【千葉魂】新たな船出の時 井口監督の下、巻き返しの年へ
「みんな、しっかりと体を動かしているみたいだね」。そう言うと頬を緩めた。シーズンオフに入っても井口資仁監督は精力的に動き、選手たちの活動をチェックした。マリーンズをどうすれば再浮上させることが出来るか。10月に新監督に就任をして3カ月の時が流れた。つかの間のオフも時間を惜しむように動き回った。補強や練習方法などについて球団フロントと話し合いを重ねた。選手たちともコミュニケーションを深めた。その一方で、子供たちに野球の楽しさを伝えようと全国で少年野球教室を重ねた。そんな多忙な日々の合間、例年のオフよりも選手たちが球場に姿を現しハードなトレーニングを重ねているという情報が耳に入ってきた。選手一人一人が自発的に考え、取り組んでいる。何よりもうれしい事だった。その光景を想像すると、笑みをこぼした。
「最初は、なかなかそうはいかないけど、自主的にやれるチームを作りたい。時間は誰しも平等にあるけれど、それをどのように使うか。24時間という限られた時間をいかに有効活用するかだよね。選手たちが自主的にどんな体を作ってきてくれるか。自分も楽しみ」
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時間を無駄にせず、選手たちが活発な自主練習をしていることに強い手応えを感じる。新しい指揮官として打ち出した方針の中で、自主性と時間の有効活用はメインのテーマの一つ。11月の鴨川秋季キャンプでも「選手が次の練習を待っているような無駄な時間は作らせたくない」と次々とスムーズに練習を行える流れを作り上げた。フリー打撃での待ち時間は現役時代から効率が悪いと考えていた。だから、その間にも打てるようにゲージ近くにも数カ所、マシンやトス打撃をする空間を作った。練習時間を1時間ほど早めに始め、全体練習が早く終わるように設定した。その後の練習は自主練習。打撃を磨くも良し。走り込むも良し。ウエートで体を鍛えてもいい。それぞれが自分のウイークポイントと向き合い、レベルアップをすることを望んだ。
「キャンプインの2月1日より実戦を行うと選手たちに伝えている。選手たちが、その日にどんな体を作ってきてくれるかが楽しみ。競争はそこから始まるわけだからね。チャンスは与えるけど、結果を出さないと使うことはない。さあ、キャンプインで『今から体を作ります』というのは話にならない」
直接的には命令はしていない。ただ、競争をあおる策を打ち、自主性が生まれた。来春のキャンプでは競争と刺激を生み出す大きな要素を作った。1、2軍枠を完全撤廃しての選手全員でのキャンプ。従来の2月1日キャンプスタート日の1、2軍振り分けはどこか非効率的に映った。参考材料は前年の成績がほとんど。それでは選手たちの気持ちも高まらない。だから上と下の枠を作らず、同じ場所とメニューで争わせることこそがチームの活性化を生むと考えプログラムを考えた。それは監督就任が決まった時、最初に動いたことの一つでもあった。宿舎もこれまでは差別化していたが一本化する。「寝食を共にすることでコミュニケーションが生まれる。選手も首脳陣もね。いろいろとプラス」。球団に提案し実現した。狙い通りだった。選手たちは年末が近づいても体をイジメ抜くことを止めない。2月1日から始まる競争に照準を合わせるように必死のオフを過ごしている。
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「オレは今年まで現役だった。だから誰よりもこのチームの事を知っている。良い点も悪い点もね。ずっと見てきたから。誰よりもこのチームの事を知っている」
世間には現役引退即監督就任は難しい作業ではないかと捉える風潮もある。だが、若き指揮官はそれを真っ向否定する。今年、1年間、マリーンズで戦った。ベンチのど真ん中に陣取り、つぶさに様々な現象を観察してきた。誰がどう悩み、何を望み、いかにありたいと思っているのかを肌で感じてきた。そして誇れるマリーンズがどうして、どん底に沈んでいったのかという過程と状況も詳細に知っている。それは絶対にプラスになると考えている。だからこそ1年目から勝負をかける。
