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ダイズとナタマメの毒性

2004-11-28 23:30:51 | Weblog
毒性は刀豆(なたまめ)の専売特許かと思っていたら、大豆にも毒性があるという【注】。
【注】福場博保監修『大豆』(女子栄養大学出版部)

ダイズは健康食品の代表で、毒性には縁が無いように思われます。
ナタマメはコンカナバリンAが毒にもなれば薬にもなるといった論調で脚光を浴びました。

ダイズもナタマメも素人には聞きなれない成分名称がいろいろと登場します。
サポニンはどちらの豆にも出てきます。
ステロイドも同様です。
ところが、片方の豆にしか出てこない成分名称も少なくありません。
結局、この成分がいいとか悪いとか言われているうちにチンプンカンプンとなりかねません。

そこで、今回は少し腰をすえて健康食品の代表ダイズについて少し勉強をしてみました。
では、ダイズの毒性とはどのようなものか?

●消化の阻害因子トリプシンインヒビター

たんぱく質は摂取されてから、アミノ酸に分解され、再合成されて体のたんぱく質になります。
この消化過程にトリプシンやキモトリプシンやペプシンといった酵素が消化液中で働くのだそうです。

ところがダイズにはトリプシンやキモトリプシンの働きを邪魔(阻害)する因子が約10種類含まれていることが分かりました。
加熱の程度により阻害因子の働きが失われる度合いが違ってきます。

豆腐を作るために加熱する豆乳は、100度で沸騰させるわけにいかないので、90度前後で加熱をとどめます。
そのため、豆腐には約10パーセントの阻害因子の活性(はたらき)が残存しているのだそうです。

飲用豆乳は100度以上の加熱を行うそうで、阻害因子の活性は完全に消失する反面、ダイズに含まれる必須アミノ酸のリジンの有効性も低下するそうです。
煮豆の加熱も、こうした兼ね合いを考えて行うのが好ましいということらしい。

実際は、生のダイズを食べることはほとんどないので、阻害因子の影響で栄養障害を起こすことはまれでしょう。
また、豆腐などの残存活性もほとんど問題はないといわれているようです。

●甲状腺肥大を起こすサポニンやイソフラボノイド

東北大の木村氏らによると、ヨードが欠乏した状態でダイズ食を続けると甲状腺肥大を起こす可能性があるとのことです。
ダイズに含まれるサポニンやイソフラボノイドが原因成分らしく、抗甲状腺作用と呼ぶそうです。

ナイジェリアでダイズたんぱく質の摂取運動を進める際、この配慮が行われているらしい。
世界的に見ると、ヨード欠乏が多いので、やみ雲に「ダイズは健康によいタンパク源」とだけ決めてかかるわけにいかない。
そういうことらしい。

幸い、私たち日本人は海草などヨードの摂取量が多いので、ヨード欠乏に起因する甲状腺肥大を心配する必要は少ないということです。

●溶血作用や赤血球凝固作用

上述したように、実際は毒性と呼ぶような恐ろしい成分というものをダイズが含んでいると考えなくてもよさそうです。
たとえば、サポニンには血球膜を壊して血色素などを溶出させる溶血作用があるそうですが、試験管内で直接実験すればのお話です。
私たち動物が食物としてダイズを摂取した際には、消化の過程で溶血作用を失わせる働きを備えているので問題はないとのことです。

ダイズに含まれる有害物質には、このほかに赤血球凝固作用を持つヘマグルチニンなどが知られています。

こうした知見は、ナタマメの毒性や薬効にも似たことが言えるかも知れません。
冒頭で触れたコンカナバリンAなどは、ナタマメ(タチナタマメが多い)から抽出した試薬を試験管内で添加した際のデータが公表されているわけです。

●ダイズの有害3物質は水溶性だが加熱には比較的強い。では、ナタマメは?

