「弁護士になりたい。大学に行かせてほしい。」と言う又市征治に、父・久治は当然反対する。
かつて「中学を出たら働いて親を養うのは当たり前だ。」とまで言った久治にしてみれば、この息子は何を言い出すのか、と思ったことだろう。
征治は何度も父に自分の思いを語ったという。
弁護士になりたい、自分や父と同じような境遇の人々を助けたい、実の息子にそこまで言われて心を動かさない親がどこにいるだろうか。
しかも征治は頭もきれるし弁も立つ。久治も「この息子ならもしかしたら・・・」と思ったのかもしれない。征治の熱意に、久治はとうとう「地元(の大学)なら」と折れた。
征治が喜んだのは言うまでもないが、それは束の間のことだった。その直後、父が脳溢血で急死したのである。59歳だった。
進学を断念した征治は「こうなったら稼ぐしかない」と、バーテン、中古車のセールスなどを始めた。征治は昼も夜も働いた。とにかく稼いで金を貯めてから、もう一度大学を受験しようと思っていたという。
ようやく金回りが良くなってきた頃、群馬にいた兄・久義から「まじめな職に就け」と一喝される。家族のために旧制中学を中退して群馬で売薬をしてきた兄には征治も頭が上がらなかった。
征治は、あらためて将来を見つめなおし、富山県庁に勤めることにしたのだった。
(敬称略)
かつて「中学を出たら働いて親を養うのは当たり前だ。」とまで言った久治にしてみれば、この息子は何を言い出すのか、と思ったことだろう。
征治は何度も父に自分の思いを語ったという。
弁護士になりたい、自分や父と同じような境遇の人々を助けたい、実の息子にそこまで言われて心を動かさない親がどこにいるだろうか。
しかも征治は頭もきれるし弁も立つ。久治も「この息子ならもしかしたら・・・」と思ったのかもしれない。征治の熱意に、久治はとうとう「地元(の大学)なら」と折れた。
征治が喜んだのは言うまでもないが、それは束の間のことだった。その直後、父が脳溢血で急死したのである。59歳だった。
進学を断念した征治は「こうなったら稼ぐしかない」と、バーテン、中古車のセールスなどを始めた。征治は昼も夜も働いた。とにかく稼いで金を貯めてから、もう一度大学を受験しようと思っていたという。
ようやく金回りが良くなってきた頃、群馬にいた兄・久義から「まじめな職に就け」と一喝される。家族のために旧制中学を中退して群馬で売薬をしてきた兄には征治も頭が上がらなかった。
征治は、あらためて将来を見つめなおし、富山県庁に勤めることにしたのだった。
(敬称略)