「メジャーに行って日本に戻ってきた時、ちょっとした浦島太郎状態だった。わずか数年でこんなに野球は変わるのかと思った。選手も変わっていた。情報を入れて状況を把握するのに少しばかり時間がかかった。そういう意味で今回、すぐに監督という仕事を任されたことをとてもプラス。違和感なく入ることができる」
捲土(けんど)重来の巻き返しに燃える選手たち。そして歴史的大敗を喫したチームを任され1年目からの再建に闘志をみなぎらせる若き指揮官。年の瀬の雑踏の中でマリーンズのいろいろな思いが交差する。新たな船出の時が近づいている。2018年。新たなシーズンは最後方から、一気にまくる。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)
(千葉日報)
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苦しみの象徴 伊東監督の結石…辞任発表11日後に
<今年のロッテ~担当記者が振り返る>
「今年のロッテ」は伊東勤監督(55)が辞任した。昨季は球団31年ぶりの2年連続Aクラスを果たすなど、就任5年間で3度CS進出。だが、今季は37試合目の5月16日に早々と自力優勝が消え、54勝87敗2分けで最下位。一時は球団ワーストを更新する借金40を重ねた。苦しみ抜いたシーズンだったが、8月のある日、その身に大変な事態が起きていた。
異変は、暑さも盛りを過ぎた8月24日の楽天戦(ZOZOマリン)で起きた。伊東監督が試合前練習に現れなかった。その11日前に辞任を表明。今季最後まで指揮は執るとしたが、やはり休養なのか。その時だ。「監督は病院です。理由はその…、尿管結石です」。球団の連絡に現場の緊張が解けた。伊東監督は試合までに到着。ちゃんと指揮し、勝利した。試合後は病状には触れなかったが、さすがにしんどそうだった。
翌日は、いつもの伊東監督に戻っていた。遠征のため、羽田空港に時間通り現れた。「今朝、出たよ。ほら」。財布から1ミリほどの黒色のかけらを取り出した。元凶を突き出し「大丈夫。ちゃんと洗ったから」と得意顔。さすがに誰も触ろうとしなかったが、ユーモア好きな普段の姿だった。
痛みは前日23日のナイター中からあったそうだ。試合後、定宿で横になったが寝付けない。明け方4時まで耐えるも限界だった。ホテルに頼み救急車で病院に担ぎ込まれたのが、午前5時。車椅子に乗せられ、看護師から「お仕事は?」と聞かれた。「ロ、ロッテの監督です」と生汗を流し答えた。相手の驚きようといったら、なかったという。
自ら「ストーンと出た」(※石だけに)と笑い話にしたが、あの結石は苦しみの象徴のように思える。23~26日に、やっと今季初の4連勝。痛みが出て消えるまでと重なった。勝てないストレスが結石の原因かは分からないが、勝てない原因ははっきりしていた。
(日刊)
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「もっと補強」の声もあるが…ロッテが示す方針転換
<ニッカンスポーツ・コム/プロ野球番記者コラム>
ロッテは、もっと補強しなくていいのか? このオフ、最下位に終わったロッテのファンから、何度となく、そういう意見を耳にした。ここまでの補強状況を整理してみる。
ドラフト8人(うち育成2人)
外国人投手2人(ボルシンガー、オルモス)
以上だ。
これにより、12月23日時点の支配下選手は計61人となった。上限の70人まで、まだまだ余裕がある。だから「もっと補強を」となるわけだが、61人には次の選手が含まれていない。
涌井(海外FA権行使)
スタンリッジ(残留交渉中)
ペーニャ(残留交渉中)
仮に、彼らが全員残留すれば、計64人。さらに、球団はあと2人の外国人選手(大砲と抑え候補が有力)を探している。そうすると、66人になる。
さらに、現在、3人の育成選手(安江、和田、森)を抱える。彼らを支配下とする場合に備え、最大2人の枠を空けておくとする。そうなると、68人。シーズン中の不測の事態(けが人続出や外国人の不振による緊急補強など)のために、1、2枠を空けるとすれば、実は、もういっぱいなのかも知れない。
