政治家「又市征治」という男

元政治記者の私が最も興味を持った政治家、それが又市征治だった。その知られざる人物像に迫る。

又市征治との出会い

2007年06月05日 | Weblog
 平成14年7月、サラリーマン等の医療費の窓口負担を、2割から3割に引き上げることなどを定める健康保険法の改定をめぐって、国会は荒れていた。
 会期末が迫る7月25日の参議院厚生労働委員会。
 与党は強行採決に踏み込むだろう。野党はそれを阻もうとするだろう。
 張り詰めた空気の中、審議は進む。
 委員会室にはこれから起こることに備えて、各党の議員が続々と終結してきた。それがさらに室内の緊張を煽った。

 自民党の中原爽の質問が終わったとき、同じ自民党の理事である中島眞人が意を決したように「委員長・・・」と手を挙げた。いよいよだ。
 その後の議事録は、次のようなものである。

○委員長  「中島、中島君。」(発言する者多し)
○中島眞人君「私は……」(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)
○委員長  「……」(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)

 議事録もまともに取れないほどの強行採決、そして乱闘状態である。
 与党側は、プロレスラーの大仁田厚を委員長のボディガード役に付け、委員会室から連れ出させた。 
 しかし委員長が退席した後も、室内の騒ぎは収まらない。
 なおも与党議員と野党議員の小競り合いは続く。民主党の若手議員の中には「大仁田に殴られた」「スーツを破られた」と言ってベソをかいている者もいた。
 狭い委員会室には元々の委員、乱闘要員の議員、取材陣など百数十名がひしめき合っていた。
 そのとき、室内に大きな声が響いた。

 「静まれェ!」

 誰よりも大きな声だったが、その声の主は冷静だった。

 「民主党の理事、集まれ。自由党、共産党、社民党の代表者、集合!」

 気おされて訳が分からないという表情で、おずおずと何人かの議員がその声の主の前に集まってきた。その姿は、喧嘩を親に咎められた子どもたちのようだった。
 その声の主は、こう続けた。
 
 「この強行採決は許せるものではない!これから我々は代表者で委員長室へ抗議に行く!他の者は全員解散!」
 
 その迫力に、議員たちは毒気を抜かれたようにしばらく顔を見合わせていたが、すごすごと委員会室から引き揚げていった。
 
 今度は取材陣が顔を見合わせる番だった。「今のは誰だ?」皆、口にすることは一緒だった。
 国会議員は衆参合わせて七百名を超える。もちろん選挙ごとに入れ替わる。記者といえども、全ての議員の顔と名前を覚えている者は、なかなかいるものではない。

 それでも知っている者がいて、こう言った。「又市・・・又市征治。去年の選挙に出てた。」

 興奮状態にある百名以上もの議員を一喝して乱闘を収めるというのは、生半可なことではない。それを前年に当選したばかりの一年生議員がやってのけたと知ったとき、私は驚くと同時に、高揚感をおぼえた。

 この又市征治という政治家を見てみたい。又市征治という男を書いてみたい。
 一体どんな人物なのだろうか。

 興奮状態から醒めつつある委員会室で、私一人が興奮気味だった。
(敬称略)

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3 コメント

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面白いブログを拝見しました (sdpj_2007)
2007-06-13 17:25:55
トラックバック、ありがとうございます。
又市さんがこんなに叩き上げの政治家であったなんて、私は知りませんでした。続きも是非読ませていただきたいので、またお邪魔させていただきます。

ところで私が社民党に期待するのは、実は時代遅れと言われている労組が支持しているという要素があります。日本の政治勢力の中で「赤・緑連合」を作り出せるとすればそれは社民党しかありません。(昔、伊藤茂さんも同じようなことをおっしゃっていたような気がします)その「赤」側ののキーマンは又一さんだと思いますので、今回の参院選でも是非議席を守って欲しいと思っています。
返信する
ありがとうございます (元記者M・T)
2007-06-13 22:02:55
 私のブログ(政治家「又市征治」という男)へのコメント、ありがとうございました。
 さて、又市征治氏は「通好み」「玄人好み」の政治家だと言われています。
 又市氏がまだ議員になることも考えていなかった7年前、政治評論家の早坂茂三氏が又市氏と対談し、その人柄を絶賛しています。いずれ本文でも紹介するつもりでしたが、先にその記事を紹介しておきたいと思います。

「労働組合の指導者と偉そうに言いながら初心を忘れ、労働貴族に成り上がったり…する連中をげんなりするほど見てきた僕だが、又市さんは一味も二味も違った。久しぶりに、すがすがしい男に会ったなあというのが素直な印象ですね。・・・富山県の労働運動で指折りの指導者である又市さんの原点は、はじめにイデオロギーありきではなく、仕事に密着した正義感だ。さらにいいところは55歳になっても旨の炎が燃え続けていることだね。みごとだなあ。・・・社民党はへたをすれば今度の総選挙で壊滅しかねない。何とかその灯を消したくないと、純な思いからそう叫ぶ又市さんの後味はとてもさわやかだ。」

 早坂氏はご存知の通り、政治記者出身で田中角栄元首相の秘書を務めた人物です。その早坂氏をしてここまで言わせる労働運動家は、なかなかいるものではありません。
 また書いていきたいと思いますので、どうぞご期待ください。
返信する
面白い! (gakusya_x)
2009-01-31 06:38:30
政治というもの”そういう見方もあるものだ・・・
私は総理・内閣中心ですものね・・・
歴史に残る出来事を・・・・・・・・
しかし、凡人が命をかけても歴史に残らん・・・
すべて・・藻屑に消えてゆく・・・・・・・・・

私利私欲・党利党略・主義主張を超えたら・・・
手柄を立てれる・・・・そんな男も・・
紹介して!!””
返信する

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