43話 「クロノスの力」
しばらくの沈黙があった。
守里も目の前の光景が信じられなかった。
「本当なのか?あのジャイワナーゾを…カイリを?」
守里が息を荒くして興奮していると同時に、虚しさも覚えていた。
「グラッツェ…いや、ありがとう…剣」
ベラーナの無線で我に帰る。
家族や仲間のことを思って、終わったという思いとまだ先があるという思い、そして何だか悲しい思いもあった。
家族や仲間は帰ってこない…ベラーナはあえて守里に何も言わなかった。
ベラーナは、自分の手でとどめを刺さなかったことに感謝すらしていた。
守里は思った。
「まだ…まだ先がある…ゲラザロナ…アベルト・ゼスタローネがいる…マイールも…」
心の中で感じていた。
マーズの鉱石も渡せない。
同時にセイナも取り戻さないといけないことを知っていた。
「このまま突き進む!!」
いつの間にか手の中に青く光った状態で刀が戻っている。
守里がGビャクヤで進もうとすると、損傷も確認した。
「こんななら、アベルトだって…!」
守里が興奮していると麻生の声がした。
「気持ちは分かるが、ララ機を戻さないとパワークロノスが乗せられない。しかもアベルトの居場所は分からない。一旦戻って落ち着くんだ」
手のひらに汗をほどだった守里は、震えてもいた。
確かにこのままじゃダメだ、とも感じていた。
ベラーナ機も腕の部分を損傷している。
ララ機とも離れ一時的にゲンナ号に戻ると麻生が言った。
「ララには外の警備を頼んである。この空域は危険だからね」
「Gビャクヤとベラーナ機を直すにはどのくらいかかります?」
守里が聞くと2本の指を立てて麻生が答える。
「2日は必要だね。Gビャクヤは3時間もあれば何とかなる。ベラーナ機の損傷が激しい」
改めて見ると、ベラーナ機は腕がもぎ取られそうになっていた。
足の部分もかなり関節部分が痛んでいる。
Gビャクヤは腕と頭部のかすり傷だけで済んでいた。
麻生が不思議そうに言った。
「セイナがいればもっと早いが…リリアンと私で何とか頑張って2日間…ところであの赤い閃光は見たこともない…」
と話すと守里も分からないままロロナに聞く。
「不明ー」
するとトキノが答えた。
「感情のコントロールなのかもしれないわね。そもそもクロノスはギリシャ神話で大地の神を指すし…仮定の話よ?」
続けてカンナが言った。
「私たちにはギリシャ神話の信仰はないし、どっちかというと神は殺戮を好まない…と思っているわ」
麻生が分からんと手を広げて言った。
「パワークロノスにも効果があるかも未知じゃ」
みんなが黙るとき、ちょうどアゼラではアベルトが無表情に動き出していた。