補強すべき、という声は、新外国人だけでなく、他球団を自由契約となった選手が念頭にあるのだと思う。確かに、このオフは、実績十分だが来季所属が未定という選手が結構いる。そういう選手を補強して欲しいというファンの気持ちは理解できる。今なら、獲得できるチャンスは高いだろう。育成のための枠を1人に減らすなどすれば、枠は作れる。それでも、今のところ、表だった動きは見られない。なぜか。
答えは、重光オーナー代行の言葉にありそうだ。
5日の新入団選手発表会に出席。「今年は成績が悪かった。来年は、ぜひ優勝と言いたいところですが、目先の勝利にこだわらず、2、3年後に優勝するチームづくりをと、監督にお願いしました」と話した。井口新監督は、来季は3年契約の1年目。目先の勝利のために補強するのではなく、数年先を見据え、今いる選手の底上げを優先する。そういう球団方針を示した。ここ数年は、新外国人だけでなく、他球団を戦力外となった選手も積極的に獲得。常に「最低でもAクラス」を掲げてきた。もちろん、最初からAクラスや優勝を放棄しているわけではないが、方針転換と言っていいだろう。
ロッテを3年間、担当した。新しいロッテがどうなるのか、来年からは別チームの担当として見ていきたい。【ロッテ担当=古川真弥】
(日刊)
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ロッテ黒沢の生き方 球団と選手の“懸け橋”になる
<ニッカンスポーツ・コム/さよならプロ野球:ロッテ編>
スーツを2着、新調した。エクセルの勉強も始めた。
ロッテ黒沢翔太投手(29)は「育成から入って7年間。われながら、よく頑張ったなと思います」と穏やかに振り返った。1月からは、球団スタジアム部に配属。ZOZOマリンの飲食にかかわる管理や企画などを受け持つ予定だ。
ロッテでは引退した選手が球団に残る場合、打撃投手や用具係などの裏方がメインだった。職場の活性化を目指し、今回から球団職員としての採用も始めた。営業職に就く古谷とともに入社する黒沢は「選手の経験を生かして、職員と選手の間に立てる。選手はこう思っているとか、選手はもっとこういうことがやれるとか、提案したい」と“懸け橋”になるつもりだ。
変化を恐れない生き方は、選手生活でもそうだった。10年育成ドラフト1位で入団。1年目の春季キャンプ初日。特長を見抜いた西本2軍投手コーチ(当時)から「サイドにしよう」と言われ、上手投げから転向した。すぐには結果が出ず、何度かクビを覚悟。3年目の7月30日、支配下を勝ち取った。期限まで残り1日だった。「サイドにしてなければ、もっと早くクビになったかも知れない。後押ししてくれた」と西本氏に感謝している。引退を報告し、同氏の「よく頑張った」の言葉が染みた。
思い出は、13年の1軍デビュー戦。そして、昨年8月の日本ハム戦で、大谷に特大の1発を打たれたこと。「内角スライダー。良いコースだったんですけどね」と笑った。思い出の詰まった球場で、新たな1歩を踏み出す。【ロッテ担当 古川真弥】
(日刊)
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明暗を分けた明確な差。昨季Aクラス、日本ハムとロッテはなぜ低迷したのか…2017パ総括【小宮山悟の眼】
力の差が明確だったパ・リーグ
力の差がはっきりしているのがパ・リーグだと思っていた。そのため、福岡ソフトバンクホークスの優勝はある程度予想できた。しかし、これほどの差が生まれてしまった要因は、昨季1位の北海道日本ハムファイターズ、3位の千葉ロッテマリーンズの両チームが低迷したことが大きい。
特に5位に終わった北海道日本ハムファイターズは、前年の戦いぶりと大きく異なり、思うようにならないシーズンを過ごした。最下位に沈んだ千葉ロッテマリーンズもデスパイネが抜けた穴を埋められず、大きく尾を引いた印象だ。
ただ、今季のパ・リーグで明確な差が出たのは投手陣だった。
1年間を戦う中で、軸となるエース級の投手がどれほど活躍するかが非常に重要になる。チームというのは、エース級の投手に対してある程度の期待をかけ、星勘定を計算に入れているものだ。そうした選手が想定通りの活躍を見せてくれなければ、シーズン成績に大きく影響する。
今季のパ・リーグでは下位の3チームにそれが顕著だった。
