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【サッカー】ドイツW杯グループリーグ各国寸評

2006-06-24 22:57:52 | スポーツ
さて、始まってみれば早いもので、ドイツW杯もあっという間にグループリーグが終わり16強が出揃った。今回は、強豪国の準備期間も通常より多少長くヨーロッパでの大会ということで、「波乱」は非常に少なかった。
観てなかった試合もあるし、録画&早回しで観た試合も結構あるので完璧にとはいかないが、早速今回の「前半戦」グループリーグについて簡潔に各国の評価を書いていこうと思う。(日本についてはこちらの記事を参照のこと)


【グループA】(ドイツ1位、エクアドル2位で決勝T進出)
☆ドイツ・・・元々ドローの段階で開催国有利な「作為的な」組み分けが感じられたこともあり、参加国の中では強くない国相手にきっちり攻撃陣が調子を上げ点を決めてきた。やはり「ドイツ」というメンツ、そして開催国の圧倒的な応援は今後も有利にははたらくだろう。
但し、チームの中心バラックの出来はまだ今ひとつであり、守備の脆さも改善はできていない。
☆エクアドル・・・2大会連続2回目と「新興」だが、南米予選3位通過の実力は、予選時はホーム高地キトの有利さもあったとはいえ、平地でもなかなかのものだった。全員が一定以上のテクニック・身体能力を備えており、はっきりとした穴はない。ただ、経験不足ゆえ、今後は厳しいか。
☆ポーランド・・・2戦目の「歴史的因縁」隣国ドイツとの死闘は迫力はあったが、やはりヨーロッパ勢としては力不足の感は否めなかった。流れを変えるようなジョーカー的存在もおらず、「攻撃がイマイチなドイツ」のような感じだった。
☆コスタリカ・・・CFワンチョペはそれなりの存在感を示したが、国内リーグのメンバーが殆どということもあり、国際舞台ではどうしても小粒感があった。

【グループB】(イングランド1位、スウェーデン2位で決勝T進出)
☆イングランド・・・オーウェンの重症というアクシデントはあったが、彼は昔のスピード・キレが戻っていないので実はそう痛手ではない。元々、今のイングランドの武器は、「堅いCB」&「セットプレー」&「中盤の積極的な攻撃参加(ミドル)」である。
又、直線的なイングランドの選手の中でアクセントをつけれるJ・コールが絶好調というのも好材料。不安は、やはりFWの層がちょっと薄いために相手の守備も堅いとなかなか得点機が生まれないことと、GKロビンソンの守備範囲の狭さである。
☆スウェーデン・・・エースのイブラヒモビッチを途中怪我で欠きながらもきっちりGL通過は流石。粘り強さでは今のところNo.1かもしれない。特に「足の血を抜きながら」走りまくるリュングベリは素晴らしいとしか言いようがない。そう簡単に諦めてくれないだけに、ドイツもイヤだろう。
☆パラグアイ・・・初戦のイングランド相手にO.Gの0-1負けが何とも痛かった。ただ、「好チーム」ではあるが、ベテランが多かったこと、そして攻撃陣の若手がポテンシャルを出し切れなかったことが最後まで響いた。
☆トリニダード・トバゴ・・・初戦、徹底的に守ってスウェーデンに引き分けたのは「サプライズ」だった。身体能力は皆高かったが、世界的な選手は大ベテランのヨーク一人&余りにも守備的な戦術だったので限界があったか。ただ、初出場を考えれば、健闘したとは言える。攻撃陣が今後ヨーロッパの一部リーグで育てられれば、今後面白い存在になり得るかもしれない。

