、(イ)内閣総理大臣の同意がある場合、および、(ロ)その他本憲法もしくは法律の定める場合、を除いては、その在任中に逮捕されることはない。会期前に逮捕された国務大臣は、その議院の要求があれば、会期中釈放しなければならない。
第112条【国務大臣のリコール】
選挙権を有する国民は、法律の定めにより、有権者数の3分の1以上の署名または電子的署名をもって、その代表者から、選挙管理委員会に対し、内閣総理大臣およびその他の国務大臣の同時に1名以上の罷免の請求をすることができる。
(2)前項の請求があったときは、選挙管理委員会は、直ちに請求の要旨を官報(かんぽう)、政府ウェブサイト、主要テレビ局での放送、主要全国新聞、主要全国新聞ウェブサイト、全都道府県議会ウェブサイト、および全国民への書面通知によって国民に提示しなければならない。
(3)第1項の請求があったときは、選挙管理委員会は、請求から2か月以内に、その罷免請求を有権者の投票に付さなければならない。
(4)前項の投票によって罷免請求に過半数の同意があったときは、罷免を請求された国務大臣はその職をただちに失い、かつ、罷免された国会議員は議員の籍をただちに失う。さらに、罷免された国務大臣に内閣総理大臣が含まれていた場合には、内閣はただちに総辞職する。一方、罷免された国務大臣に内閣総理大臣が含まれていなかった場合には、内閣総理大臣はただちに別の人を国務大臣に任命しなければならない。また、議員の欠員に関しては、法律の定めにより、補欠選挙を行う。
日本人は歴史的に行政権に対しての信頼は強いので、強い行政権というのは悪くない気がします、その代わりに開発部さんのように行政権に法案提出権は認めません、三権の明確な分離を旨としますので。ただアメリカのように法案拒否権は認めますが。
強力な行政権を押さえる必要があるのですが、その役目は議会よりも裁判所に強く与えるべきです、その方法として裁判所に機能としてはいまのままで十分と思いますので現行憲法以上の新たな権限を与えるというよりも独自の徴税権を憲法で認めれば十分な気がします、司法制度の歪みは司法部門の経済力のなさに由来すると思うので。
議会ですが、日本人はそもそも民主的に物事を決める習慣がない国民なので期待薄の組織です、行政権にも対抗できないですし、意思決定能力は極めて低いので、立法作用以外はどちらかというと権威づけの組織にしてしまうべきです、イメージとしては古代ローマの元老院みたいなもんでしょうか、だから明文で他の二権より優位の組織にしてしまいます。
となると暴走しないようにまずは二院の分離をはっきりさせたほうがいいでしょう、そのために選挙制度をはっきりと決めてそれぞれの院のキャラをはっきりとさせてしまいます、参議院は完全比例代表、衆議院は完全小選挙区というふうに、比例代表制を憲法に規定する以上、政党は憲法予定の組織になってしまうでしょう。
それから議員の人数は増やすべきです、今の三倍ぐらいに、国民の幅広い民意の反映といえば聞こえは良いのですが、立法権の暴走を阻止する役割と、人数を増やすことで利権に群がる人々を分散させる狙いもあります。
私は統治システムの運用が悪いのではなく、システム自体が今のままではダメだと考えるので今とは全く違う枠組みの方が妥当だと思います。
いらっしゃいませ。
きょうは国家体制設計のコツを伝授してくださいましていたみいります。大変勉強になります。既にかなり確固たる世界を頭の中にお持ちとお見受けいたしました。
もう先生がそれを憲法草案全文にしたためられて、独立したサイトに展開なさったらいかがでしょう。賛同する方々もたくさん集まって発展するのではと感じました。いかがでしょう。その節は喜んでリンクを貼らせていただきたく申し込みます。
こちらダメ学生としては、中途半端に見えるかもしれませんが儀礼官という小さな(機関というより)役職に、大きな意味をもたせておりまして、行間でお分かりになるかもしれませんが、本憲法改正案には不可欠な一大重要要素となっております。
大統領制、憲法裁判所のような大仕掛けな機関を設けるのは屋上屋ではないかというのが、未熟な私どもの現在の意見でございます。あの米国の大統領制などどの辺がよいのでしょうね。大統領制とそれに少し似た首相公選制は、現代日本の場合、マスコミ主導型の劇場型持ち上げのちバシング型政治をますます亢進させ、後世に悔いを残す恐れありと判断しております。