ダイズの有害3物質(トリプシンインヒビター、ヘマグルチニン、サポニン)は水溶性だが、加熱には比較的強いのが特徴だそうです。
ナタマメも、繰り返し水洗いするとか、焙煎加熱するとか、毒性低減の方法が伝えられています。

また、ダイズの発酵食品である納豆や、味噌などに近い処理がナタマメにも施されています。
ナタマメを食用にしているインドでは、発酵という処理が普及しているそうです。
私はスリランカの留学生に尋ねてみましたが、ナタマメのことは知りませんでした。

日本では、ナタマメの味噌漬けなどが地方名産になっていたりします。

有名な福神漬けは、ナタマメの若い莢(さや)を醤油漬けにしたものが基本になっています。
中国でも日本でも、毒性の少ない若莢を食用にする方法は古くから伝えられているようです。

明治から大正にかけて編纂された日本最大の百科史料事典『古事類苑』に、興味深い引用がありました。
『大和本草』の刀豆(なたまめ)の項目に、本草約言にいわくと始まる引用で、醤油漬けで用いるべしとあります。
若い莢で柔らかいうちに、皮ともに煮て食し、また、熱湯に湯びいて塩に漬け、後日醤油漬けするというものです。
まさに、福神漬けの手法でしょう。

さらに、完熟した豆はおいしくても食べてはいけないとあります。
食べれば気を塞ぎ、人を傷付け、死ぬこともあるからだという記述が続きます。

そして、焼いた豆は最も人を害するとあります。
なかなか興味深いですね。お勉強をしてきた後に読むと。

文末には一種花の白いものがあり、実(豆)は小さいとあります。
これだけだと、前回掲載したタチナタマメなのか、白ナタマメなのかやや判断材料不足です。
前々回でしたか、江戸時代の文献紹介に、白ナタマメの記述はすでにあったことを思い出します。

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『なた豆入門』【ナタマメ豆知識】(なた豆予備知識)【8月23日4訂版】
『なた豆入門』【ナタマメの毒性と調理加工(8月22日草稿2訂版)】
『なた豆日記』プランター栽培写真500枚の克明記録(毎週日曜更新)
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なたまめパワーとは?

2004-11-21 16:55:44 | Weblog
薬事法の関係で、あまり極端な効能PRは見掛けませんが、
なたまめパワーは健康食品のうたい文句として広く喧伝されています。

厳密な解釈や細かな内容については今回は触れず、概観をしてみましょう。
今までのおさらいもかねて。

先ず、「刀豆(とうず、なたまめ)」の分類と効能の関係。

「なたまめ」には狭義と広義の分類があることは述べました。
狭義の「なたまめ」は赤なたまめを指します。
国内の健康食品メーカーは、主として「赤なたまめ」の薬効を強調します。
したがって、食品としては弱い毒性があるので、一般の人が普通の豆料理の食材としては用いないほうがよいと述べます。

では、どうすれば薬効を生かせるか?
加工してお茶や歯磨き粉などにするのがよいというシナリオです。
お茶は加熱処理と加熱飲用が前提となります。
この場合、本来からだに良いとされる成分が加熱しても失われないという前提で販売されることになります。
真偽のほどはここでは論じません。

歯磨き粉などは、加熱加工が行われているかどうかあまり明確な説明は見当たりませんでした。
もしかしたら、具体的な加工方法が公開されているのかも知れません。特許公報などの形で。

パンフレットなどには赤なたまめを使ったお茶を飲用して、体の調子がよくなったという体験談が紹介されます。
しかし、この体験例の数は、本当に医学的なデータとして根拠のある統計値(人数や妥当性)なのか不明です。

漢方としては、中国の古い医学書で様々な用いられ方をしていることがうかがわれます。
日本でも江戸時代などに漢方の処方に用いられたことが文献に見られます。
ただ、それが現代医学の観点から、どれだけ立証されているのか不明です。

次にタチナタマメという種類があります。
これは、狭義の(赤)ナタマメと区別されます。
毒性が(赤)ナタマメより強く、花やマメの色、大きさも異なるからです。
アメリカでは、タチナタマメの栽培が盛んで、もともとアメリカ由来との説もあり、飼料や薬品抽出原料として知られます。
毒性のあるタチナタマメを飼料にどう使うのか詳細は不明です。
ただ、タチナタマメから抽出した試薬としてコンカナバリンAなどがよく知られています。
これは、お茶などの飲用でなく、医学的実験や薬剤開発のためなどに用いられています。
この結果、ある程度の医学的効能がデータとしても認められるようになったようです。