【グループC】(アルゼンチン1位、オランダ2位で決勝T進出)
☆アルゼンチン・・・今のところ言うことなし。元々テクニックも戦術理解度も高く経験値も豊富な選手達が労を惜しまず攻撃守備にしっかり走って同じ絵(=イメージ)も描けているので、そりゃ強い。現時点でチーム力だけを見れば、優勝に一番近いチームと言ってもいい。
☆オランダ・・・こちらは組織力や流麗なサッカーというよりは、個人の力で何とか突破した感がある。ただ、ロッベンやファン・ペルジーらの若手WGが活躍しているのは如何にもオランダらしいか。経験不足の守備陣も「予想以上に」頑張っているが、今後は彼らの出来がキーになるだろう。
☆コートジボワール・・・一言で言えば、「やっぱり入ったグループが最悪だった」。オランダにもアルゼンチンにも1-2の惜敗は、単に初出場分と言ってもいい。個々の身体能力は言うに及ばず、テクニックや戦術面でも十分普通のグループであれば勝ち抜ける力はあった。ディフェンス面では確かに少々課題もあったが、せめてもう1試合は見たかった国だった。
☆セルビア・モンテネグロ・・・こちらも運が悪かったというのはあるが、ただクロアチアもそうだが、旧ユーゴ勢はやはり国の分裂のみならずそれ以降も相変わらず政情不安定ということもあり、少しずつ力が落ちてきている感があった。大ベテランのミロシェビッチやジョルジェビッチらが「頑張らなければいけなかった」のがそれを物語っている。

【グループD】(ポルトガル1位、メキシコ2位で決勝T進出)
☆ポルトガル・・・グループがラクだったせいもあるが、危なげのないここまで。FWのエースが相変わらずパウレタ一人というのが弱点ではあるが、中盤のタレントは腐るほどいるので、非常に安定感がある。もっとも、FWのタレントが少ない=中盤が点を取らなければいけないので、ここからの戦いは苦しさも伴うとは思われる。
☆メキシコ・・・列強に比べると選手個々の小粒感はあるが、W杯「常連」としてのチーム力は流石だ。体格や身体能力でも秀でてはいないが、とにかくメキシコの選手は「サッカーをよく知っている」印象が強いので、全体的に弱点が少ない。ただこちらも、ベスト16の相手がアルゼンチンということもあり、ちょっと苦しいか。
☆アンゴラ・・・アフリカ勢特有の身体能力もありテクニックもそれなりにあるが、やはり「そこそこ」どまりだった感がある。旧宗主国であるポルトガルのリーグに所属する選手は結構いるが、上と下の差がかなり大きいポルトガルリーグで上のクラブにいるのがCFのマントラス(ベンフィカ)一人だけというのが現状のレベルを反映しているだろう。
☆イラン・・・アジアの中では強くても、又ブンデス・リーガに何人も所属選手を輩出していても、テクニシャン揃いのポルトガルとメキシコには相性も悪かったか。中盤のタレントはそこそこ揃っていただけに、もっと分かり易いサッカーをしてくれる相手の方が力を出せたかもしれない。

【グループE】(イタリア1位、ガーナ2位で決勝T進出)
☆イタリア・・・中盤の選手が「これまでよりは」テクニシャンを多く揃え、攻撃サッカーが期待されたが、グループCに負けず劣らず死のグループだったこともあり、結局伝統的なカテナチオで勝負強さを発揮した。ベスト4までは対戦国にも恵まれているのですんなり上に行ける可能性はあるが、軸のトッティはまだ全くいいところなしなのが気がかりである。
☆ガーナ・・・元々ユースの頃に活躍したメンバーが中心になっているが、それでも初出場でのこの厳しいグループの突破は「お見事」だ。特に、「組織」という点では、アフリカ勢の中では最もしっかりしていた。又、中盤のエッシェン、ムンタリ、アッピアーのスタミナ無尽蔵三羽烏のはたらきもやはり大きい。次の相手は王者ブラジルだが、走り負けはしないだけに、先制点でも取ってブラジルを焦らせると超弩級の「サプライズ」も有り得るかもしれない。
☆チェコ・・・初戦のアメリカ戦はこれ以上ないくらいの完勝だったが、得点というより戦術の軸だったコラーをここで負傷で欠いてしまったのが結局最後まで響いた。後、敗因を考えるとすれば、やはり大ベテランがちょっと多過ぎたことか。若手も、初戦のロシツキー以外は余りいいところを見せられなかった。
☆アメリカ・・・「国力」によって強豪国の仲間入りを果たしたアメリカではあるが、実際のところ、最もリーグレベルが高い欧州で活躍できているのはビーズリー(PSV)とレイナ(マンチェスター・シティ)くらい、専門家の方々にはダークホースに推す声が多かったが、私はそこまで評価してませんでした(苦笑)。確かに中盤のデンプシーやコンベイなどは潜在能力の高さは伺えたが、全体として国際舞台での経験という意味ではまだ及ばなかった感があった。

