ねここねこの家

Canaries 〜心の囀り〜 第2話 「憧れのキャリアウーマン」

第2話 「憧れのキャリアウーマン」

 

昨日のことはあっという間に会社から言われた。

 

「サラさんに無理させたりとか…」

 

「全然大丈夫です!多分前の日にソフトバレーで頭ぶつけたのかもですから!」

 

ニッコリ笑顔で答えると、上司は落ち着いて言う。

 

「サラさんには目標はあるのかい?この会社でずっとかい?」

 

上司の顔をジッと見て答える。

 

「ご迷惑をかけたことは申し訳ありません。私が勤めていることで何かあるなら…」

 

そこまで話すと上司は遮って言った。

 

「勘違いしないでくれ。迷惑じゃないし、むしろ真面目で助かっている!」

 

サラは警戒しながら話している。

一度告白されたことがあった。

未だにかわし続けている。

 

悪い上司ではないが、どこか怪しい雰囲気。

妻子持ちではないか、と噂されているが本人は否定している。

雰囲気だけで判断できないが、なぜか距離を置いてしまう。

 

「サラさんに話があってね…って変な話じゃないぞ!」

 

上司が言うと、なぜか不思議に抵抗はなかった。

 

「いつですか?」

 

「何だか変な噂があるからね…人混みの多い休日の喫茶店で」

 

その言い方に笑ってしまったが、サラは大丈夫だと答えた。

 

「事前に聞いておく。彼氏はいないね?殴り込みは勘弁だよ?」

 

また笑ってしまったが、いないともいるとも答えずかわす。

そこにドアを勢いよく開けて女性が入ってきた。

サラを見てニッコリ微笑み、上司に詰め寄る。

 

「この書類に不備があることは3ヶ月も前から伝えてあります。ご確認いただいておりますよね?」

 

サラの勤めている会社の大元の会社だった。

中小にあたる製造業にとって、大きな存在。

見るからにキャリアウーマンそのものだった女性。

 

「それは、社長から聞いていないもので…」

 

驚きながら、上司は困っている。

そういえば…ここ3ヶ月社長を見ていない。

お給料だけは、本社を通してか振り込まれていた。

 

「返答をもらわないと流通が途切れますので、明日までにご回答ください」

 

去り際にその女性は、邪魔をしないように控えていたサラに移動するように促す。

場所を変えると、その女性は話し始めた。

 

「私はレーラ社の大元の専務リノ。総辞職した方が良いわよ?この会社は倒産するわ」

 

サラはここでも順応が早い。

 

「みんなに伝えた方が良いですよね?でも…」

 

そこはリノが遮って言った。

 

「今のところお給料は大丈夫みたいだけど、ここからは一人ずつ私が話すわ」

 

サラはちょうど締め日だったことを思い出す。

即座に帰る準備をし始めると、リノが一人ずつ説明するが本気にしない。

リノが促す通り、サラだけは帰った。

 

そして思った。

やっぱりだと。

お給料が出ていると、誰も信じない。

結局信じないんだから。

 

帰り際リノが名刺を渡して言った。

 

「あとで連絡ちょうだい。そうね…明日ね。今日は予定があるからお願いね」

 

テキパキしている姿に、レーラ社の在り方を見た気がした。

 

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