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ミセスローゼンの道後日記

約束をすつぽかしたる朝の蝉

しーくしくしくしくしー、というひぐらしの声を聞きながら熟睡してた。はっと目覚めると、部屋の中に誰か居る。かんかん帽みたいなのをかぶり、座布団を丸めて小脇に抱えた落語家みたいな人がドアの前に立っている。ひぐらしが鳴きやみ、しーんとした部屋に、ハロウ、という声がひびく。一瞬父かと思い、父はハロウなどと言わないなと思い直し、次にX夫の四季介君がふざけてそんな格好をして遊びに来たような錯覚が起きる。ひぐらしが、しーくしくしくしくしくしー、と鳴く。しーん、とする。
「あれ? まだ寝てるの? 九時十九分の電車で町へ行くんじゃなかったのですか?」という英語が聞こえて、完全に目が覚めた。朝からビクラム(ホット)ヨガに行ってた楼前先生が、帽子をかむってヨガマットを抱えて帰ってきたのだ。ひぐらしのせいだ。ひぐらしの声を聞きながら冷房もかけずに暑い部屋で寝てたので、夏の夕方、西日の中でうたたねしてる気がしてた。しかも東京の家で、ピアノのある居間のソファで寝てる夢を見てた。そんなわけなかった。今は朝。で、私は友達と会う約束に完全に遅刻してる。飛び起きて着替えて、先生に駅まで送ってもらう。車の中で、しーくしくしくしく泣いてしまう。先生が、「今すぐ彼女に電話なさい」と言う。「電話しにくい」と答える。「ばかたれ。(*)何も考えずにまず電話しろ。」と先生に叱られ電話する。幸い彼女は許してくれる。優しいなあ。
後日、「お詫びに友達のアパートへ行く」と言ったら、楼前先生が、「私も行く。一緒にお詫びしてあげる。」という。「いいって。一人で行けるから」というのに、「いいからいいから」とついてくる。で、結局二人で、高層アパートの涼しいリビングで、ビールやワインやシーフードパスタやポテトサラダや冷奴をご馳走になる。彼女のハズバンドはサイエンティスト。堂々たるジャパングリッシュ。楽しいひと時を過ごし、お土産までもらう。「楽しいお詫びだったね」と言ってサウナみたいな猛暑をとぼとぼ歩いて帰る。(帽子忘れて帰る。)

*先生は、クロサワ映画かなんか見てて覚えた「バカタレ」という言葉に今はまっている。

写真は、今はまってる飲み物、セロリ味のソーダ。ブルックリン橋の絵がかわいい。

コメント一覧

更紗
たびたびコメントすみません!
思わず一緒に涙ぐんでしまいましたが、楽しいお詫びになってよかった~。

セロリ大好き。どんな味か飲んでみたいものです。まずうま?
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