ちょこっとGUM

今、自分が出来ること。やれること。それを精一杯やっていかなくちゃ!!

コラム備忘録【7/14~7/15】

2019年07月15日 22時29分41秒 | マリーンズ2019
≪2019/7/14≫

浦和の群像/連載一覧
(1)ロッテ福浦和也 浦和で体に染みついた朝型生活
(2)千葉で出る ロッテ福浦和也の恩返し
(3)「広場恐怖症」公表のロッテ永野将司 投球に集中
(4)苦境越え前に進むロッテのドラ1たち
(5)急きょ捕手練習も 「よろず屋」細谷も昇格


ロッテ福浦和也 浦和で体に染みついた朝型生活

<浦和の群像1>

プロ野球といえば、多くの人が1軍の華々しい舞台を思い浮かべるだろう。一方で2軍球場では、若手や再起をかけるベテラン、リハビリに励む選手らが汗を流している。12球団、12通りの個性がある中で、ひときわ牧歌的で情緒ある雰囲気を醸すのがロッテ浦和球場だ。公式戦が無料で観戦でき、選手とファンの距離も近い。浦和の風景や選手の近況に焦点を当てた。

夏が来た。JR武蔵浦和駅から徒歩15分ほど。ロッテ浦和球場に近づくと、お菓子工場の甘いチョコレートの香りと、蚊取り線香のにおいがする。

一塁、三塁側にはそれぞれ、決して多いとはいえない座席が並ぶ。三塁側の観客スペースと、選手の動線が黒い布1枚で仕切られている箇所もある。球場とクラブハウスを結ぶ道路はいつもファンでいっぱい。選手は快くサインに応じる。ここは本当に距離が近い。

今年はやはり、ドラ1藤原の人気が突出している。女性が増えた。19歳に劣らず熱い支持を集めるのが、43歳の福浦。今季限りでの現役引退を決め、2軍打撃コーチを兼任している。前に言っていた。「今年が一番大変だ」と。どんな1日を過ごしているのだろう。

福浦の朝は早い。5時40分、起床。6時10分過ぎに千葉の自宅を出て、7時半に浦和着。9時半からは他の選手と打撃回りに参加。キャンプで披露した打撃投手は、今はしていない。

昼食後、試合前のシートノックを見守る。午後1時、プレーボール。あれ? ベンチに姿がない。

「自分の練習は試合中にやらせてもらってる。ありがたいよね。(試合後に)若い子たちが打ってる間は、見なきゃいけないから」

室内練習場でティー打撃をこなし、クラブハウスでウエートトレーニングに励んでいた。試合中のコーチ業は堀コーチに任せ、自分のメニューを終えたらグラウンドに戻る。夕方は室内で若手を指導。風呂に入って帰るころには午後6時を回っている。

家では野球好きの次男がナイター中継を見ている。今度は1軍の試合を、家族と観戦する。「別に見なくてもいいんだろうけどさ。やっぱり見ちゃう。香月とか、下で頑張ってたやつが出てると」。親心だ。

野球漬けの1日はまだ終わらない。iPad(アイパッド)を開く。昼間の2軍戦で、直接見られなかった間の映像をチェックする。「テスト添削する学校の先生みたいですね」と言ったら「本当だよね」と笑った。気付きがあっても、自分から選手に言わないのが福浦流。悩み、迷ったら聞いてくる。その時、答えられるように準備する。

不振に陥った主力が2軍調整後に復調し、ファンから「福浦再生工場」と称賛されたことが何度かあった。「もともと力があるから戻ってるだけの話。アドバイスはするけど、やるのは本人。何もしてないよ」。

日付が変わるころ床に就く。1軍戦力としてナイターに備える時は、昼に起きればよかった。比べるとおよそ6時間前倒しのタイムスケジュール。入団当初は寝坊・遅刻の常習犯だった。「たまに(夜)飯食って寝落ちしちゃうときあるの」と疲労をためても「5時半に勝手に目が覚める。慣れちゃった」。朝型が、体に染み付いてきた。

冒頭の「今年が一番大変」の真意を聞いた。

「何がきついって、選手に見せなきゃいけないこと。あいつらに思い切り振れとか、強く振れとか言ってるから。自分も振らないといけない。現役だから」

いちプレーヤーとして、試合に出ることもある。今の福浦にとって「打席」は、どんな意味を持つのか。(つづく)【鎌田良美】

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千葉で出る ロッテ福浦和也の恩返し

<浦和の群像2>

今季、ロッテ福浦和也(43)がイースタン・リーグ公式戦に出たのは7月9日時点で9試合。共通点がある。習志野秋津、柏の葉、船橋に市原-。千葉県開催の主催試合と、その直前のゲームということだ。

