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「なた豆」は毒か?薬か?第2の大豆か?(試論)【下】

2005-04-05 00:12:35 | Weblog
『なた豆日記』と『なた豆入門』の共通試論(未定稿)
【上】からのつづき

●「赤なた豆」の缶入りメッセージ玩具の問題

一部の玩具メーカーなどが観賞用として販売する
「赤なた豆」の缶入りメッセージ玩具などの場合は、
誤って食べた場合の毒性への配慮も不可欠です。

生体内の毒性や薬効が十分に解明されていない以上、
万が一の場合を想定し、毒性の指摘されてきた
「赤なた豆」などの使用は続けるべきではありません。

製品のコンセプトが問題なのではなく、
原材料を「白なた豆」などの毒性のない
豆にすべきだということです。

たわわに実った大きなサヤたちから秋以降収穫される豆を、
「鑑賞用だから口に入れないように」などと申し訳程度に
ただし書きに添えても、誤食の危険性はゼロになりません。

健康食品などは、一定の食品としての安全性が問われますが、
缶入り玩具などは食用安全性などのチェックはなく、
1年の間に数十万株から百万株もの「赤なた豆」が
全国に伝播する可能性があります。

これまで日本国内ではほとんど栽培されていなかった
「赤なた豆」が大量に中国から輸入され、
十分な栽培知識の啓蒙や経験がないまま
一部が野生化したり、交配することの危険性も無視できません。

そもそも園芸愛好家や農家が栽培管理するのと違い、
「赤なた豆」のメッセージ玩具をプレゼントされた人は
十分な栽培知識や管理責任を持ってはいません。
不特定多数の人が、ある日突然、栽培を始めるわけです。

今後、非食品、非作物として別の「なた豆の仲間」が
世界から輸入される可能性もあります。

その際、種類によっては猛烈な毒性を持つ「なた豆」が
混入交雑する恐れもあり、知らずに育てたり、
捨てられて野性化した「赤なた豆」たちが
予想外の毒性を持つ生態系を形成する温床となる
可能性も懸念されます。

中国などでは南方を中心に古くから栽培や利用の
経験伝統があるので、「なた豆」の管理態勢は
ある程度できています。

ところが、日本では実質的に江戸時代以来続いてきた
「なた豆」の栽培経験は一部地域を除いて途絶え、
植生に対する管理態勢は一部の商用栽培地域を除き
定着していません。

一説には、「なた豆の仲間」の毒性は、強い野生種の
交配によって取得されたという考えもあります。

今の日本は、世界中へ人々が行き交い、世界中から
珍奇な動植物が持ち込まれている現実があります。
危険な動物がペットとして輸入され野生化したり、
旅先の植物を密かに持ち帰り栽培する場合もあります。
(豆類はポケットに入れても持ち帰れます)

なた豆の場合は、世界各地に毒性の強い野生種があり、
今までの日本では栽培地域が極度に限定されていたので、
単独で有毒品種が持ち込まれても交配繁殖する可能性は
極めて少なかったのです。

しかし、今後は朝顔の栽培などと同じ感覚で
全国各地に「赤なた豆」の栽培が普及すると、
海外から持ち込まれた毒性の強い「なた豆」と
交配する危険性が増大します。

私の栽培経験では「なた豆」の開花時期は長く、
基本的には夏に開花が集中するとはいえ、
遅咲きの花が次々に時期をずらして交配を繰り返す
可能性があります。

そういう意味では、
2005年という年が「なた豆」栽培や
場合によっては日本の植生変化において
大きな一歩を踏み出す年ともなったわけです。

せっかく軌道に乗った商品栽培の「なた豆」農家も、
周辺住宅街の庭先にも神経を配る時代が来るかも知れません。

玩具販売の功罪は予想外に大きい可能性もあるわけです。
企業の営利が環境保護や消費者安全に優先するか?
地球温暖化という大きな問題だけでなく、
植生についても問われているのかも知れません。

本来は、大げさに考えなくても「赤なた豆」は
美しい花が咲き、観賞用としては楽しめます。

ただ、きちんとした知識がない人が
観賞用では済まず、ついつい実った豆を食べてしまう
危険性があることも否定はできません。
それは観葉植物などと違い、豆類であることにも起因します。

