毒性は刀豆(なたまめ)の専売特許かと思っていたら、大豆にも毒性があるという【注】。
【注】福場博保監修『大豆』(女子栄養大学出版部)
ダイズは健康食品の代表で、毒性には縁が無いように思われます。
ナタマメはコンカナバリンAが毒にもなれば薬にもなるといった論調で脚光を浴びました。
ダイズもナタマメも素人には聞きなれない成分名称がいろいろと登場します。
サポニンはどちらの豆にも出てきます。
ステロイドも同様です。
ところが、片方の豆にしか出てこない成分名称も少なくありません。
結局、この成分がいいとか悪いとか言われているうちにチンプンカンプンとなりかねません。
そこで、今回は少し腰をすえて健康食品の代表ダイズについて少し勉強をしてみました。
では、ダイズの毒性とはどのようなものか?
●消化の阻害因子トリプシンインヒビター
たんぱく質は摂取されてから、アミノ酸に分解され、再合成されて体のたんぱく質になります。
この消化過程にトリプシンやキモトリプシンやペプシンといった酵素が消化液中で働くのだそうです。
ところがダイズにはトリプシンやキモトリプシンの働きを邪魔(阻害)する因子が約10種類含まれていることが分かりました。
加熱の程度により阻害因子の働きが失われる度合いが違ってきます。
豆腐を作るために加熱する豆乳は、100度で沸騰させるわけにいかないので、90度前後で加熱をとどめます。
そのため、豆腐には約10パーセントの阻害因子の活性(はたらき)が残存しているのだそうです。
飲用豆乳は100度以上の加熱を行うそうで、阻害因子の活性は完全に消失する反面、ダイズに含まれる必須アミノ酸のリジンの有効性も低下するそうです。
煮豆の加熱も、こうした兼ね合いを考えて行うのが好ましいということらしい。
実際は、生のダイズを食べることはほとんどないので、阻害因子の影響で栄養障害を起こすことはまれでしょう。
また、豆腐などの残存活性もほとんど問題はないといわれているようです。
●甲状腺肥大を起こすサポニンやイソフラボノイド
東北大の木村氏らによると、ヨードが欠乏した状態でダイズ食を続けると甲状腺肥大を起こす可能性があるとのことです。
ダイズに含まれるサポニンやイソフラボノイドが原因成分らしく、抗甲状腺作用と呼ぶそうです。
ナイジェリアでダイズたんぱく質の摂取運動を進める際、この配慮が行われているらしい。
世界的に見ると、ヨード欠乏が多いので、やみ雲に「ダイズは健康によいタンパク源」とだけ決めてかかるわけにいかない。
そういうことらしい。
幸い、私たち日本人は海草などヨードの摂取量が多いので、ヨード欠乏に起因する甲状腺肥大を心配する必要は少ないということです。
●溶血作用や赤血球凝固作用
上述したように、実際は毒性と呼ぶような恐ろしい成分というものをダイズが含んでいると考えなくてもよさそうです。
たとえば、サポニンには血球膜を壊して血色素などを溶出させる溶血作用があるそうですが、試験管内で直接実験すればのお話です。
私たち動物が食物としてダイズを摂取した際には、消化の過程で溶血作用を失わせる働きを備えているので問題はないとのことです。
ダイズに含まれる有害物質には、このほかに赤血球凝固作用を持つヘマグルチニンなどが知られています。
こうした知見は、ナタマメの毒性や薬効にも似たことが言えるかも知れません。
冒頭で触れたコンカナバリンAなどは、ナタマメ(タチナタマメが多い)から抽出した試薬を試験管内で添加した際のデータが公表されているわけです。
●ダイズの有害3物質は水溶性だが加熱には比較的強い。では、ナタマメは?