「千葉の地方球場は出るつもりでいるよ。近づいてきたら打席に立つ。いきなりでも打てないことはないけど、失礼じゃん。ある程度見せられるように、振れる状態にしないとね」

習志野市育ちの福浦にとって、これは引退前の恩返し行脚。基本は若手に出場機会を与えるべく、コーチ業に比重を置く。自分の出番は「たまに、くらいでちょうどいい」。その「たま」に意義を持たせた。

特に力を入れたのが5月11日の秋津だった。習志野高時代、投手として投げた思い出の地。“試運転”は同7日の日本ハム戦(浦和)。ここで右中間二塁打を放つと、本番はヤクルト館山から中前打で決勝点を挙げた。夜、駆けつけた高校野球部の同期たちと卓を囲んだ。「いつの間にか俺の2000安打のお祝いになっちゃって」。うたげは大いに盛り上がった。

いいところで打つ。いずれも代打で9打数3安打。昨季悩まされた首痛も、ポイントで振る分には問題ない。「打者福浦」。じかに見たい方、朗報です。

「8月4日は(2軍)最後のマリンナイターだから。出るよ」

9月には引退セレモニーも待つが、チーム順位次第で出場は未定。2000安打以来のZOZOマリンの打席。うぐいす嬢・谷保さんの「代打、ふくーらー」。盛り上がるだろうなぁ。

長く現役でいたから、18連敗の苦しみも、2000安打の喜びも味わった。ヤクルトの連敗が16で止まった時は「やっぱそう簡単に18は超えられないんだなあ。なかなか抜かせないね」と苦笑いしていた。

早朝から終日外で過ごす2軍コーチ業は、体力を消耗する。一方で1軍でプレーする重圧や高揚感は、言葉にできないものがある。「やっぱりモチベーションとか精神的には、1軍で活躍するっていい。お客さんに見られてさ。だからこいつらに、頑張れよって言ってる。そういうのを1人でも、2人でもね。味わえるように」。後輩たちに、見てほしい景色がある。

浦和球場は入団した25年前の面影をそのまま残す。1軍に初昇格した4年目まで、がむしゃらに汗を流した。「体力なさ過ぎて、本当に練習がきつかった。若い時しんどいのは当たり前なんだけどね」。

駐車場で話していると、帰る選手たちが次々とあいさつに来た。その中に、ある「しんどい」に打ち勝った投手もいた。

「公表して、結構いいことがいっぱいあった気がします」。2年目左腕の永野将司(26)だった。(敬称略=つづく)【鎌田良美】

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「広場恐怖症」公表のロッテ永野将司 投球に集中

<浦和の群像3>

イースタン・リーグが雨天中止になって時間ができた午後。ロッテ永野将司投手(26)は本を読んで過ごす。「ノイローゼに効く本とか、憂鬱(ゆううつ)な時に読む本とか。メンタル系です」。同じ心の病を持つ人たちから送られてきたものだ。

3月12日、不安症の一種である「広場恐怖症」を公表した。ひと言でいえば、乗り物が怖い。飛行機や新幹線などの閉鎖空間で「出られなくなったらどうしよう」「このまま死ぬんじゃないか」とパニックになる。今春キャンプは不参加。大学時代に発症し、ずっと隠してきた。でも「プロ野球選手」が発信すれば、救われる人がいると思った。

SNSを更新したら、たくさんコメントがきた。「勇気が出ました。頑張ってください!」。15通ほどのファンレターは“同志”からだった。「いいお医者さんがいます」「私はこれで治りました」。球場を出れば、ファンが「順調ですか?」と気遣ってくれた。

励ますつもりが励まされた。「実際に治ってる人がいるんだなっていうのが感じられて。心強かったです」。昨季は薬の副作用でパフォーマンスが低下した。だから2年目は野球を優先。通院は極力、試合のない日に。都内まで「電車に乗って」行く。経過を観察し、グラフで恐怖心のレベルを書き表す。カウンセリングやVRで、根気よく自分自身と向き合っている。

ドラフト会議前、各球団は候補選手の資料を集める。150キロが出る即戦力左腕はどの球団にも魅力的。だが永野の指名にはリスクが伴う。北海道、九州と移動が多いパ・リーグならなおさら。5巡目まで名前は呼ばれなかった。「一緒に治していこう。君は戦力になる」とGOサインを出したのがロッテだった。

