MBAうらブログ

本家HPには書かないウラ情報をぼちぼちと書きつづっている

市場創造 3

2007-02-20 14:58:26 | MBA後ライフ
さて、前々回前回のお話は医薬品の市場創造のお話で、お薬(を売ろうとする人)によって病気が作られ、医薬品市場が作られること、お薬の本当の意義とは何だ!ってな内容であった。で、今回もその続き。
前回の例では、お薬はきちんと「本当の」(心疾患リスクや死亡率を下げるとか)価値があることを証明できている、というのを紹介した(ただし、一昔前までバリバリの新薬は「本当の」価値が証明される前に承認されていたのだが)。
でも、このブログ一応MBAの名前を掲げているので、お金の話もしておかねばならんのである(なんでや)。
で、前回の例に則って考えてみると、高脂血症薬の有用性は、MEGA studyによって証明されていて、この試験では約8000人の患者さんにご協力頂き、食事療法だけvs食事療法+プロバスタチン(高脂血症薬)の2つの群に分けて比較しているのである。平均5年間追跡して試験を行ったところ、なんと冠動脈疾患を33%も減少させるという驚異的な結果が得られているのである。
って、まず、ここで要チェック、33%も減少!と書くと100人に33人が助かったかのような印象があるが、大間違い、そもそも冠動脈疾患のリスク(発症数)は食事療法だけでも3%弱なのである(数字が明確に書かれていないので、グラフからの読み取り)。これにプロバスタチンを加えるとリスクが2%弱となるので、発症率は33%減少する、とこうなるのである。
実際には100人の患者がいて、冠動脈疾患を発生するのが(この場合6年間で)、薬なしでも3人、薬を飲んでも2人ってな具合である。要するに97人の人はお薬を飲んでも特にメリットはなかったということになるのである。ちなみに、このお薬5mgで約70円なので、試験で使われた10~20mg/日で使うと、10mgでも年間51,100円、5年間で255,500円となる。しかも、一人でだから、4000人という今回の試験だとお薬代だけで10.2億円かかることになるのである。で、救った患者数は4000人のうちの1%なので、40人。一人救うのに約2600万円かかる計算である。もちろん、冠動脈疾患を引き起こした場合は必ずしも死ぬわけではなく、新カテーテルやらバイパス手術やらやたらお金のかかる医療行為が行われるので、その分を差し引く必要があるが、面倒なので割愛(だって、前出のお薬の値段だって、発売当初はたぶん2倍位していたんだから)。高いか安いかは読者の皆さんにお任せするのである。
ちなみに英国では、高脂血症薬を使った方がコストベネフィットもあるという報告がある。ただ、医療費、特にお薬の値段が英国だと安いので、日本では??なのである。気が向けばこの辺の話もいつかしてみたいと思う。

注)数値はかなりあらあらです。むちゃくちゃではありませんが、グラフからの読み取りもあるので相当ずれているかもしれません。この点はご容赦を。計算間違い等があればコメントください。