ユーカリの木には毒性がありますが、
オーストラリアの住民は豊かな自然環境の中の植生として
ユーカリと共生しています。

毒性のあるユーカリの葉を食べる可愛いコアラとともに、
人は緑のユーカリを大切に守っているのです。

毒性のある植物でも正しい知識と接し方が理解されていれば
人は十分に共生できるのです。

ただ、今の日本の現状では赤なた豆の共生には
ユーカリと違う点がひとつあります。

それは、知識の欠如ということです。
観賞用といくら限定しても誤食の危険性はあります。

赤なた豆は、ユーカリと違って豆類であるからです。
巨大なサヤができ、たくさんの豆が収穫されるからです。

●「なた豆」の毒性処理について

なた豆の毒性処理について述べた文献は多くありません。
一般に、豆類の毒性処理にはいくつかの方法があります。

主な方法は、
第1が水洗、
第2が加熱、
第3が加工
などで、
これらの方法を単独あるいは組み合わせで行います。

もちろん、細かく見れば様々な方法がありますが、
ここでは、水洗と加熱という一般的な方法を見てみます。

そもそも世界の豆類の生産量を見ると、
大豆(ダイズ)が60%、
インゲンとエンドウが各々10%ずつ、
ヒヨコマメが6%、
ソラマメが5%、
キマメが3%、
ヒラマメが3%、
その他が3%と、
栽培されている豆類のトップは大豆が抜きん出ています。
「なた豆」は、その他(3%)の一部に過ぎません。

日本では大豆の栽培知識や利用方法は発達定着しています。
大豆は4千年以上も前から中国で栽培されていたといわれます。
ある意味では「なた豆」以上に「大豆」は歴史も経験もある
というわけです。

世界の年間ダイズ生産量の80%以上が南北アメリカで生産
されていますが、
意外なことにアメリカのダイズ栽培の歴史は浅く、
1700年代後半に、ジョージアで栽培を始めるため、
中国で種子を買い入れたアメリカ人の航海士によって
もたらされたのだそうです。

アメリカのダイズは飼料の利用が多かったのに比べ、
中国や日本の大豆は食用として広く利用されました。

ですから、私たち日本人にとって最も身近な大豆の毒性処理
について先ず見てみましょう。

健康食品の王様のように思われている大豆にも
前述したサポニン(ゴイトロゲン)のほか、
トリプシンインヒビター、ヘマグルチニンなどという
聞き慣れない栄養阻害物質や有害物質が含まれています。

しかし、一般の食生活では大豆は「なた豆」ほど
強力な毒性を示すことはないので無意識の内に
毒性処理を行っているというのが現実に近いでしょう。

大豆の有害3物質は、共通した特性があります。
いずれも水溶性で水を加えれば溶けるのですが、
加熱には比較的強く、
100度以下の加熱では有害作用が残るといわれています。

たとえば、
豆腐製造工程では、豆乳中に18~20パーセント、
製品の豆腐にも11~12パーセントの
トリプシンインヒビターが残るといわれます。
ただ、実生活上は心配するほどの影響はありません。

市販豆乳は130度~140度の高熱処理を行うので、
有害物質の作用は完全に取り除かれているそうです。

また、第3の毒性処理方法として
大豆は納豆や味噌に代表されるように、
醗酵などの加工処理が発達しています。

家庭でも煮豆などの際に、よく豆を水洗し、
一晩、大豆を水につけたり、
じっくりと時間をかけて煮たり、
ゆでこぼしを適宜行うなどという
生活の知恵が伝えられています。

ここで注意したいのは、
健康上は問題となるほどではないものの、
大豆でも、理論上は加熱処理が不十分な場合などに
有害物質が残存することがあるという点です。

「なた豆」の水洗や加熱処理について考えてみます。
「赤なた豆」を例にとれば、大豆よりは
毒性の強いと思われる物質が含まれており、
下痢などの中毒症状を起こす危険性が指摘されています。

