ミセスローゼンの道後日記

かき氷器しまひそびれてまた使ふ

かぼちゃんの梳いた毛を桜の木にかけ置く。

俳句王国日本の俳都松山には「一句一遊」というラジオの人気番組がある。日本はおろか世界中どこからでも投句でき、夏井いつき組長がリスナーの俳句を読み、辛口且つ抱腹絶倒のコメントをする。私も最近ほぼ毎回投句してる。今度の兼題の一つは「甘」。私はまず、甘という字のつく季語を探すことから始める。甘酒、甘茶、甘雨、 甘菜、甘野老、甘納豆。てっ!あの有名な三月の甘納豆のうふふふふ(坪内稔典)は連作だった!一月から十二月まで甘納豆シリーズ超おもろ。甘夏に爪鞘當のなしとせず(中原道夫)。爪鞘当ってどういう意味やろ?鞘当は三角関係?爪鞘って猫の爪のアレ? なしとせずってあり?ご本人に聞いてみたいけど、いつ又お目にかかれるやら。鮭は秋の季語だから甘鮭って使ってもいいよね。あま酒の地獄もちかし箱根山、いいなーこのホラーな感じ蕪村さん。てな風に例句読んでいくのが楽しく、勉強になる。甘のつく季語で、ピンとくるものが無ければ、次に甘のつく単語を考える。これはもう際限なくある。甘噛み、甘やか、なんて使ったらニックの喜ぶ艶笑句になる。今から柿や栗のうまいシーズンだから、甘柿、甘栗なんたら五百人ずつくらい出してくるであろう。甘柿と甘栗はよそう。いやいや、敢えて甘柿甘栗で名句をものすれば、逆に目立って金曜日に詠まれるかも、あるいは甘干という手もある、と戦略をあれこれ立てるのも面白い。外国から出せば詠まれるんじゃね? 前書き付けて誰かに捧げたらどうよ? なんて姑息な手も使う。まあ何千通?と集まる中で自分の句が読まれたら、宝くじに当たったみたいに嬉しいものだ。
実のところ、甘という字で、私が最初に連想した言葉は、甘葛(あまづら)である。芥川龍之介の小説「芋粥」である。うだつの上がらない中年侍の五位が、長年の夢であった甘葛の汁で煮た芋粥を飽きるまで食べさせられる芋粥責めに合うという、洗練された拷問、グルメSM、ある種のイジメホラーだ。枕草子の「上品なもの」シリーズにも、夏の暑い日かき氷に甘葛の汁をかけ真新しい金の器に入れて食べるのはビューティフル、というくだりがある。ああまたかき氷食べたくなっちゃった。
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