第5話 「睡魔の特訓」
「来たか」トウジキがカトラを見て言った。
「簡単な引っ越しだったけど、アルバは手紙が好きか?」
アルバはギョッとしてまさか…という顔でカトラに言った。
「読んじゃった?」
カトラは手を振って「まさかあさりに行ったわけじゃない。やたら封筒と便箋が多かった」
アルバは頭を掻きながら答える。
「どうも新しいもん好きじゃないから、手紙って愛着あって」
カトラは椅子に座ることをトウジキに伝えて「悪いことじゃないさ」と続ける。
「ところで挨拶は済んだ?」
カトラの言葉に声は聞いていないことを伝える。
「この部屋だからさ。ここが研究室でアルバの部屋になる」
さすがにアルバは「ここで寝泊まり?なんかすごい見られている感満載なんだけど」
カトラが「少しだけ工夫して見られた感がないよう努力はするけどさ、ここ研究所だからやむを得ないと思ってよ」
「ここで話ができないの?カトラ?」
アルバの言葉に「今はね、認識している最中だから、アルバの声」
「トウジキさんと俺の声は認識しているからさ」と続ける。
「隣の部屋に移れば話せる」と手招きをする。
すぐに隣の部屋で、ドアがない。
これでどう工夫するんだろう、と思っていたアルバだった。
「ああーやっと話せる!アルバよろしく!ルーカスだ」
握手を求められるが力が強い。
「よろしくね、アルバ」
ジーナが握手もお辞儀もない状態で伝えるが、若干顔がほころんだ。
「挨拶なんて簡単でいいさ、早速アルバ始めることがある」とカトラ。
「ここで?」と驚くのも当たり前のように研究室からアルバの部屋は丸見えだった。
「そう、ここにいないとアルバのベッドとか準備できない」
カトラは話だして続ける。
「それにアルバの部屋じゃまだ伝えられないからさ、これからのこと」
覚悟を決めてアルバが言う。
「何か始めるわけか」
カトラは笑顔で答える。
「あくびを100回してくれ」そのセリフに誰も真剣な顔をしている。
「どうやって?」眠いわけでもないアルバ。
「寝ないように睡魔と戦ってくれればいい」
カトラが普通に言う。
ルーカスが肩を叩いて「頑張れ」と言う。
いつの間にかアルバの部屋にベッドと机と椅子が揃っている。
「ゆっくり休んで眠なればいい、ただ寝るな」
疲れていたからか眠気があったが、睡魔の特訓はすでに始まっていた。