
侑さんが異名同音のあつかいについて、現在、洗礼をうけているところです。
2声の旋律聴音では、伊藤征夫・岡坂慶紀ほか著「聴音と視唱 2声の練習」から第79番、ロ長調、4分の3拍子、12小節の課題を聴きとりました。
ロ長調は、調号にシャープが5個つきます(ファ・ド・ソ・レ・ラにそれぞれ♯)。音階は7つの音でできていますから、ほとんどの音階固有音が派生音というわけです。
調号が増えるにつれて、おなじみのハ長調やト長調などを聴きとっていたときとちがって、思いがけないミスが出てきます。ひとつは、♯系の音を♭の音として感じたりして、音階がずれてしまうこと。
たとえばロ長調の第3音「レ♯」は、異名同音で読みかえると「ミ♭」になります。聴き手が「ミ♭」によりなじみがあると、ついつい「ミ」と書いてしまうのです。すると、そのあとの音が、2度ずれた状態で聴こえてしまいます。
それだけならばよいのですが、もともとの音階の音(音階固有音)が変化して、半音高まったり、半音低まったりするとどうなるでしょうか?
ロ長調の音階第5音「ファ♯」は、つぎの「ソ♯」に向かうとき半音進行すれば、「ファ♯→ファのダブルシャープ→ソ♯」となります。
また「ミ」が「ファ♯」に向かうときは、「ミ→ミ♯→ファ♯」です。
ダブルシャープは慣れない記号かもしれませんが、こうしたときに必要となる大事な変化記号です。「ファのダブルシャープ」は鍵盤上は「ソ」に一致する(異名同音)わけですが、これを「ソ」と認識すると音と音の関係がくずれてしまいます。また調性や音階を理解した、音楽的な耳とはいえません。
「ミ♯」も「ファ」と異名同音ですが、「ミ♯」には固有の意味があるので、これを安易に「ファ」におきかえてはいけません。
侑さんはよく理解してくれました。
音は点のようにひとつで成りたっているのではなくて、ほかの音と関係しあって存在しています。文脈によって、「ミ♯」や「ファ」にかわります。
異名同音について理解するためには、よくなじんだ調に移調してみるとよいと思います。
今回はロ長調でした。これを半音高く、ハ長調に移調したらどうなるでしょうか?
「ミ→ミ♯→ファ♯」の箇所は、ハ長調では「ファ→ファ♯→ソ」になります。これを「ファ→ソ♭→ソ」と聴くのはおかしいことがわかると思います。ハ長調にはこれまでたくさんなじんでいるので、自然に音階音の関係がつかめているのです。
「ミ♯」を「ファ」と安直に読みかえるのは、ハ長調で「ファ♯→ソ♭→ソ」と聴くようなものです。
2声の旋律聴音は、いつも書きとったあとの宿題として、おうちで2つの調に移調してさらってもらうことにしています。今回のロ長調も、ハ長調などに移調して、どんな音になるか確かめてもらうことにしました。
いま勉強していることは、「これはなんの音?」といってひとつの音の高さだけをいいあてていたソルフェージュとは段階が異なってきています。こんごは音と音の関係について理解をふかめてゆきましょうね。
それからピアノの練習をしていて、ダブルシャープやダブルフラットをふくむ、あまりなじみのない音が楽譜に書いてあっても、「カンタンだから」という理由で異名同音に読みかえないようにしましょう。そうした音楽的でない読みかえをしていると、その場かぎりはよいかもしれませんが、音階の仕組みを耳で理解することはできなくなります。
がんばって。(こうき)
レッスン日 2008年6月27日(金) 18:00
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