市場創造 2

2007-02-09 22:50:40 | MBA後ライフ
さて、市場創造のために、病気が作られているというのが前回のお話であったが、今回はその続き。
そもそも治療薬があるから、病気が定義され、治療薬の普及が図られる(製薬会社・健康産業の狙い)のだが、そう聞くとなんだかひどい話である。例えば、前回の話でもちょっと取り上げた「高脂血症」。血中の脂質が高くなるという「病気」であるが、高脂血症になっても通常自覚症状はない。ただし、血中の脂質が高すぎると動脈硬化や心筋梗塞など、心血管系の重篤な障害を引き起こすリスクが高まるため(こちらについてはデータあり)、ある程度血中脂質濃度が高い人は高脂血症薬を使って脂質を下げるという治療が行われるのである(もちろん、薬物治療ではなく、運動や食事制限なども取られる)。
さて、ここで問題発生。血液中の脂質を下げたとしても、実際には何のありがたみも感じられず、患者さんは幸せを感じないのである(もっとも、健康診断のたびに、脂質が高いですねぇ、危ないですよ、と医者に脅されてきた人にとっては下がるとうれしいが)。そして、高脂血症薬と呼ばれるお薬は、厚生省に承認(お薬として使ってよいですよといわれること)されたときには、あくまで血液中の脂質濃度を下げる働きがある、ということしか確認されていなかったのである。要するに脂質が高いと危ない→脂質を下げるお薬である→使っても良いですよ、ということである。
ちょっと待て、まぁ、脂質が高すぎるのは確かにリスクが高いので、何らかの対応を取るべきだが、自覚症状もないのにお薬を飲んでほんとに役に立つの、もっというと貴重な医療費を(使っている本人の費用負担はともかく、関係ない人も保険料として負担を共有している)使ってよいのか、という意見が出てくるのは当然なのである。
お薬があるために病気が作られ(注)、必要かどうかわからないのにお薬が使われるとすれば大きな問題なのである。

と問題を定義してみたが、そこはさすがに抜け目(?)はなく、現在ではちゃんと高脂血症の人に対して、適切に高脂血症を使うことで、心疾患リスクを減少させる(真の患者へのメリットがある)ということが証明されているのである。
しか~し、ほんとにそれだけで良いのか!、と問題を定義したところで、さらに続く。

(注)高脂血症自体は高脂血症薬ができる前から、「病気」(というか臨床検査値異常)として、認知はされておりました。

市場創造

2007-02-04 20:51:56 | MBA後ライフ
マーケティングといえば市場創造である(なんのこっちゃ)。いろいろな定義はあると思うが、顧客の望むサービス・商品を生み出して、市場を新たに作り出し、利益を上げるというのはマーケティングの醍醐味なのである。古いところで言えば、クロネコの宅急便なんかもその一例であり、それまで見過ごされていた個人の荷物宅配という新しいサービスを生み出し、会社だけでなく、市場が急成長したのはご存知のことと思う。
で、この市場創造、医薬品についても言えるのである。医薬品の需要は病気のあるところに生まれる訳で、市場創造のためには病気を増やす必要があることから、ともすると死の商人!?的な感じもするが、決してそんなことはなく、生死に関わらず、またこれまで治療法がないような病気については治療薬が見つかった場合、お医者さんもしくは患者さんを啓発して、病気の知識・治療法を普及させるのである。
例えば、「骨粗鬆症」(カルシウム不足などで骨の密度が低くなる病気)なんて小難しい言葉は昔は知られていなかったが、最近では結構多くの人が知っているのではないか、と思われる。この病気、20年くらい前には年を取ったら腰が曲がるのは当然、と思われていたが(医者は治療する気もないし、患者も病気とは思っていない)、実際には骨粗鬆症により背骨が曲がっているということがわかってきたのである(というか病気として定義されてきた)。残念ながら既に腰が曲がってしまった人には効かないが、骨密度を上げるお薬が20年くらい前から普及してきたので、薬と病気の医者への啓発、最近では骨粗鬆症自体がマスコミなどにも取り上げられている(噂の「あるある」あたりでも取り上げていそうだが、残念ながらこの番組は見たことがないので不明)ので、普及してきた次第である(ちなみに薬を使う目的は背骨が曲がるのを防ぐというよりは、大腿骨[足の骨]の骨折を防ぎ、ひいては寝たきりになるのを防ぐのが目的)。
ちなみに似たように、病気を作り出し、市場創造しているケースはた~くさんあり、例えば、高脂血症や最近流行のメタボリック症候群(もっともこちらは治療薬そのものはない)のような健康そのものに関わるものから、ED(勃起不全)、AGA(男性型脱毛症)、SAD(社会不安障害)などいわゆる生活改善薬なども、最近の規制緩和により、直接患者さんに広報(TVコマーシャルなど)をできるようになったので、かなり知れ渡っていると思うのである。

長くなったので続く。