「1軍(の試合)は関東限定でもいいと言ってくれている。ホームゲームとか、連戦が続いてる時に上がれるように、コンディショニングだけはしっかりしようと思って」

進化して応えたい。浦和球場のブルペンで5、6月と連日投げ込んだのはスプリット系の落ちる変化球。「2年目で対策もされるし、真っすぐ以外の決め球を習得中です」。もともとフォークは持っていたが、空振りを狙い球速アップを求めた。スピードと曲がり具合、病気と野球。うまくバランスを取るのは難しい。ゆえに挑みがいがある。

病を公表し、少し軽くなった心は、課題を見つけて取り組むことの充実感を与えてくれた。「今、次のステップって感じがします」。9日、ひとまわり大きくなった永野に今季初めて1軍からお呼びがかかった。まず投球に集中できる環境づくりが最優先-。それは同日昇格した佐々木千隼投手(25)にも当てはまる。(つづく)【鎌田良美】

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苦境越え前に進むロッテのドラ1たち

<浦和の群像4>

浦和球場とクラブハウス前の道路はいつも、ルーキー藤原待ちのファンが列をなしている。おなじみの光景を横目に、ロッテ佐々木千隼投手(25)は「大変そうですよね。すごいっすよね」とつぶやいた。

2年前のドラ1は、注目される苦労を知っている。「1年目って全然分かんないじゃないですか。プロの流れも。次の場所に移らなきゃいけないのに止められて、大丈夫かな、早く行かないと怒られないかなって」。連日テレビカメラ、記者、ファンに囲まれる。そして無情にも、離れていく。「活躍できなかったらやっぱ、取材とかされなくなりますし」。7月に右肘関節を手術した昨年は、1軍登板ゼロに終わった。

手術後の静かな環境が、野球に100%専念させてくれた。まず痛みがない。「気持ちが全然違う。普通に投げられる。それが一番でした」。思いきり振れた大学時代の映像と今のフォームを見比べたりもした。

よく「前の方が良かった」と言う人がいるが、アスリートは常に試行錯誤しながら前に進んでいる。「戻る」は簡単ではない。5月には5、6回と投球回ものびてきた。当たり前の幸せを実感した。年始に「手術して良かったと思えるシーズンにしたい」と言ったのを覚えている。9日の2年ぶり1軍勝利で、再びカメラに抜かれた表情を見れば「良かったね」以外の言葉は浮かばなかった。

時にドラ1はライバルと比べられる。佐々木の入団時は、ソフトバンク田中がそうだった。安田尚憲内野手(20)の場合は日本ハム清宮、ヤクルト村上がそれにあたる。嫌気が差すこともあるだろう。だが安田は「同世代に同じタイプの左打者が2人、3人いるっていうのは、僕としてもありがたいですよね」。感謝できる器の持ち主だ。

物おじせず肝が据わった村上と、丁寧で物腰柔らかい安田。正反対にも見える2人は昨冬、台湾のウインターリーグで野球談議に花を咲かせた。互いの練習法を話し合い、間近で打って吸収できるものを探した。「いろいろ考えてるなって。刺激になるし負けたくないと思いました」。闘争心を浦和に持ち帰った。

安田もまた、2年目の環境を改善している。昨季のドラ1特需に「常に大人に囲まれるのも1つの経験。ありがたかった」と、これまた感謝。一方で「振り返るとバタバタしてきつい時もありました。今年は自分と向き合って練習する時間が取れてます」。寮からの“通勤”も徒歩から自転車に変え、快適らしい。

毎年6月末までは雑草花粉に悩まされる。ドーピングに引っかかるため、強い薬は飲めないことが多い。昨年は目が開けられないほど症状がひどく、今年も顔が腫れていた。が、「やっと終わりました!」。花粉からも解放され、邪魔するものは何もない。

2軍で中軸を打ち、三塁を守る。「まだサードでレギュラーをとれる実力はない。もっと信頼されるようにやっていきたいです」。若さを燃やす面々が、朝球場にやってくるのは8時ころ。「早い日は7時前には来ちゃうかな」。その1時間前に、細谷圭内野手(31)は着いている。(つづく)【鎌田良美】

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急きょ捕手練習も 「よろず屋」細谷も昇格

<浦和の群像5>

会社員なら、先に出社するのは先輩より若手、というステレオタイプがあるかもしれない。偉い人がゆっくり来る。重役出勤なんて言葉があるくらいだ。ロッテ浦和の景色は逆である。