文献によれば、「赤なた豆」を料理する場合には、
かなり頻繁かつ大量に水洗を行うことや、
焙煎(ばいせん)などの加熱処理を行うことが推奨されています。

しかし、
豆の完熟の度合いや、
土壌、栄養分などの生育条件の違いや、
食べる量によっても、
毒性除去にどの程度の水洗や加熱が必要なのかは
画一的に基準(目安)を確定できません。

一般家庭では「なた豆」自体の知識が不足しており、
料理にあたっての生活の知恵はほとんどないのが現状です。

若いサヤをきざんで醤油漬けにしたり、
そのまま味噌漬けにしたりする加工処理の方法は
一部の栽培地域に伝えられてはいます。

中国の醤油漬けの伝統が日本でも「福神漬け」などに
応用されています。

そこで、一歩進めて「なた豆」の毒性を減らす特許
というものに注目してみることにしました。

健康食品会社のチラシなどに記載されている
「なた豆茶」の毒性を軽減する特許というものが、
もしかしたら、
高度の加熱処理技術などを応用しているかも知れません。
期待は高まります。
A4版の用紙で3枚ほどの特許2535311を調べてみましょう。

●「なた豆」の毒性軽減に関する特許2535311号

特許庁のインターネット検索サービスを利用すれば
誰でも登録された特許を自宅パソコンで見たり印刷できます。
検索方法は2つあります。

初心者向け検索と、通常検索です。
それぞれの検索方法を以下に述べますので、実際に
表示(印刷)してみましょう。

【初心者向け検索】
初心者向けとはいえ、2段階入力で、
かえって分かりにくいかも知れません。
ともあれ、先ず次のアドレスで検索ページに移動します。
http://www.ipdl.ncipi.go.jp/Tokujitu/tjbansaku.ipdl?N0000=110

上記ページから種別を「登録」
文献番号を「2535311」
と入力して、すぐ下の「照会」ボタンを押すと表示されます。
文献種別は「特許」です。

【通常検索】(こちらをおすすめ)
この方法なら1回で検索表示できます。
先ず以下のアドレスで検索ページに移動します。
http://www.ipdl.ncipi.go.jp/Tokujitu/tjsogodb.ipdl?N0000=101

1.の入力欄に以下を入力します。
文献種別「B」(注:Bは登録済みの特許の略号です)
文献番号「2535311」

表示形式はどちらをチェックしても可。。
PDF(右側ラジオボタン)がおすすめ。

表示種別は「全頁」を選び、
「文献番号照会」ボタンを押します。

表示画面では、左上の「特許2535311」の文字をクリックします。
PDFで表示した場合は、
下段左の「次頁」ボタンを押せば順に全3頁を閲覧印刷できます。

期待に胸をはずませて特許を読んでみましたが、
残念ながら加熱処理などの高度な技術特許ではありませんでした。
(高度技術でないから問題だという意味ではありません)

この特許の内容は、「なた豆茶」を作る場合に、
1袋のパッケージに10粒以上の「なた豆」を利用すると
毒性による副作用を起こす危険性があるので、
「なた豆」の利用は2~3粒程度にとどめ、
その他の薬効が期待される植物を何種類か混ぜ合わせる
という配合(比率)の特許でした。

これが、「なた豆」の毒性を抑え、健康増進を期待する
特許なのだそうです。
妥当性の是非はここでは触れないことにして、
予想外の毒性記述が見つかりましたので、
引用しておきます。

課題
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらナタマメを一粒乃至三粒使用した場合は
効き目は少ないが、
十粒以上使用した場合、ナタマメ本来の効果は強くなるが、
むくみとか、かゆみとか、皮膚の発赤を起こすことがある。

人によってはアレルギーによるじんま疹が生じることもある。
従ってナタマメの量を多くすることは、
人によっては副作用が出て必ずしも効果的とは言えない。
またその量によってはナタマメ本来の効果が生じない人もいる。

この様にナタマメは種々の症状を治癒するのに効果があるが、
強すぎたり、副作用があったり、効果が仲々生じない等の
欠点がある。

(途中略)
この発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、
少ない量でも確実にナタマメ本来の効果を生じ、
さらに副作用を発生させず誰にでも安心して飲むことができる
ナタマメを主成分とした健康茶を提供して
上記課題を解決しようとするものである。

