ミセスローゼンの上人坂日記

暖かな路地に入りて三軒目


十年も営業してた店を昨日でたたんだ。数日前からスタッフや店内を撮影してアルバムをつくったり、きれいどころから差し入れがあったり、壁の汚れを見ても感傷的になったり、最終日には怒涛の買取が一日中続いたりで、常連客も集まって、閉店の瞬間に立ち会うため休日出勤する店員もいて、高校の文化祭のような騒ぎ。私は先週から今週にかけて精算を任されてた。売り買いの計算を合わせ、レポートや表を作るのだが、これが最終日はレジが混み合って失敗が多くて、帳尻が合うまで、失敗を一つ一つ見つけて訂正していかねばならなくて大変だった。笑顔で接客しつつ、指と目はパソコンの外と中をさまよう。必死にやってる最中、レジ前を友人知人の顔が白日夢みたいに浮かんでは通り過ぎる。ああ、来てくれたんだ、と思うが挨拶できたのはほんの数人。だから今言います。
来てくれて本当にありがとう。
がらがら、シャッターを閉めた瞬間、拍手。店長や世界中のチェーン店から来てくれた助っ人を囲み全員で記念撮影。しかし私はそこからが精算の修羅場なので、そう感慨に浸ってもおられない。それに入ったばかりの人間が十年間ここで苦楽を共にしてきた彼らと同じだけ感動しては申し訳ないという気もした。
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