今岡2軍監督を筆頭に首脳陣は早い。午前7時、細谷圭内野手(31)と34歳の大谷が先陣を切ってウオーミングアップを開始する。「若手はある程度決められたメニューがあるから、従ってやればいい部分はあるけど、僕らは任される。逆に時間取らないと」。全体集合後は即スパイクでダッシュ。それまでに体をつくる。準備の時間は年々のび、朝は1時間早くなった。

細谷はユーティリティーと称される。内野手登録だが16年には外野を守り、今季は緊急時用に捕手練習も行った。「去年のいつだったか、鳥越ヘッドに突然『キャッチャーいけんのか』って聞かれて。経験はあります、できますって」。即答したものの、高校生以来。いざブルペンに入ると、マシンの球でも戸惑った。

「俺らこんな球打ってんだ、ピッチャーって、こんな球投げてんだって」。真後ろの視界は打席とは別物。でも「ポジションにこだわってる場合じゃないからね。『よろず屋圭ちゃん』ですよ」と笑う。新たな挑戦が尽きることはない。

夢を抱いてプロの門をたたくフレッシュマンは、まず1軍出場、そしてレギュラー定着を目指す。14年目、30歳を過ぎて思う。「やっぱレギュラーっていうのは中心にはあるけど、チームなんで。チームとして動くのに必要な役割っていうのもある。それをやらなきゃいけない立場かなっていうのは感じてる」。欠けたピースを埋めて元の形に近づける。代打、代走、複数箇所の守備。そこそこの覚悟では務まらない。

周りはほぼ後輩になった。あいさつや礼儀がなっていなければ、注意もする。そうしてくれた福浦や、金沢2軍バッテリーコーチの背中を見てきた。自分の番だ。「俺より年上の人が叱ってたら、いかんいかん、俺が先に言わなくちゃって思うし。実績がもっとあれば言いやすいのかもだけど。そうじゃなくても、人間としてのところでね」。

7月初旬にはグラウンドレベルで40度にもなる浦和球場。昨年からベンチ横の小部屋にエアコンが取り付けられ、今月3日には室内練習場に巨大な扇風機が設置された。趣は残したまま、少しずつプレー環境は良くなっている。「チョコのにおいも、球場も、ここはロッテを感じられる場所」と細谷は言った。菓子工場の甘い香りをかぐたびに、必死だった1年目の記憶がよみがえる。「でもそのにおいがすると、浦和(2軍)にいるってことになっちゃうから。フレッシュな気持ちになると同時に、もう1回頑張ろうと」。

2軍はずっといるべき場所ではない。取材から掲載までの間に、細谷と佐々木、永野が1軍に昇格した。浦和の連載で登場人物が半分1軍って…一瞬考えた。だがこれでいいのだと思う。入れ替えが活発で、頑張った人にチャンスが来る世界。細谷がチョコレートのにおいの届かない千葉にいることを、喜ぼう。(この項おわり)【鎌田良美】

(以上 日刊)

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≪2019/7/15≫

球道雑記
前半戦をリーグ首位打者で折り返し!
ロッテ荻野貴司、復活の裏にある物語。


 感慨に浸っているのは見ているこちら側ではなかったか。

 自身初出場となるプロ野球オールスターゲームを前に、千葉ロッテ・荻野貴司は淡々とした口ぶりでこう述懐した。

「今年も選んでもらえたことに関しては素直に嬉しいんですけど、オールスターだからと言って特に気負わずに。普段通りのプレーが出来れば良いかなって思っています」

 プロ10年目の33歳。

 昨年も監督推薦でオールスターゲームに選出され、初出場が内定していたが、直前の試合で右手人差し指を骨折し、やむなく出場を辞退していた経緯があった。

 そこから復帰して1年越しの球宴出場。プロ入りからほぼ毎年苦しんできた故障のいきさつと併せて書けば、少しは美談にも仕上がるはずだ。

 しかし……荻野はそうした空気になるのを嫌うかのように、普段通りの自分であることを強調する。今年のオールスターゲームに臨む。そこが彼の目標でもなく、終着の場でもないからだ。

 前半戦をパ・リーグトップの打率.330で折り返した。それについても特別な感情はない。

「本当になんもないんですよ(笑)。打率は日々変わるモノですし……。その日(結果が)どうとかも全く考えていないです」

 視線はもっとその先へ。普段と変わらぬ人当りの良い笑みを浮かべてそう返した。

リーグを代表するリードオフマンのはずなのに。

 これまでのプロ10年間の通算成績はこうだ。

 679試合出場、打率.278、186打点、27本塁打、191盗塁。

 リーグを代表するリードオフマンであることは、誰もが認めるところだ。それでも彼の探求心は尽きることがない。

 2017年のオフには、ある陸上競技関係者に師事して肉離れなど故障防止に繋がる走りを伝授され、自身の最大の武器である「足」にさらなる磨きをかけている。

「自分でも走り方がちょっと良くないかなと思っていて、そこが相手の先生との考えと一致したといいますか……怪我に繋がるような(これまでの)走り方をちょっとでも改善して、良い方向に変えていけたらと思いまして、話を聞かせてもらいました」

