シンガポール占領計画

　作業隊に入れば、優先的に早く返すと言うことでここに来たのに、一向に帰還の話は無かったので、兵隊の気持ちも次第に荒れてきて、英軍、即ち敵さんを困らせてやれ、というふうになって来た。
　それと同時に、《どうせ返さないのだったらいちかばちか、もう1戦やってみよう》という張り紙を作業隊内で見かけたことがあった。それによると
　【我々は毎日の作業で、英軍の武器弾薬の所在をことごとく知り尽くした。この作業隊の人員（当時１万人といわれた）でもってすれば、１日でシンガポールは占領できる。みんな立ち上がろう】と書いてあった。後で聞いたがこの計画については、秘密裡にいろいろ検討協議がなされたともいう。真偽は不明だが、どうせ日本に帰れないのであればと、やけっぱちになっての考えでもあったろう。　こんなビラが４,５枚は続けて貼られた。