
歯医者にチェックアップに行き、かぼちゃんの散歩をして、葉書の返事を書く。年一度年賀状だけの付き合いもよいものだ。だが嬉しいのは20枚くらいまで。返事を書かなければというプレッシャーが溜まってくると、しぶしぶ書いてる気持ちが文字に現れてしまう。ところが5枚とか多くて10枚くらいだと、ただ嬉しくありがたく、うきうきした気持ちが返信にもにじみ出る。
故サー・ネヴィル・マリナーの夫人から頂いたカードには、「いつもと同じ夜でした。モーツァルトの最晩年の三作を振り終え、いつものように機嫌よく帰宅し普段通りベッドに入った。それが最期でした。可哀想なのはネヴィルではなく残された私達の方ですよ。彼は最後まで幸福でした。」と書かれてあった。
Haiku master 中原先生から頂いた寒中見舞は私の鏡台のそばに飾った。
ニックの友人のチェロ教授のいる音大を受験した生徒から「合格しました!」とカードが届いた。ニックもこれで一安心。心の中の未処理の部屋に置いてあった名前の札を、合格の部屋へ移し、しっかりとピンで留める。一件落着。めでたい!
ニックはいつも、ただチェロの奏法を教えるだけでなく、ピアティゴルスキー師から受け継いだ宝を後進に伝える使命を持って、一人一人を教えている。だから、ただチャイコフスキー優勝者の推薦状をゲットしたに留まらず、ピアティゴルスキーの師系に連なろうというチェリストが、プロでもアマチュアでも、一人でも増えて欲しい。一回きりのレッスンでは伝えきれない。縁を大切に通ってくれる生徒には、ニックの持てる全てを譲り渡す。一生の付き合いとなる。カード一枚でもその心意気は伝わるのだ。