改善策は「走り」の矯正だった。

 荻野はこれまで3度、ハムストリングスの肉離れをシーズン中に起こしている。

 2013年9月に右大腿二頭筋、2015年5月には左大腿二頭筋、翌2016年9月には右大腿二頭筋を肉離れ。いずれも試合中の走塁で痛めたものだ。

 全力で試合に臨み、走ったことにもちろん後悔はない。

 だが、もう二度と怪我に悩まされないようにと、日々の準備とケア、および技術面でも何か改善できることはないかと常に試行錯誤を重ねてきた。

 そうした改善のひとつが「走り」の矯正だった。

 スピードラダー、ミニハードルなどを使用したトレーニングメニューも、この陸上競技関係者から学んだことだ。

 敏捷性を高めるだけでなく、体の動かし方から故障防止に気を配る。球場ではこうした器具を使用したトレーニングを続ける荻野の姿をわりと頻繁に見かける。

劇的に減った、ハムストリングスの故障。

「掻かないように。地面に伝えた力がそのまま上に上がって来れるように」

 試合前練習のベースランニングでも、「つま先接地」を意識しながら、自身の走りをチェックする荻野の姿を必ずと言っていいほど見かける。

「(教えてもらったことを)今もまだ完璧にできていないです。プレー中に走り方を考えながら走るということはなかなかできないので……。ちょっとでも自分の走り方が良くなればいいかなという感じで続けています。

 今まで積み重ねてきた自分の走り方もあるので、なかなかすぐに矯正は出来るものではないと思うのですが、試合になったらできないことを練習の中でちょっとずつ意識しながら、その中から若干でも良くなっていけたらいいかなって思って、続けていることです」

 それだけが要因とは言わないが、2017年以降、荻野がハムストリングスの肉離れで戦線離脱することは実際になくなった。

大塚コーチが反省する内容とは?

 そうした体のケアにも気を配る荻野の想いは、大塚明一軍外野守備・走塁コーチの胸にも十分届いている。大塚も彼なりのアプローチで荻野の身体の動きを日々チェックしている。

「医療に携わっている方に聞いた話ですが、我々は鉄を担いで走っているようなものだって言うんです。

 つまり体幹の柔軟性が失われると、肩にしろ、肘にしろ、体幹との連動性を失って、その結果、小手先だけで頑張り過ぎて(限界が)来てしまう。コア(体幹)が主導になって動く手先、足先は良いんだけど、そこが動かないと手先、足先に頼るわけじゃないですか。そうなると(腱が)切れてしまう。そういうひとつの論点もあるわけです。

 だから僕は、彼(荻野)のスローイングを見ているときも、疲れてくるとカーブみたいな、子供が投げるジャイロ回転のようなボールを投げることがよくある。なので、現場を預かる身としてそういう日々の変化を見るようにしているんです」

 大塚が言うには昨シーズン中盤、戦線離脱する要因となった右手人差し指の怪我も、そうしたコアの柔軟性を保つことで防げることではなかったかと、自身の反省も含めて話す。

「昨年も試合中に打席で手にボールを当てて怪我しましたけど、やっぱり疲れからコア部分の機能性を失って、振りにいった結果、ボールにガーンとぶつかってしまったのがあると思うんですよね。あそこでちゃんと(体を)割っていれば避けられていたものが、体を振ってしまったから、そうなってしまったわけで……。

 そういう傾向が例えばスローイングから見ても、バッティングから見てもそうだし、必ず症状として出るわけですよ」

荻野のポテンシャルなら8割の力でも。

 こうした日々の変化については、2人でセッションを重ねることで防げると考える。荻野のポテンシャルを持ってすれば、8割の力でも充分、今季の数字(成績)は残せると考えている大塚コーチだけに、コンディショニングについては技術指導以上に特に気を配る要素だろう。

「残りの20%を極めようとするのは彼の“欲”の部分じゃないですか。その部分は、その道の達人に話を聞かせてもらいながら、求めていけば良いと思うんだけど。僕はその80%を維持できれば充分と思うし、その80%を維持できるように日々観察するわけです。

