Technodonの憂鬱

なんともうしましょうか

stanton moore "blackbird special"

2013年12月31日 02時22分45秒 | Drum
stanton moore "blackbird special"






その人は、ステージ上と普段とではえらく身の丈が違って見えて
ステージのその人は、怪物のような大きさにも見えた。

当時では珍しい、20インチのBDに12インチのタム&16インチのフロアタムの三点Drumセット
20インチRideシンバルと14インチのクラッシュシンバル、という小ぶりでコンパクトなDrumセットだったにも関わらず
そのドラミングは、Drumセットがかわいそうになるくらいのプレイに圧倒された。



















「珍しい」 と評したのはワケがあって

当時の音楽産業ではメタルバンドやハードロックバンドが大流行
楽器販売市場もその煽りを受けてデザインやフォルムも大音量仕様が主流になっていた矢先で
Drumも類い稀なく、大口径セットにシンバルも大型化していた。


そんな中で、その人は小口径のBDに最低限のシンバルを載せた
至ってシンプルなセッティングに加えて、「怪物」だったのだ。






















Stanton Moore TamTam DrumFest 2011 Part I - Gretch Drums








20インチとは思えないくらいの重く、腹の真ん中を貫かれるようなBDのサウンドに驚き
フィルなのかフレーズなのかもわからないようなスネアワークは
まるで、オモチャ箱の前に座った子供のように腕を振り上げながらビートを刻む
ギターソロのアクセントを右往左往しながら合わせて、ベースラインのど真ん中の軸をけして外さない


ライブの最後は

高らかに笑いながら、Drumセットを壊してステージを降りていく



こんな人がdrumを叩いていて
こんな人が、こんな都内の片隅で
自分の目の前でプレイしていることに、かなりの衝撃を17歳で受けた。









Stanton Moore, Skerik and Marco Benevento porch jam - Jazz Fest 2012













そのときからその人を“師匠”と仰ぎ
ほとんど弟子入りのようなカタチで着いて回り、プレイするステージはほとんど見ていた。



というのも

“師匠”は弟子などは取らず、気に入ったプレイヤーとしか演奏しなかった。
そのため、特に何かを教えたり話したりすることはなく
Drumを上達するためには“師匠”の間近で常にプレイを見て覚えなければならなかったからだ。


現代でこそ『講師』や『先生』といった職業染みた活動が増えてきているが
その当時では1プレイヤーでしかなく、スタジオミュージシャンと同様の仕事で生計を立てていくのが主流だった。








Regina Drum Festival - Stanton Moore & The Pile O Bones Brass band










“師匠”の叩くリズムは独特で
8ビート一つ取っても千差万別で、バスンバスンと重いサウンドでありながら疾走感に溢れている。

同じ8ビートを刻んでいても、曲調によっては跳ねていたり
ゆっくりなバラードやブルースでは

大きな円に囲まれたかのような軟らかいビートがあった。


いずれにしても共通点があって
どんな曲でも
どんなサウンドであっても“師匠”の音で
その中の切れ味がソレを証明していた。












『Drumは、叩いてるうちはDrumじゃない
叩かずにグルーヴさせるのがDrumなんだ
それができなきゃいまのうちにやめておけ

だってそーだろ?
グルーヴのないDrumのバンドなんて、誰が聴くんだ?
壊れたエンジンのクルマみたいなもんじゃないか』






その会話だけが、今でも鮮明に残っていて
ずっとそこにこだわり続けてきた。




未だに出口は見えてこないがやっと、“道”は見えてきた気がする。










Stanton Moore & Scott Kettner At NAMM 2012