「私の従軍記」 子供たちへ

平成元年父の誕生日に贈ってくれた本、応召されて帰還するまでの4年間の従軍記を今感謝を込めてブログに載せてみたいと思います

コタラジャ 5

2006-07-02 10:10:07 | Weblog
 藤森分隊長が留守の時、
 「あの鳥を始末しようか」
と渡辺上等兵と大島上等兵が言った。そしてはいなくなった。
 「どうしたんですか?」と二人に聞いたら、
 「やったよ。お前これ、料理しろ」
と、毛をむしった裸の鷹を私に渡した。《えらいことになったなあ…》 私は観念して、その痩せた鷹をさばいた。2人はそれを持って調理場に消えた。
 夕食のおかずの煮込みの中に肉の細切れが入っていた。2,3人の者は、
 「あれだろう」といって食い残したが、他の者は食った。やはり、痩せていたので硬くて美味しくなかった。
 「斉藤、鷹が化けて出てくるぞ」 なんてからかわれたが、
 「殺したのは、俺じゃないぞ」と言ってやった。
 藤森分隊長は黙って食っていた。
 鷹を征伐して、やれやれと思っていたら、2週間ぐらいしてから、今度はモンキー(猿)を連れて来た。
 「どうしたんですか?」と聞くと、
 隣の将校が飼っていたが、今度移駐することになり、手放すことになって、飼い主を探していたから、貰ってきたよ」と答えた。
 そのモンキーはポケットに入るくらい小さくて、黒褐色で尾は長く、一寸可愛かった。私達は《又、始まった》と思ったが、猿ならどうにかなるだろうと別に反対はしなかった。
 このモンキーは、それから通信所の内と外を駆け回っていたずらをした。
 飯時、モンキーには別の食器に取ってやったが、それは食べずに、テーブルの上の配膳した飯や、皿の料理に、チョッと出てきて手をつけた。
 「汚い、この野郎!」
と蝿叩きなんか持って追い回すと、キャッキャッと言いながら逃げ回った。追い方が悪いと、食器の上を走られたりしたが、数人掛けで追い回すと居なくなった。
すると分隊長は1人で一生懸命捜して連れて来た。
 又、元の飼い主のいた宿舎から、
 「猿が来て困る、お前の所のものか」などと文句を言われたこともあったが、分隊長はよく辛抱して、可愛がっていた。

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