憲法裁を最高裁と独立に設けることももちろん検討いたしましたが、牽制の複雑化が訴訟の複雑化にもなり、訴訟のコストアップになりませんか。また、最高裁が今のように“奥ゆかしい”まま続いていくのを容認するのは気がすすみません。憲法の番人という意識は高いはずですから、番人様方がもう迷わなくてすむように、憲法自ら自分は実はこうなんだよと自己主張するのが、いちばん世の中によいと考えました。安易と思われるでしょうね。
あと、お説には出てまいりませんでしたが、田中康夫知事も提唱している話題の道州制についてひと言。これは自治の屋上屋を重ねて意思決定困難化、コストアップになると思います。階層を深くすると必ず効率が落ちます。地方によって異なる法がより大きなレベルで出現することで、住みにくくなってくる(変な規制から引っ越ししないと逃げられなくなる)と想像して勝手に反対しております。中央省庁がもっと公平に国民の利益になるような行政を心がけてくれないものでしょうか。
こんなスタンスから、本草案では大道具は使わず、民衆を救うのにちょうどよいサイズの小道具を使う方針を採りました。ごめんなさい。
こんな私どもをよろしくご教導ください。
ということは参議院が最高権力機関?
それなのになぜ衆議院の優越が認められるの?
内閣は衆議院ばかりか参議院の支持まで必要となるのだから政党の勢力図は両院同じようなものになるのでは?というより衆議院の勢力図も参議院の勢力図の通りになるのでは?
ということは二院制の意味がないのでは?
この理屈はわかりますよね?
それなら直接選ぶようにしたら?地方自治でリコールが認められるのは基本的に知事が民選だからでしょ?
>有権者数の3分の1以上の署名または電子的署名
ってそんなこと可能なの?それでいて
>前項の投票によって罷免請求に過半数の同意
ってもっと不可能じゃないの?
これが可能になるぐらい世間が揺れるのならマスコミが騒いで署名取ってる間に内閣総辞職しちゃうよ。
この調子でいくとあなたが付け加えた規定は全部ダメな気がします…。
面白いご質問をありがとうございます。
じっくり考えます。
皆さんもご一緒に!
今は平和だからこのような役割は不要かもしれませんが、過去の歴史を見ても、将来どのような災難がこの国を襲うかわかりません。天皇制とは、そのようなときのための先人たちの知恵の成果だと思いますが、それが儀礼官で代替できるのでしょうか?
災難──大地震、噴火、大飢饉、戦争などが日本を襲ったときの話ですね。
そういうとき、天皇がいて国民を統合するために果たしてくれる役割といえば、被災地を訪れて被災者に励ましの声を掛け手を握ること、ポンと寄付すること、励ましの声明を発表すること位しか思い浮かびませんが、何かありますでしょうか?
この程度であれば、別になくても大勢に影響がないのではないでしょうか。
儀礼官は国民の統合機能はもちません。
日本の歴史、世界の歴史を見ればわかるように、戦争、内戦、クーデターなど、あらゆるものがありえると思います。
なにゆえ、国家の災難を災害だけに限定してしまうのでしょうか。
あまりにも視野が狭すぎると思うのですが・・・
それから、その戦時に国民の統合をする天皇が必要かつ有効という理由を説明してください。どのような法的権威のもとにどういう行動をとるから国民にどういう役に立つのか。それが説得力がありましたたら考え直してみます。現行憲法から天皇制を引いた国家体制のケースと大差ないと予想しています。
欧米勢力による侵略の恐怖から明治維新が起き、日本は近代国家に生まれ変わることができたのですが、もし天皇がいなかったらどうなっていたでしょう?
幕府がおとなしく大政奉還したでしょうか。
当時幕府はフランスの支援を受けていましたので、薩長にはイギリス、幕府にはフランスがつき、それぞれが介入して大規模な内戦になっていたと思います。
当然、戊辰戦争もあんなにあっさり終わらず、内戦は長引き、勝ったほうもイギリスかフランスの強い影響力を受けた、半植民地のような状態になっていた可能性が高いです。