 もちろん残りの20%についても僕なりの感性を突っ込んだりはしますよ。そこはいつもの会話ですよね。そこで彼が納得して取り入れることもあるだろうし、自分独自でやりたいこともあるだろうしって感じです」

「1年間をフルに戦いたい」という想い。

 2010年のルーキーイヤー時は46試合出場で打率.326、盗塁25の数字を残し、見ていた我々に強い衝撃を与えた。

 あれから9年――。

 単純な盗塁数の比較では当時の数に及ばないが、中身の部分では着実な進化がある。

 2017年から使用する「コウノエベルトスパイク」も、彼のパフォーマンス及び故障防止に一役買っているようだ。

「ちょっとでもリスクが減るなら色んなものを試してみて、それが良ければ使ってみようかなって感じでやっています」

「一年間をフルに戦いたい」その想いは誰よりも強い。

 数多の苦しみを味わったからこそ、生まれたものがそこにある。

 オールスターゲーム、そしてシーズン後半戦、荻野貴司の戦いはこれからも続く。

文=永田遼太郎

(Number)

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≪2019/7/15≫

【ロッテ】巻き返しのカギは涌井・中村奨の復調…担当記者が選ぶ後半戦のキーマン

◆投手

 前半戦は借金ターンも、CS圏内の3位とは1差と巻き返しが可能だ。投手陣では23歳の二木が6勝、22歳の岩下が3勝、20歳の種市が4勝と若手台頭がうれしい誤算だ。後半戦はここまで3勝のエース・涌井の復調が求められる。「18番はエースが背負う番号。そういう存在になりたい」と背番号を変更し臨んだ今季は5月8日の西武戦で挙げた白星を最後に8戦連続勝ちなし。昨季も5月末から勝ち星に恵まれない期間が続いたが、球宴明け以降は盛り返しただけに意地を見せられるか。

 ◆打者

 打者のキーマンには中村奨を推す。昨季は143試合フルイニング出場を果たし、打率2割8分4厘、39盗塁をマークするなど不動の3番として活躍した。今季は練習中に清水バッテリーコーチと衝突し左目付近を裂傷した影響もあり、規定最下位の打率2割3分1厘。盗塁数も下半身のコンディション不良があり10にとどまっている。「結果が出ていないので何も言えない」と言い訳はしない。それでも自己新の12本塁打、40打点と打線に欠かせない存在だけに後半戦の爆発を期待したい。(長井 毅)

(報知)

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≪2019/7/15≫

先発ローテの“世代交代”で巻き返しを図るロッテ

佐々木千隼が656日ぶりの白星でローテ入り

 プロ野球のペナントレースの後半戦がいよいよ幕を開ける。両リーグともに序盤戦は混戦模様だったが、現時点では両リーグ首位の巨人とソフトバンクが頭一つ二つ抜け出している。しかし、2位以下は混戦となっており、後半戦も激しい戦いが繰り広げられそうだ。

 とくにパ・リーグは、2位の日本ハムから6位のオリックスまで、わずか4ゲーム差と大混戦。どのチームにもクライマックスシリーズ出場のチャンスがある状況だ。

 そんななか、5位のロッテに救世主となり得る存在が出てきた。3年目の右腕・佐々木千隼である。佐々木は2016年、ドラフトでハズレ1位としては、史上最多となる5球団が競合した逸材で、当然、即戦力候補として1年目からローテーション入りを期待されていた。

 しかし、ここまでの2年間では思うような結果を残すことができず、右肘の手術も経験するなど苦しんでいた。3年目の今季も開幕は二軍スタートとなり、ようやく7月9日に一軍初昇格を果たした。今季初登板となった昇格同日の対日本ハム戦では、7回1失点の内容で自身2年ぶりの勝利もマーク。実に656日ぶりの勝利で、「佐々木ここにあり」をアピールしたと言えるだろう。

 オールスターゲーム期間に入ることもあり、登板翌日に登録抹消されたが、井口資仁監督は佐々木を後半戦でローテーションへ組み込むことを決断。チームが上位に浮上するためのキーマンとなりそうだ。


前半戦では若手の二木、岩下、種市らが奮闘

 今シーズンのロッテは涌井秀章と石川歩、そしてマイク・ボルシンガーと実績と経験のある3人を軸としながら、先発ローテーションを回す構想だった。しかし、石川とボルシンガーは故障で離脱した期間もあり、軸としての役割を果たしたとは言い難い。また涌井も5月8日を最後に2カ月以上も勝ち星から遠ざかるなど苦しんだ。前半戦を終えた時点で、この3人で8勝11敗と3つの負け越しでは、上位争いもままならない。