●「なた豆」の魅力

なた豆は栽培も簡単で、成長を見るだけでもわくわくします。

注意点としては、
あまり小さな鉢に植えると成長しずらいので
大きな鉢や庭などの土壌に植えること、
夏の成長期には水を欠かさないこと、
人の背丈を超えるほど成長するので強風に耐える支柱を
しっかりと組むこと、
毎年同じ場所に連作しないこと、
などです。

窒素、燐酸、カリや、有機肥料など土作りも大切ですが、
ことさら栄養や病虫害を気にしなくても結構育ちます。

小さな芽が出たときから、栽培の楽しみは続きます。
生命力の感動を味わうことができるでしょう。
なた豆の花が咲くころ、ツルの先端から出る蜜を吸いに、
蟻たちが忙しく行き来する姿は夏の風物詩として
あなたの記憶の1ページに残されるでしょう。

大きなサヤの中から新しい豆がずらりと並んで収穫できます。
ふわふわした綿毛に覆われた豆はいとおしいものです。

「白なた豆」ならば、食用にも問題はなく、
私もいろいろな方法で料理したりして楽しめました。

ミキサーで粉砕した豆をフライパンで炒ったりして
「白なた豆茶」や「白なた豆コーヒー」にして飲みました。
癖のない味です。

センセーショナルな「なた豆茶」の効能を追い求めなくても、
「麦茶」や「ウーロン茶」などと同じように普通の飲料として
味わうことも楽しみのひとつと、ゆったり構えましょう。

様々な種類のお茶が市販されている現在、「なた豆茶」も
それらの一種と考えて、時には好みに応じてブレンドして
もよいでしょう。
ただし、過大な薬効に執着するのは理性的でありません。

「なた豆」の仲間は、まだまだ神秘のベールに包まれた
不思議な豆類なのだと想像することも、また別の意味で
楽しみの一つに数えることができるかも知れません。

以上

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1 コメント

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なた豆茶 (『なた豆入門』 nata_mame)
2005-04-07 15:18:52
▼コメントありがとうございます。



【ティーバック製品と豆から自作】

▼お問い合わせの「茶葉」というのは、豆を粉砕してティーバックに入れ販売されている「豆の粉(プラスアルファ)」製品という意味だとして、薬局や通販などで様々なものが販売されているため、一概にどれがよいとは言えません。

▼基本的には「白なた豆」を原料にしているものを私どもは無難だと考えております。



▼薬局や乾物店などで「豆」そのものを箱入りや袋入りで販売していることもあります。

これが見つかれば、こちらが自作「なた豆茶(コーヒー?)」を実感でき、「なるほど、こういうものか」とお分かりいただけてよいと思います。



▼ミキサーなどで自分で粉砕し、フライパンで軽く炒ると香ばしい自作「お茶」ないしは「コーヒー」ができます。

百円ショップやスーパーで買ってきたティーバックに入れて飲んでみましょう。



▼「10粒の豆で、これっぽっちしかできない?」という驚きの体験をすることと、「何か、物足りないかも知れないけれど、確かに豆の味だわね!」という実感を持っていただくには、こちらがお勧めです。

結構、高い豆になりますが、市販製品をお買いになる際にも、ご自身の判断基準になるかと思います。



▼市販製品は「白ナタマメ茶」も「赤ナタマメ茶」もあり、「他のものをブレンドしたもの」とそうでないもの、「中国輸入豆と国産豆」などいろいろです。

一概に言えませんが、「赤が茶色っぽい」というのは、ブレンドの有無にもよりますし、これまた一概には言えません。

▼私どもの自作「白なた豆茶」は、以前の投稿で写真を掲載しましたので、淹れた色はある程度お分かりいただけると思います。



▼注意事項としては、園芸栽培用の豆は、消毒農薬その他の処理の可能性もあるので、必ず「食用」を前提として販売されている豆をお買いになるのがよいでしょう。



▼また、何かございましたら、気軽にコメントをお寄せください。

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