ダイズの有害3物質(トリプシンインヒビター、ヘマグルチニン、サポニン)は水溶性だが、加熱には比較的強いのが特徴だそうです。
ナタマメも、繰り返し水洗いするとか、焙煎加熱するとか、毒性低減の方法が伝えられています。
また、ダイズの発酵食品である納豆や、味噌などに近い処理がナタマメにも施されています。
ナタマメを食用にしているインドでは、発酵という処理が普及しているそうです。
私はスリランカの留学生に尋ねてみましたが、ナタマメのことは知りませんでした。
日本では、ナタマメの味噌漬けなどが地方名産になっていたりします。
有名な福神漬けは、ナタマメの若い莢(さや)を醤油漬けにしたものが基本になっています。
中国でも日本でも、毒性の少ない若莢を食用にする方法は古くから伝えられているようです。
明治から大正にかけて編纂された日本最大の百科史料事典『古事類苑』に、興味深い引用がありました。
『大和本草』の刀豆(なたまめ)の項目に、本草約言にいわくと始まる引用で、醤油漬けで用いるべしとあります。
若い莢で柔らかいうちに、皮ともに煮て食し、また、熱湯に湯びいて塩に漬け、後日醤油漬けするというものです。
まさに、福神漬けの手法でしょう。
さらに、完熟した豆はおいしくても食べてはいけないとあります。
食べれば気を塞ぎ、人を傷付け、死ぬこともあるからだという記述が続きます。
そして、焼いた豆は最も人を害するとあります。
なかなか興味深いですね。お勉強をしてきた後に読むと。
文末には一種花の白いものがあり、実(豆)は小さいとあります。
これだけだと、前回掲載したタチナタマメなのか、白ナタマメなのかやや判断材料不足です。
前々回でしたか、江戸時代の文献紹介に、白ナタマメの記述はすでにあったことを思い出します。
▼関連ホームページ▼(2004.11.21増補版)
ちゃんねる2(楽天広場)⇒なた豆を含めた【いよ式】のblog(NEW)
『なた豆入門』【ナタマメ豆知識】(なた豆予備知識)【8月23日4訂版】
『なた豆入門』【ナタマメの毒性と調理加工(8月22日草稿2訂版)】
『なた豆日記』プランター栽培写真500枚の克明記録(毎週日曜更新)
■ナタマメ狂想曲(両国のご隠居さんの体験談)■
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【注】福場博保監修『大豆』(女子栄養大学出版部)
ダイズは健康食品の代表で、毒性には縁が無いように思われます。
ナタマメはコンカナバリンAが毒にもなれば薬にもなるといった論調で脚光を浴びました。
ダイズもナタマメも素人には聞きなれない成分名称がいろいろと登場します。
サポニンはどちらの豆にも出てきます。
ステロイドも同様です。
ところが、片方の豆にしか出てこない成分名称も少なくありません。
結局、この成分がいいとか悪いとか言われているうちにチンプンカンプンとなりかねません。
そこで、今回は少し腰をすえて健康食品の代表ダイズについて少し勉強をしてみました。
では、ダイズの毒性とはどのようなものか?