ただし、このタチナタマメから抽出した成分と、赤ナタマメの成分の関係や試薬実験データとお茶などの健康食品を混同するのは、いかがかと思われます。
くれぐれも、欧米のデータと中国や日本の漢方(民間療法)を混同しないことが大切かと思います。

狭義の分類で最後に注目すべきは、私たち夫婦が栽培試食した「白なたまめ」です。
これは、上述した2種類と違い、毒性がほとんど見られないことが知られています。
江戸時代から食材として用いられており、若い莢(さや)や白いマメを漬物や白餡などに用いてきた歴史があります。

ここで、毒性がないということは、薬効もないのではないか?という疑問がわきます。
この点をきちんと立証した文献は今のところ、私たちは見つけていません。

ただ、食材としては豆本来のさまざまな成分を含んでおり、薬効という観点でなく、大豆などの植物性たんぱく質など有益な豆であると私たちは感じています。
レシピの一部を紹介してまいりましたが、モヤシなどはあまりふさわしくないかと思われますが、ゆで豆として食べたり、加工して食べることができると思います。
残念なのは、日本でも一時期、裏方の豆として、白ナタマメが白餡などの増量剤(カサを増すための原料)として用いられたという文献もあり、安い食材(原料)だったのが、健康食品ブームの角度から注目されると生産量も現在は少量であるためか、高価な豆に変身してしまったことです。

できれば、国内生産の狭義なたまめ3種類の生産量や比率、加工用途などの統計データが一般の人々の手に入りやすい形で公開されているとよいでしょう。
白ナタマメ自体は、私の夫が乾物屋さんから買ってきたように、国内生産は行われています。
流通ルートが乾物店のような食材ルート、種苗店や園芸ショップなどの観賞用植物ルート(食材として売られてはいない)、薬局スーパーなどの健康食品ルートなどがあります。

ここで、国内生産なのか?中国などの海外生産なのか?という現在の食材状況が、なたまめ各種にもあるということにも目を向けたいです。
輸入量と上述の国内生産量なども統計データがあれば知りたいものです。
消費者の立場からは、農薬などを用いていないか?という食品検査や健康管理への配慮が重要です。
無農薬なのか、あるいは、観賞用だから食用にすべきでないのか?など国のきちんとした指針のようなものはあるのでしょうか?

最後に、広義の「なたまめ」の定義ですが、上で述べた3種類の主な狭義なたまめに加え、浜ナタマメなどの野生種、海外の各種ナタマメ(毒性の強いものもある)などの総称と考えてよいでしょう。
広義のなたまめは、広く世界に分布した様々な種類の豆を含めますが、日本では主に上述の3種類が栽培されているようです。

農家の方々が、新しく「なたまめ」を栽培なさる場合には、上述の狭義ナタマメの特性を踏まえ、時には交雑が起きない配慮も必要になろうかと思います。
私たち一般の消費者が注意しなければならないのは、観賞用で売られたり栽培された赤ナタマメ(タチナタマメの流通はまだ確認したことがありません)を子供たちや腎機能が低下した方々に(あるいは普通の人でも)食用に供しないということです。
ひどい毒性被害の事例は私たちが調べた範囲では聞いていませんが、ナタマメブームにのって、思わぬ「実験」などに挑戦されたり、知らずに「あげたり、もらったり、食べてみたり」というお話はホームページなどで散見しています。
「栽培したけれども、どうしたらよいのか?」「花は色がついていて美しかった」「毒があるなんて知らなかった」など、知識啓蒙の必要性は痛感しています。

あまり、健康食品の効能にばかり目を奪われず、栽培の楽しみ方や、安全な種類の豆を食材としていただくなどの客観的な啓蒙がもっと行われたらよいと感じています。

なお、今回は、薬効の有無や是非を論じたわけではなく、前提となる「なたまめ」の基礎知識を私(たち)なりに整理してみました。
識者の方々のご指導などいただけましたら幸いです。

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江戸時代の文献に見る刀豆(とうず=なたまめ)

2004-11-07 22:25:04 | Weblog
中国の明時代の漢方名著といわれる『本草綱目』という本が、日本にも伝わり、徳川家康が愛読したといわれます。
ここに、刀豆(とうず=なたまめ)の記述が見られます。

