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【サッカー】ドイツW杯準々決勝&準決勝短評

2006-07-07 22:42:09 | スポーツ
更新が遅れているため「やっつけ」気味ではあるが、決勝が始まる前に、準々決勝と準決勝の計6試合について、軽く分析評価を書いておく。

<準々決勝>
(1)ドイツ-アルゼンチン
アルゼンチンの選手の出来が悪かったから敗退した、訳ではないだろう。ドイツが「開催国」でなかったら、先制したアルゼンチンがそのまま逃げ切れていた可能性は高い。ドイツがそれほど効果的な攻撃を見せていた訳でもなく、アルゼンチンの守備が破綻していた訳でもない。
ただ、元々そう簡単に勝負を諦めないドイツが、ホームのサポーターの絶え間ない応援で更にパワーを貰い、「気合」で追いつきPK戦にまで持ち込んで勝ったと見るのが妥当だろう。

アルゼンチンからすれば、最初の交代カードをGKの負傷で使わざるを得なくなり、その後2枚守備的な交代をして交代カードを使いきり逃げ切り態勢に入った直後に追いつかれた=その後メッシやアイマールなどの攻撃的な交代ができなくなった、のが不運だったし、結果論としてペケルマン監督の読み・采配が少々甘かったと言える。

(2)イタリア-ウクライナ
ウクライナはW杯初出場で、しかもGL初戦スペインに0-4の大敗をしながらその後2連勝で決勝Tに駒を進め、ベスト16のスイスも紙一重のところで退け、既に十分な成績を収めていた。

その満足があったとは言わないが、この試合は「もっと上を目指している&優勝経験もありW杯常連の」イタリアの「貫録勝ち」だった。
全くイタリアにピンチがなかった訳ではないが、序盤にザンブロッタのミドルであっさり先制してからのイタリアは、ウクライナにボールを持たせある程度攻めさせておいて堅守ではね返しカウンター、と正にイタリアのお家芸をしっかり遂行して、追加点も効果的に取っての「完勝」だった。

(3)イングランド-ポルトガル
少々「低調」な試合だった。イングランドが勝つ可能性は無論あったが、セットプレーの武器であるベッカムは怪我で途中交代を余儀なくされ、1トップだったルーニーは一発退場と不運もあった。

ただ皮肉なことに、イングランドは10人になったことで守備的にし数人でカウンターを狙う戦術を取らざるを得なくなったが、ベッカムの交代で出たレノンのドリブルや、ルーニーの赤でJ・コールに代わり1トップに入ったクラウチの高さは、寧ろ11人の時よりも効果的にカウンターを演出していた。
一方のポルトガルは、相手が10人になってラインをより高く上げ攻撃する時間は長く取れるようになったが、元々トップの選手の決定力は「超」一流までは行かないので、スペースを消されて&又自陣の広大なスペースをカウンターで使われて逆に攻めながらも苦しむことになった。

後半の浅い時間からPK戦までもつれ込みそうな雰囲気は漂っていたが、まぁポルトガルがこの試合勝ち抜けることができたのは、ひとえにGKリカルドが相手のPKを3本も止めてくれたことに尽きる。

(4)ブラジル-フランス
フランスが勝てた要因は主に2つ、一つはジダンの調子が上がってきたこと、もう一つは逆にブラジルの「チームとしての」調子は上がっていなかったことである。

もう少し詳しく述べると、前者については、ジダンは元々ボールを幾らでも持てる選手なだけに球離れは余りよくなく、格下の相手には逆に早い攻撃の障害となっていたこともあったが、ブラジルという強敵と当たって漸く本来の良さが発揮できる状況になった&ついでにコンディションも上がってきていたのが良かった、ということである。(もっともフランスの唯一の得点はセットプレーではあるが)

後者については、ブラジルがこのW杯本戦に入ってから、フランスと当たるまでは「本気でやらなければいけない相手」とぶつからなかったのが災いしたということだ。GLのみならず、直前のベスト16でも、油断ならないとはいえ初出場のガーナ相手に早々に先制してその後は余力を残しての勝利だった。
フランスは予選や本戦GLでは「大丈夫か?」というような試合が多かったものの、スタメンはずらっとビッグクラブの中心選手・主力級が並んでいるのだから、ブラジルにとっては一気に相手選手のレベルが2段階以上上がったような感じになって、「本気」を思い出す前に敗れてしまった、そんなように感じられた。

中でも一番ブラジルにとっての「差」が大きかったのは、相手の守備である。個のレベル・経験値としての守備の上手さにしても守備ブロックとしての寄せの連携・早さにしても、フランスはブラジルがそれまで対戦したクロアチア・オーストラリア・日本・ガーナとは段違いで、ブラジルはそれに戸惑ったと言えるだろう。


<準決勝>
(1)ドイツ-イタリア
チャンスはイタリアの方が多く作れていたが、ドイツも前半はともかく後半にはFWがより良いシュートを撃てていたら&イタリアのGKの能力が低ければ入った可能性の高い決定的シーンが何度かあり、特に激しさ・粘り強さという点ではお互い互角だった。

ドイツはこれまでのW杯でPK戦全勝、一方のイタリアは全敗と対照的だったから、ドイツはPK戦までもつれてもOKという腹積もりはあったかもしれない。(イタリアははっきりと120分以内に決着をつける気があったようだが)

ただ、その差があったにせよ90分、悪くても120分以内に点が取れて勝てればそれに越したことはない訳で、得点できたイタリアと得点できなかったドイツの差を分けたものがあるとすればそれは「狡猾さ・いやらしさ」の差だったかもしれない。
1点目のグロッソのゴールにつながるピルロのラストパスは、完全な「ノールックパス」だった。2点目のデルピエーロのゴールについても、本来であればジラルディーノがそのまま撃ってもいい状況で、彼はわざと溜めてから同じくノールック気味に後ろから走りこんできたデルピエーロに絶妙な強さのパスを送った。

そういうプレーがサッカーに置いて必須かと言えばそんなことはないだろうが、相手の予測を外すプレーが勝敗を分けることも時にはあるということだろう。集中が極限状態の舞台なら尚更、だ。

(2)ポルトガル-フランス
アンリの倒れたプレーがシミュレーションだったかどうか、PKの判定が妥当だったかどうかについては触れない。ただ、早い時間でのあのPKによる先制が、堅い守備でここまで勝ち上がってきたフランスにかなり有利にはたらいたことは間違いないだろう。

ただ、その「不利」だけでなく、ポルトガルが得点できなかったのには、スコラーリの采配もあるかと思う。実績のある唯一のCFのパウレタを途中で下げてしまったこと、そしてデコが調子が悪かったにも関わらず中心選手であるが故に下げきれず使い続けてしまったことが大きいだろう。
SBのミゲルが負傷して交代せざるを得なかった時、試合は既に膠着状態だった。であれば、同じSBのP・フェレイラでなくシモンをここで投入し更に2トップにするぐらいのギャンブルは打っても良かったのではないか。

もっとも、最近のポルトガルで2トップという布陣は見た記憶がないので、スコラーリのオプションには2トップという選択肢はなかったかもしれない。