●消化の阻害因子トリプシンインヒビター
たんぱく質は摂取されてから、アミノ酸に分解され、再合成されて体のたんぱく質になります。
この消化過程にトリプシンやキモトリプシンやペプシンといった酵素が消化液中で働くのだそうです。
ところがダイズにはトリプシンやキモトリプシンの働きを邪魔(阻害)する因子が約10種類含まれていることが分かりました。
加熱の程度により阻害因子の働きが失われる度合いが違ってきます。
豆腐を作るために加熱する豆乳は、100度で沸騰させるわけにいかないので、90度前後で加熱をとどめます。
そのため、豆腐には約10パーセントの阻害因子の活性(はたらき)が残存しているのだそうです。
飲用豆乳は100度以上の加熱を行うそうで、阻害因子の活性は完全に消失する反面、ダイズに含まれる必須アミノ酸のリジンの有効性も低下するそうです。
煮豆の加熱も、こうした兼ね合いを考えて行うのが好ましいということらしい。
実際は、生のダイズを食べることはほとんどないので、阻害因子の影響で栄養障害を起こすことはまれでしょう。
また、豆腐などの残存活性もほとんど問題はないといわれているようです。
●甲状腺肥大を起こすサポニンやイソフラボノイド
東北大の木村氏らによると、ヨードが欠乏した状態でダイズ食を続けると甲状腺肥大を起こす可能性があるとのことです。
ダイズに含まれるサポニンやイソフラボノイドが原因成分らしく、抗甲状腺作用と呼ぶそうです。
ナイジェリアでダイズたんぱく質の摂取運動を進める際、この配慮が行われているらしい。
世界的に見ると、ヨード欠乏が多いので、やみ雲に「ダイズは健康によいタンパク源」とだけ決めてかかるわけにいかない。
そういうことらしい。
幸い、私たち日本人は海草などヨードの摂取量が多いので、ヨード欠乏に起因する甲状腺肥大を心配する必要は少ないということです。
●溶血作用や赤血球凝固作用
上述したように、実際は毒性と呼ぶような恐ろしい成分というものをダイズが含んでいると考えなくてもよさそうです。
たとえば、サポニンには血球膜を壊して血色素などを溶出させる溶血作用があるそうですが、試験管内で直接実験すればのお話です。
私たち動物が食物としてダイズを摂取した際には、消化の過程で溶血作用を失わせる働きを備えているので問題はないとのことです。
ダイズに含まれる有害物質には、このほかに赤血球凝固作用を持つヘマグルチニンなどが知られています。
こうした知見は、ナタマメの毒性や薬効にも似たことが言えるかも知れません。
冒頭で触れたコンカナバリンAなどは、ナタマメ(タチナタマメが多い)から抽出した試薬を試験管内で添加した際のデータが公表されているわけです。
●ダイズの有害3物質は水溶性だが加熱には比較的強い。では、ナタマメは?
ダイズの有害3物質(トリプシンインヒビター、ヘマグルチニン、サポニン)は水溶性だが、加熱には比較的強いのが特徴だそうです。
ナタマメも、繰り返し水洗いするとか、焙煎加熱するとか、毒性低減の方法が伝えられています。
また、ダイズの発酵食品である納豆や、味噌などに近い処理がナタマメにも施されています。
ナタマメを食用にしているインドでは、発酵という処理が普及しているそうです。
私はスリランカの留学生に尋ねてみましたが、ナタマメのことは知りませんでした。
日本では、ナタマメの味噌漬けなどが地方名産になっていたりします。
有名な福神漬けは、ナタマメの若い莢(さや)を醤油漬けにしたものが基本になっています。
中国でも日本でも、毒性の少ない若莢を食用にする方法は古くから伝えられているようです。
明治から大正にかけて編纂された日本最大の百科史料事典『古事類苑』に、興味深い引用がありました。
『大和本草』の刀豆(なたまめ)の項目に、本草約言にいわくと始まる引用で、醤油漬けで用いるべしとあります。
若い莢で柔らかいうちに、皮ともに煮て食し、また、熱湯に湯びいて塩に漬け、後日醤油漬けするというものです。
まさに、福神漬けの手法でしょう。
さらに、完熟した豆はおいしくても食べてはいけないとあります。
食べれば気を塞ぎ、人を傷付け、死ぬこともあるからだという記述が続きます。
そして、焼いた豆は最も人を害するとあります。
なかなか興味深いですね。お勉強をしてきた後に読むと。
文末には一種花の白いものがあり、実(豆)は小さいとあります。
これだけだと、前回掲載したタチナタマメなのか、白ナタマメなのかやや判断材料不足です。
前々回でしたか、江戸時代の文献紹介に、白ナタマメの記述はすでにあったことを思い出します。
▼関連ホームページ▼(2004.11.21増補版)
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『なた豆入門』【ナタマメ豆知識】(なた豆予備知識)【8月23日4訂版】
『なた豆入門』【ナタマメの毒性と調理加工(8月22日草稿2訂版)】
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