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レポピ - Piano Lesson Report

埼玉県上尾市&桶川市にある「たかすぎ音楽教室」(ピアノ・声楽・ソルフェージュ・楽典)のレッスン風景をつづります。

ドミナント・モーション

2006年08月31日 | レッスン

高校1年生、カペペくんのソルフェージュのレッスンです。

「第21回発表会」ではピアノ独奏で、ハイドンの「主題と変奏」を弾きました。それにくわえて主科であるフルートで、バッハの「フルート・トラヴェルソのためのパルティータ」より「サラバンド」と「ブーレ・アングレーズ」を演奏してくれました。

ピアノと声楽教室の発表会だと思ってホールにいらしたお客さんは、舞台にフルートが登場してさぞかしおどろいたことでしょう(そのほかファゴットや、ヴァイオリン、ギターの演奏もありました)。インパクトは絶大でしたし、もちろん演奏もよかったです。

さて、レッスンはひさしぶりです。
高校の吹奏楽部の活動がいそがしく、夜遅くまで練習についやされるのはあたりまえ。そのたびにレッスンは延期になってしまいます。夏期休暇の最後になってようやく部活がお休みになり、こうして教室にくることができました。

今日は単旋律聴音のほかに、コードづけ(伴奏づけ)をしました。
テキストは呉暁(ご・あき)編著「才能を育てる子供のソルフェージュ」上巻、第204番と、第205番です。
ハ長調で8~12小節の単旋律が書いてあります。これにふさわしい和音をつけ、コード・ネームを書きこみ、ピアノで弾奏しながら歌います。

まずコードを見ました。

第204番
第1~4小節「C → Am7 → Dm7 → G7」
第5~8小節「C → D7 → G7 →C」

よくできています。
第1~2小節めはもっとも単純に和声づけすると、Ⅰの和音(C)が2回つづきます。Ⅰが2回つづく場合、後続するⅠはⅥの和音(Am)に置換可能です(代理コード)。和音の機能はかえずに、ひびきだけが変更できます。カペペくんはこのテクニックをよくおぼえていて、じっさいに「C → Am7」とひびきを変化させることに成功しました。

Ⅴの和音であるG(もしくはG7)の前に、ドッペル・ドミナント(Ⅴの和音のⅤ)であるD7がつかわれています。こうして原調以外の調性から和音を借りてくる「借用和音」をつかいこなせるようになると、単純な旋律であってもグッと大人びた雰囲気が出てきます。なかなかよいです。

第205番
第1~4小節「C → Am7 → Dm7 → G7」
第5~8小節「C → Dm7 → ConG → G7」
第9~12小節「C → G → G7 → C」

これも和声進行上に問題はありません。ただし第9~12小節の和音はⅠとⅤ以外のひびきがなく、工夫の余地がありそうです。検討してみました。

和声の工夫とはこの場合、代理コードへの置きかえ、ドミナント・モーションを利用した借用和音の使用などをとおして、最初に設定した和音を組みかえる(リハーモナイズ)作業をいいます。

第10小節めでⅤの和音(G)が登場します。たしかに旋律の音(レシソ)だけを見ると、ここにはⅤしか設定できないように思えます。しかし、ここが思案のしどころです。

まずⅤの和音(ソシレ)は、基本的につぎにⅠの和音(ドミソ)に進行するしかなくなりますから、あまりはやい段階でつかってしまうと工夫の余地がなくなります。Ⅴの和音はできるだけ最後までとっておき、サブドミナント系の和音を上手につないでひびきを多彩にするよう心がけます。

和声の技術がある人とは「Ⅰ → 多彩なつなぎ和音 → Ⅴ → Ⅰ」という進行がつくれる人をさします。ⅠとⅤのあいだに、どれだけべつの和音を設定できるか、という点にその人なりの腕の見せどころがあるわけです。

まずⅤの和音は、最後までとっておくこと。第12小節のⅠ(C)のコードは確定ですのでいじらず、第11小節のⅤ(G7)をふたつに割ってみます。G7の前には、そのⅤの和音であるD7が設定可能です。「D7 G7」

いま見つけたD7の前には、そのⅤの和音であるA7がおけます。さらにA7の前に、5度の関係にあるEm7をおきましょう。
第9~12小節はつぎのようになりました。
第9~12小節「C → Em7 A7 → D7 G7 → C」

最初に設定した「C → G → G7 → C」とくらべると、G7が出てくるまでに3つのあたらしい和音がはさみこまれて、ひびきが拡張されています。

これら3つの和音は、ひとつのルールにしたがってみちびきだされています。すなわち、5度進行(ドミナント・モーション)です。
もっとも普遍的な機能和声「Ⅴ→Ⅰ」を利用し、Ⅴ→Ⅰの和音の連鎖をつくりだしてゆくと、上記のようなリハーモナイズができるのです。

カペペくんは作曲にも興味があり、コードの知識もあります。ドミナント・モーションを利用した和音の組みかえをじっさいに眼にして、すぐに理解できたようです。
あとは経験。たくさんおなじタイプのコードづけにふれ、繰りかえし定石を経験することによって身につけてゆきます。

次回はどんな工夫がみられるでしょうか。(こうき)

レッスン日 2006年8月29日(火) 10:30

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