【グループF】(ブラジル1位、オーストラリア2位で決勝T進出)
☆ブラジル・・・「王者」らしく、GLはウォーミングアップといったところ。カカ以外は運動量も少なめで、まだ本気は出していない。それでも3戦全勝なので、ダテではない。勿論、ブラジルにとっても今後は本気でやらなければいけない相手ばかりだが、「個人能力の総和」だけで見ればやはりNo.1、2だろう。
☆オーストラリア・・・私が、昨年組み合わせが決まった時に書いたエントリーから引用しよう。予想した通りになってしまったので、それ以上言うことはない(苦笑)
《個々の選手も、ビッグクラブに在籍しているのはリバプールのキューウェルぐらいであるが、プレミアリーグ・セリエA経験のある選手が揃っており、過小評価はできない。流石にブラジルであれば能力差で何とかなってしまうだろうが、日本にしろクロアチアにしろ、長い時間攻撃が不発に終わっていると手痛いカウンターを食らって僅差で負けてしまうなんてことも十分考えられる。
オーストラリアは、現時点でGL突破の可能性こそ高くはないだろうが、「不気味な存在」であるとは言えるだろう。》

☆クロアチア・・・前述したセルビア・モンテネグロと同様。一定水準以上の選手は揃っているしスルナ、クラニツァール、モドリッチなどの若手も出てきてはいるが、昔のシュケルだボクシッチだボバンだって頃に比べれば、結果論にしてもやはりスケールダウンしてしまった。
☆日本・・・冒頭に書いた通り。

【グループG】(スイス1位、フランス2位で決勝T進出)
☆スイス・・・鉄壁の守備というよりは、無欲の頑張りの守備の結果が出た、といった感じか。どの試合も失点&負けてもおかしくない状態だったが、選手全員が集中力を持って体を張っていたのがいい方向に出た。ただ、期待の若手は多いもののまだ「突出している」とまではいかないので、今後は苦しむ可能性が高い。
☆フランス・・・こちらは、組織力こそ感じないしベテランが多いために「頑張った」感もそうあった訳ではないが、個々の能力の高さが最後はモノを言った。まぁGLこそ突破できたものの、「最後」の戦いのジダンが、今のところ攻撃のスピードを切ってしまっていてチームとしてジダンが活かされていない点が気がかりだ。
ただ、アンリという一人で決めれるエースがいるだけに、上に上がっていってもおかしくはない。
☆韓国・・・2戦を終えて唯一GL突破の可能性が高かった韓国だが、運動量豊富でとにかく攻撃にも守備にも走って力技で何とかするサッカーが、結果的には猪突猛進で単調さにつながり仇となったと言えるかもしれない。ビハインドでの攻撃の時も、とにかく前のターゲットに放り込むのではなくもうちょっと中盤でパス交換を増やしながら丁寧な攻めもできていれば、GL突破はできていただろう。
☆トーゴ・・・個々の経験や能力という問題もあるが、そもそも、チーム自体が協会や監督などとの様々なトラブルで空中分解を起こしかけていた時点で評価できない、というより評価のしようがなかった。

【グループH】(スペイン1位、ウクライナ2位で決勝T進出)
☆スペイン・・・ポルトガル同様グループが比較的ラクだったため、こちらも危なげない。流石にテクニシャン、ドリブラーがしっかりといて、FW陣も成長著しいF・トーレス、売り出し中ビジャ、ベテランラウールとバラエティに富んでいるので、ここまではケチのつけようがない。但し、スペインは何と言っても今までの「ポカ」の実績が多いため、展望は非常に難しい。負ける時はやけにあっさりって可能性もある。
☆ウクライナ・・・初戦は不運もあって大敗したが、組織力はそれなりにあり、スペイン以外のライバルが弱かったため、初出場ながら決勝T進出の恩恵にあずかれた、といったところか。シェフチェンコという絶対的エースを擁するものの、他のメンバーが少々見劣りしてしまうので、今後彼一人の爆発に期待するのは少々無理があるかもしれない。
☆チュニジア・・・派手じゃないがそれなりにバランス取れてるチームと言われることが多かったが、やはり「それなり」どまりだった。可もなく不可もなく・・では勝ち抜くのは些か無理があった。
☆サウジアラビア・・・アジア予選では10勝2分と無類の強さだったが、W杯の本番ではなすすべがなかった。身体能力の高さもあり、それなりに攻撃では面白さを見せていたが、守備とその戦術・連携面では脆さが目立った。