 そんななか、借金1で踏みとどまれているのは、二木康太(6勝5敗)、岩下大輝(3勝2敗)、種市篤暉(4勝1敗)と若手3人の奮闘があってこそ。この3人で13勝8敗と貯金を5個つくっており、チームを支えている。ここに佐々木も入っていくことで、ロッテの先発陣の魅力がグッと増す感がある。

 この4人の年齢を見ると、佐々木25歳、二木23歳、岩下22歳、種市20歳と、全員が25歳以下と若さにあふれている。これはロッテの先発ローテーションの世代交代が起きていることを意味する。

 後半戦で5位からの巻き返しをしていくためには、彼らのような若い先発投手たちの活躍が必要不可欠。また、涌井や石川、ボルシンガーと実績のある投手たちが、彼らを支えるような存在となれば、チームの底上げにもなる。

 そんな若手投手たちのなかで懸念されるのは、シーズンを通して戦った経験があるのが二木しかないことだろう。その二木も規定投球回に到達したのは、2017年の1度だけ。その他の3人は、年間100イニングに到達したこともなく、まさにここから先は未知の領域となる。

 後半戦は、夏場の連戦における疲労、そして順位争いのプレッシャーなど、前半戦以上に過酷な戦いになることは明白。そんななかで、彼ら若手投手たちがどんなピッチングを見せてくれるか。混パの行方を左右しそうなロッテ若手先発陣の今後にも注目していいきたい。まずは15日、メットライフでの西武戦で岩下が先陣をきる。

(ベースボールキング)

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≪2019/7/15≫

「二番に強打者」が多いパ・リーグ。
その成績とチーム順位の関係は?


 前半戦を終え、オールスターも行なわれたプロ野球。今年は、セ・リーグの首位を走る巨人が丸佳浩の加入もあり、坂本勇人が二番を打つなど、その打順に注目が集まっている。

 ここ数年、MLBでは「二番に強打者を置く」ことがトレンドとなっている。これは「得点力を高めるには打席が多く回る上位打線に打力のある選手を置くべき」という、セイバーメトリクスの理論に基づくもので、すでに多くのMLBのチームが取り入れている。例えば、ヤンキースはアーロン・ジャッジを二番に据えており、現在地区首位と好調だ。地区順位は4位(7月14日時点)だが、大谷翔平の所属するエンゼルスも、MLB最高の打者と称されるマイク・トラウトが二番を務めている。

 日本では、1990年代後半から2000年代前半にかけて、日本ハムが小笠原道大を二番に据えて強力な「ビッグバン打線」を形成したことが知られている。最近では、2017年に楽天が長打力のある助っ人外国人を二番に起用して注目を集め、チームも3位と好調だった。

 もちろん打順はチームや監督の方針で決まるものなので、どのチームも二番に最強打者を置いているわけではない。とはいえ、やはり二番打者がバッティングで良い結果を残しているとチームも好調なのだろうか? 今回は、パ・リーグ6チームの「二番打者の成績」を調べてみた。

※記事内の選手成績は7月10日時点でのもの

●パ・リーグ順位表(7月10日時点)

1位 ソフトバンク 84試合48勝32敗4分 勝率.600
2位 日本ハム   84試合41勝39敗4分 勝率.513 首位とのゲーム差7.0
3位 西武     82試合41勝40敗1分 勝率.506 首位とのゲーム差7.5
4位 楽天     82試合40勝40敗2分 勝率.500 首位とのゲーム差8.0
5位 ロッテ    81試合39勝40敗2分 勝率.494 首位とのゲーム差8.5
6位 オリックス   83試合36勝42敗5分 勝率.462 首位とのゲーム差11.0

 パ・リーグの順位はこのようになっている。交流戦を優勝(勝率1位)したソフトバンクが7ゲーム差で首位。日本ハムが2位、西武が3位と続くが、2位以下の順位については、6位のオリックスを含めてもそれほど差はない。どこかで大きな連勝や連敗をしたチームがあれば、すぐに順位は入れ替わりそうだ。

 では、各チームの二番打者の成績はどうなっているのだろうか?

