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拾い読み★2016-035≪コラム記事≫

2016年02月04日 19時55分41秒 | マリーンズ2016
ロッテドラ3左腕・成田は涙の数だけ上達― 高校恩師が明かす急成長の過去



「まさかドラフト3位でプロに行くとは」…成田が描いた驚きの成長曲線

 キャンプ初日からブルペンで51球を投じたロッテのドラフト3位・成田翔投手。昨夏の甲子園でブレークし、高校日本代表として日の丸も背負った左腕は、秋田商高2年から3年にかけて大きな成長を遂げていた。

「ランニングメニューが豊富でやりがいがあります。楽しいです!」

 故郷・秋田の雪景色のような色白で端正なマスクに汗がにじむ。ドラフト1位・平沢大河が老若男女から人気を集めているが、成田を囲むファンは若い女性が多い。配信された成田の動画が12時間で再生回数3万回を記録するなど、注目度は高い。

「(第一印象は)身長は小さいけど、体に力があるなと思いましたね。投げっぷりも良かったし、バッティングも当てるのが上手。でも、まさかドラフト3位でプロに行くとは考えてもない。(プロという)そんな選択肢すらありませんでした」と話すのは秋田商高・太田直監督だ。

 高校1年にしては能力が高かった。そのため、1年生ながら夏の甲子園のマウンドを踏んだが、まだ絶対的な力があったわけではない。

 成田の成長曲線は2年秋以降から急激に伸びている。2014年の秋季県大会。秋田商高は準決勝で大曲工(15年センバツ出場)に1対8で、3位決定戦では西目に0対7でそれぞれ敗れている。得点もできていないが、成田も打たれての敗戦だった。


急成長を遂げた要因とは

 太田監督が成田に助言したのは「配球を自分で組み立てていく」ということだった。いくらボールにスピードがあり、質がよくても打たれることがある。

 「どういう風にして打ち取るのか。打者の弱点を1打席で探していく作業をしよう」(太田監督)。

 配球は投手と捕手の共同作業。成田は「キャッチャーに従って任せるばかりではなく、自分も頭を使って考えないといけないと気づかせてくれました」と話す。それでも、昨年のゴールデンウィーク中に行われた八戸学院光星高との練習試合では、競っていた終盤に2点タイムリーを浴びるなど、春先はまだ抑え方をつかみきれていなかった。

 それでも、成田は「コントロールも良くなってきたし、ストレートの伸びが秋までと違う感じがありました」とボールそのものに手応えを感じていた。2年秋の県大会3位決定戦で右手首に打球を受け、のちに右手有鈎骨の骨折が判明するのだが、「怪我のお陰というのもおかしいですが、怪我をしたので下半身を鍛えられました」と言う。

 走り込みの成果は一回り大きくなった下半身が物語っていた。昨年5月下旬の県大会。身長170センチの体から投じられているとは思えない強いストレートと、曲がりの大きな縦のスライダーには目を見張るものがあった。

 そして、この県大会でセンバツ帰りの大曲工を4対3で下した。成田は「自分の考えた配球で抑えることができた」と自信をつかんだ。ツーシームを使えるようになっていたことも要因だが、センバツ大会の大曲工の映像も確認し、相手打者のひとり一人の苦手なところを突けた。


太田監督が明かす意外な一面、涙の数だけ成長

 夏は初戦(2回戦)こそ180球を費やし、ヒット10本を浴びたが、リリースポイントを前に修正したことで3回戦から「いける」と手応えをつかんだ。準々決勝では秋の東北大会出場をかけた3位決定戦で敗れた西目と対戦し、16三振を奪った。決勝は3安打9奪三振を奪う圧巻の投球を見せたが、それも7回1死まで走者を許さなかった。秋田大会全5試合を投げ、39イニングで奪った三振は55個。防御率0・46、奪三振率12・69で甲子園に乗り込んだ。

 甲子園の初戦は春の九州王者・龍谷高。初回から4連続三振とエンジン全開で、5回まで10K。試合の途中からはストレート中心からスライダー中心に配球を変え、終わってみれば、被安打3、16奪三振で勝利した。この試合でロッテのスカウト陣は成田の可能性を感じた。

 準々決勝で平沢に一発を浴びて仙台育英高に敗れたが、その後、高校日本代表も経験。ドラフトでロッテから指名を受け、プロ野球選手となった。夏の甲子園までは社会人チーム入りが噂されていただけに、高校2年から3年の成長がなければ、また、甲子園に出場していなければ、成田の人生はまた違ったものになっていたかもしれない。

「成田、悔しくてよく泣くんですよ」と太田監督は意外な(?)一面を話す。2年秋も、「東北大会に行くチャンスを逃した」と涙した。八戸学院光星高との練習試合でも配球を間違って痛打を浴び、太田監督が「ウチにとって夏の大会前の仙台育英戦は夏を占う試合」と言う仙台育英高との練習試合でもアクシデントで早々に降板し、目を赤くした。1球が命取りになることを何度も経験し、成田は涙の数だけ、成長してきた。

 1月の新人合同自主トレのノック。外野のポジションからも、ピッチャーマウンドからも捕球した後の送球が垂れず、野手のグラブに収まっていた。秋田では考えられないが、ブルペンにも入り、捕手を座らせてピッチング。「指のかかりはいいですが、まだバラつきがあります。アウトコースとインコースの投げ分けをしていきたいと思います」。まだ、高校で磨かれた制球力もプロのレベルで通用するとは思っていない。2月3日に18歳になったばかりの伸び盛り。170センチの体には大きなポテンシャルが詰まっている。

【了】

高橋昌江●文 text by Masae Takahashi

(フルカウント)
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