冬は一面に凍って、牡丹江の町まで田畑を横切って、直線に歩けたが、解けるとやはり道路を行くので、随分遠回りになり、時間もかかるようになった。
雪が終ると営庭の土が少しづつ現れはじめ、草の芽が出て1日1日青くなっていった。兵舎の屋根に乗せてあった土塊からも青い芽が伸びた。古参兵達は営庭からノビルを採ってきて、小さく刻んで飯に振りかけて食べていた。
雪が解けると靴が汚れる。折角、綺麗に磨いてやった上等兵の靴も直ぐ泥だらけにして、靴棚に放り込んであるのを見ると「やれんなあ」とうんざりしても、仕方がないので又、磨き直さなければならなかった。 靴磨きも班の前の庭に5,6足持ち出して保革油(羊の油)を付けて磨くのだが、その最中に将校が通る。「敬礼!」と言って、ブラシを右手に握ったまま立ち上がって敬礼をすると、その珍妙な格好を見て将校はニヤリと笑って通り過ぎて行った。ブラシを握ったままの敬礼は本来ならばビンタものであった。
裏山に挽馬部隊の馬の墓場があった。そこで若草の上に寝転がっていた時「これが福寿草だ」と教えてくれた助手もいた。又、空き家になった4中隊の兵舎の横から白樺の切端を見つけて、箸を作り大事にしていたこともあった。
又、道端の所々に大きな楡の木があり、根元には小さな祠が祀ってあった。墓場も演習の時トラックから見たが、木棺から足の骨みたいなのが突き出ていた。棺はいくつも乱雑に置いてあった。
雪が終ると営庭の土が少しづつ現れはじめ、草の芽が出て1日1日青くなっていった。兵舎の屋根に乗せてあった土塊からも青い芽が伸びた。古参兵達は営庭からノビルを採ってきて、小さく刻んで飯に振りかけて食べていた。
雪が解けると靴が汚れる。折角、綺麗に磨いてやった上等兵の靴も直ぐ泥だらけにして、靴棚に放り込んであるのを見ると「やれんなあ」とうんざりしても、仕方がないので又、磨き直さなければならなかった。 靴磨きも班の前の庭に5,6足持ち出して保革油(羊の油)を付けて磨くのだが、その最中に将校が通る。「敬礼!」と言って、ブラシを右手に握ったまま立ち上がって敬礼をすると、その珍妙な格好を見て将校はニヤリと笑って通り過ぎて行った。ブラシを握ったままの敬礼は本来ならばビンタものであった。
裏山に挽馬部隊の馬の墓場があった。そこで若草の上に寝転がっていた時「これが福寿草だ」と教えてくれた助手もいた。又、空き家になった4中隊の兵舎の横から白樺の切端を見つけて、箸を作り大事にしていたこともあった。
又、道端の所々に大きな楡の木があり、根元には小さな祠が祀ってあった。墓場も演習の時トラックから見たが、木棺から足の骨みたいなのが突き出ていた。棺はいくつも乱雑に置いてあった。