江戸時代に『本草綱目』の解説本も多く出版され、日本の医食同源の様子が記述されています。
ここにも、刀豆は一般的に栽培されている豆として紹介されています。

たとえば、『本草綱目啓蒙』という本には、西日本を中心に各地で刀豆が栽培され、呼び名も様々であることが記されています。
「未熟の者は莢(さや)を連ねて煮食う」とあります。私が紹介してきた、ゆで若サヤのことでしょう。
主にサヤを食べるという紹介が中心です。

この本では、紫色の花、淡紅色の豆などの記述のほか、「一種白花の者は豆もまた白し。シロナタマメと呼ぶ」という記述もあります。
このことから、江戸時代には現在のように、(赤)なた豆のほかに白なた豆も栽培されていたことが分かります。

また、江戸時代の百科事典『和漢三才図会』という本には、図入りで刀豆が紹介されています。
ここでは、挟剣豆という呼び名が正式で、「俗に奈太末女(なたまめ)という」と書かれています。
挟剣豆という呼び名は、人が脇に挟(たばさ)んでいる剣に似ているところから来ていると説明されています。

「若いとき煮食する。老(ひ)ねると子(たね)を収集する」とあります。
「子の大きさは親指の頭ぐらい。淡紅色で、豚肉や鶏肉と一緒に煮食すると大変美味である」と紹介されています。
特別、(赤)なた豆の毒性には触れられていません。

漢方の本ですから、「中(脾胃)を温め気を下し、腸胃の働きをよくし、しゃっくりを止め、腎の働きをよくする」と効き目が書かれています。
おもしろいのは、声が隣家まで聞こえるような病後のしゃっくりが止まらないとき、豆を焼いて白湯で整え、7~8グラムを服用するとすぐ止まると書いてあります。

また、伝承として刀豆は出始めの悪性のできものを治すとあります。豆を焼いて粉にして塗りつけるそうです。
服用してもよいともあります。
サヤを付けたまま煮食するが、青臭い気(におい)があるので美味とはいえないとも書かれています。
「ぬかに漬けて香の物にする」ということです。これは民間伝承らしい。

『本朝食鑑』という本には、「各地で盛んに栽培されている」と明記されています。今より江戸時代のなた豆は普及していたらしい。
「若い時は莢つきのままを塩漬けにしたり、粕漬けして香の物とするが、それ以外には用いるに適しない。」と書かれています。
食用としては、豆でなく若いサヤを用いていたということでしょう。

無毒とこの本にも書いてあり、紹介した3冊の本には毒性については触れていません。
さらに主治(効き目)は「未詳」とあり、『本草綱目』の「腹中を温め、気をおだやかにし、はきもどしを止め、腎に効あり、元気を補う」という記述をそのまま引用しています。

私見では、江戸時代にはサヤが巨大なこともあり、サヤの食用として栽培されていたのでしょう。
若サヤでも充分にエンドウ豆などの食用サヤと同じくらいの大きさか、それ以上に成長するので、江戸時代には食用に足るものだったのでしょう。
若いサヤのゆでたもの、漬物にしたものなどの方法が紹介されていますが、毒性を取り除くための記述は私が調べた範囲では見つかりません。
(赤)なた豆の毒性の認識が今ほどなかったということでしょう。

豆を豚肉などと一緒に煮るとおいしいという本もあれば、サヤ以外には食用に適さないと書いた本もあり、やはり一般的な豆の利用法に比べ、限定されていた(苦労していた)様子が間接的にうかがえます。

ここで、薬効については、2つの大きな流れがあることが分かります。
先ず第1が中国の漢方教科書(江戸時代を通じて)に漢方理論の内臓関係の薬効が書かれており、江戸時代には食用として栽培されていたので、今風にいえば漢方薬としての知識は紹介されていたということです。
第2は、民間伝承として、できものやしゃっくり止めなども効き目があるとして利用されていた模様だということです。

今回は、江戸時代の刀豆の解説本を3冊ほどご紹介しました。
これほど普及していたなた豆が、現在はわずかしか栽培されておらず、一般的な豆でなくなった理由は何か?疑問がわいてくる今日この頃です。

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