日本ハムは大谷が開幕から投げられなかった上に、太もものをけがして離脱を余儀なくされた。最下位を独走したロッテは涌井秀章、石川歩の二人が期待を裏切った。ロッテはデスパイネの穴も大きかったが、投手力がしっかりしていて何とか試合をものにするだろうと予想していたのに2人を中心とした投手陣が思うようにならなかった。
オリックスも同じだ。エースの金子千尋は12勝(8敗)を挙げているが、チームが金子に期待しているのはこのような数字ではない。大型契約を結ぶ以前のFAで移籍するんじゃないかと言われていた時の働きぶりを期待していたはずだ。そういう点で、期待通りと言い切れないエース、軸となる投手が働いてないていないことが下位チームの低迷の原因になっている。
投手陣がしっかり働いた上位チーム
上位チームはエース級の投手陣がしっかりと働いた。
東北楽天ゴールデンイーグルスがいい例だが、則本昂大、岸孝之のWエースがしっかりと機能した。FAで獲得した岸が入ることによって、大きく連敗することがなくなるというのはシーズン前から予想がついた。則本が期待通りに15勝を挙げてくれることを想定して、対戦カード3連戦のどちらかに2人が先発することで大きな連敗にならない。上手くいけば、大きな連勝する可能性までみえる。もともとラインアップは計算できていたので、この2枚が入るだけで大きく違う。楽天のような戦力補強が正しいというのが分かったのではないか。
埼玉西武ライオンズは菊池雄星の奮闘に尽きる。
今まで岸がいたから、自分はエースではないという感覚でいた分、それが彼にとっては自覚が足りないといえる状態になっていた。それが横にいるはずの投手がいなくなった途端、自分しかいないという自覚が芽生えた。もともとずば抜けた能力を持っていた投手だったから、岸が抜けたことでようやく本領を発揮したということだ。
菊池がすばらしかったのは、投げているストレートの強さやスライダーのキレはもちろんだが、シーズン中に2段モーションを指摘されながら、それをも乗り越えたことだ。臨機応変に対応できる力も備わったということは、一人の投手として大きくなったことの証だ。
キャリアを積むことによって、投手としてのレベルが上がってきている。さらに目の前に立ちふさがるような壁があっても、それを打ち破って先に進めるような力がある。日本球界の中で5本の指に入る投手に成長したと太鼓判を押せる。来年は、アメリカに行く準備をする年といってもいい。西武が彼をどう扱っていくかは分からないが、彼自身は、少しわがままをいって、中4日で回してくれとお願いしてもいいのかなと思う。
厚い選手層で独走態勢築いたソフトバンク
やはり優勝した福岡ソフトバンクホークスは選手層が厚かった。シリーズを見ていても、ペナントでは何もしていない選手が短期決戦の試合に出て活躍する。レギュラーはもちろん、後ろに控えている選手もいつでも取って代われますよというのを証明していた。改めてソフトバンクの強さを感じたシーズンだった。エースクラスの和田毅や4番を打つ内川聖一が長い期間離脱していたにも関わらず、独走態勢での優勝は見事というしかない。
ソフトバンクの牙城はなかなか崩れない。来年も強いという印象だ。しかし、シーズンの盛り上がりを考えると、今年と同じような流れになってほしくないというのが本音だ。
ソフトバンクに隙がないわけではない。サファテが今年のように働けるかと言ったら、そう簡単ではないと思う。かなり登板過多だ。もし、他球団が試合をひっくり返してものにする試合が10試合くらい出てくるようになれば、また変わってくるだろう。
過去を振り返ると、V9時代の巨人が強いと言われている。他球団が束になって掛かっても、それでも強かった。王貞治さん、長嶋茂雄さんの力も偉大だったけど、それ以外もものすごい選手がそろっていた。
だが、V9の巨人と当時の他5球団との関係と、現在のソフトバンクと他の5球団との関係を比べると、まだ潰せる可能性はある。5球団が束に掛かっていけば、もっとおもしろいペナントレースを展開できるはずだ。来季は混戦を期待している。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。
(ベースボールチャンネル)
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