●リーグ1位 ソフトバンク 今宮健太(二番で33試合スタメン出場)
試合:61
打席:260
得点:34
安打:64
本塁打:9
打点:25
盗塁:3
犠打:2
犠飛:0
三振:40
併殺打:1
打率:.271
長打率:.415
出塁率:.333

 主力の離脱が相次ぎ、なかなかスタメンが固まらなかったソフトバンクだが、今季最も多く二番を務めているのが今宮(現在、登録抹消中)だ。2013年、2014年には年間62犠打を記録するほどの高いバント技術があるだけでなく、2017年には14本塁打を打つなど一発も期待できるバッター。今季もチーム4位タイの9本塁打と活躍しており、現状は「打てる二番打者」と考えるべきだろう。

●リーグ2位 日本ハム 大田泰示(二番で68試合スタメン出場)
試合:74
打席:340
得点:49
安打:91
本塁打:13
打点:49
盗塁:4
犠打:0
犠飛:3
三振:64
併殺打:11
打率:.286
長打率:.478
出塁率:.324

 日本ハムは、昨年に続き大田を二番に起用。2017年、2018年と二年連続で二桁本塁打を記録し、今シーズンもリーグ14位タイ(チーム2位)の13本の本塁打を放っている。また、長打率は四番の中田翔とほぼ同じような数字。「二番に強打者を置く」という日本ハムの伝統どおりの配置だと言える。

●リーグ3位 西武 源田壮亮(二番で72試合スタメン出場)
試合:80
打席:371
得点:49
安打:94
本塁打:0
打点:25
盗塁:21
犠打:9
犠飛:2
三振:34
併殺打:4
打率:.278
長打率:.343
出塁率:.320

 西武は、源田が不動の二番を務めている。打率.278は過去2年と同水準で盗塁もリーグ2位と、シュアなバッティングと高い走力・守備力でチームに貢献している。一方、長打率は規定打席達成選手33人中30位と低く、今季いまだ本塁打が出ていないように長打は期待できない。

●リーグ4位 楽天 島内宏明(二番で23試合スタメン出場)
試合:76
打席:338
得点:39
安打:73
本塁打:7
打点:39
盗塁:1
犠打:3
犠飛:1
三振:43
併殺打:7
打率:.246
長打率:.343
出塁率:.328

 今季の楽天は、序盤は茂木栄五郎やオコエ瑠偉、今江年晶といったバッティングも期待できる選手が主に二番を担当。前半戦を終えた時点では、5月中盤まで四番に起用されていた打力のある島内が二番に据えられることが多かった。二年連続二桁本塁打を記録するなど、打撃に優れた島内が二番に入ってからは打線が活性化。「攻撃的な二番打者」がチームに良い影響を与えていると言えるだろう。

●リーグ5位 ロッテ 鈴木大地(二番で51試合スタメン出場)
試合:78
打席:331
得点:43
安打:86
本塁打:12
打点:46
盗塁:3
犠打:6
犠飛:1
三振:41
併殺打:6
打率:.298
長打率:.502
出塁率:.372

 ロッテは81試合中51試合で鈴木を二番に起用している。今シーズンの鈴木は好調で、打率と長打率はリーグ7位、本塁打数はリーグ16位タイと、四番打者並みの成績を残している。現在リーグ1位の打率を誇る荻野貴司との一、二番コンビは他球団にとって脅威だ。


●リーグ6位 オリックス 西浦颯大(二番で18試合スタメン出場)
試合:49
打席:150
得点:16
安打:26
本塁打:1
打点:12
盗塁:6
犠打:4
犠飛:1
三振:34
併殺打:0
打率:.191
長打率:.235
出塁率:.240

 リーグ最下位のオリックスは不動の二番がおらず今季は日替わり状態。そこで、序盤で多く起用された西浦の成績を挙げてみた。オープン戦で巨人の菅野智之からホームランを放つなど注目された西浦だが、どちらかといえば長打よりもシュアなバッティングと守備力が持ち味のオーソドックスな二番打者タイプだ。

 パ・リーグ6球団の二番打者をまとめてみたが、打撃力が特徴の選手を二番に起用しているのはソフトバンク、日本ハム、楽天、ロッテの4チーム。反対に、つなぐバッティングや走力・守備力が持ち味の選手を起用しているのが西武とオリックスだ。

 打力のある選手を二番に多く起用しているチーム同士が上位争いをしているのを見ると、「二番に強力な打者を置くべき」という理論は正解なのかもしれない。

 ちなみに、セイバーメトリクスに基づく打順の重要性では、「一番と二番と四番」を重視すべきだとしている。これが、二番にも強打者を置くべきという理論につながっているのだが、やはり打順を考えるうえで、「一番と四番も大事」という当然の理論で言えば、リーグ最高レベルのリードオフマン・秋山翔吾と四番・山川穂高を擁する西武がリーグトップの423点をたたき出しているのも納得できるだろう。

(Sportiva)
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