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安保法案:海外が支持?? つまずく外交

2015-08-23 14:17:05 | 戦争法案
3日前、『安保法案44カ国が支持 政府資料、欧米・アジア主要国が賛同』という記事が上がり、ここぞとネトウヨ、安倍支持者、賛成・推進派がNetに群がり、一時検索ページを埋め尽くした。

やっと上がった好材料?
支持・推進派は得意満面だったが、そもそもこの記事を上げたのは政府御用達誌の産経と読売だけである。他、各誌は見向きもしなかった。ついて推進派はご不満な様子だ。

対して、反論記事はそれほど見られなかったが、それを良いことに推進派は言いたい放題。
だがそもそも当該記事は本質を隠した偏向報道であって、ここに事実は語られていない。最近、内閣の支持率が下がって不利な状況にて、産経や読売はこうした「プロパガンダ」に必死な様相が目立つ。

ついては、ここで反論記事の紹介を。

「【失笑】産経ニュース(フジ系)で「安保法案44カ国が支持」⇒「だから安保はいい法案」みたいな記事があったのでツッコむ」(健康になるためのブログ 8月20日)

>アメリカの侵略戦争に散々付き合わされてきた、ヨーロッパ諸国(NATO)は日本がその枠組みに入ってくれたら負担が減るので歓迎でしょうね。

>(爆笑)外交なんて言うものは「国益の奪い合い」ですよ。
>諸外国がもろ手を上げて賛成しているという事は、諸外国の国益になることに決まってるじゃないですか。

>米国防総省筋は「安保関連法案は世界から見れば常識的な取り組みだ」と指摘している。
>しかし、こんな簡単なロジックもわからず、こんな幼稚な報道で「ほら外国様が言ってらっしゃる」「グローバルスタンダードだ」なんて言う輩は日本にはいませんよ。



落ち着いて考えれば単純なことである。海外の捉え方と、国内(当事者)の「戦争法案」に対する捉え方はかなり視点が異なるということが言える。
それぞれの国は、それぞれにおいて「利己的」である。まず自国の利益を考えるのは当然だ。その上で、利になるか害になるか、損か得かの判断になる。決して当事者の身になっては考えない。


また、「Yahoo!知恵袋」の回答に、以下のようなものがあった。(一部抜粋引用)

>実際に日本が「政治」「軍事」で立国することははなく、日本列島が浮かぶ、中国、韓国、ロシアに囲まれた地政学的な運命から、「経済」「社会」「文化」「教育」「観光」「スポーツ」において、バランスよく相互発展することこそが、逆に戦争の抑止力になるということを追求する政治家が本当の政治家であり、軍事力での戦争や安全の抑止力を追求するだけの政治家は、それは軍国主義の独裁者でしょう。

>それを、「安保法案を他国がみな賛成している!」とよろこんでる一部の国民が、政治が弱くなっている日本において、政治的に強い「独裁的政治と法制を期待している」ことになるんです。
>まさに、それこそが、第一次世界大戦のときに、ドイツで国民がヒトラーを生んでしまったメカニズムなんです。



的を射た正論である。
一方、こちら。端的で解り易い。

【孫崎享が激怒】安保法案はペテンだ!集団的自衛権では平和にならない!



この辺のところ、更に解説しているのがこちらのブログ。

「安保法案44ヵ国支持の真相! 『安保法案はペテン!国際社会は軍事的手段だと思っていない』 孫崎享氏」(憂国の凡人・錦織ワサビの書斎 8月22日)


 * * * * *

さて一方、北朝鮮と韓国がキナ臭い。

ことの発端は先日、韓国軍兵士2人が、非武装地帯に埋められた北朝鮮の地雷の爆発で大けがをしたことによる。

「韓国に対抗 北朝鮮が体制を宣伝する放送再開」(NHK 8月18日 6時51分

>韓国と北朝鮮の間の非武装地帯では、今月4日、北朝鮮によって埋められた地雷が爆発して韓国軍の兵士2人が大けがをし、これを受けて韓国軍は先週、軍事境界線の近くで大音量のスピーカーを使って北朝鮮の体制を非難する放送を11年ぶりに再び始めました。
>韓国軍によりますと、これに対抗して北朝鮮軍も17日から、みずからの体制を宣伝し韓国を非難するための放送を再開したということです。


 

「北朝鮮は攻撃準備完了 韓国は警戒強める」(NHK 8月22日 5時24分

>北朝鮮軍は20日、南北を隔てる軍事境界線近くの韓国軍の部隊に向けて砲弾などを撃ち込んだうえで、韓国軍が11年ぶりに再開した北朝鮮に対する非難放送を、日本時間の22日午後5時半までにやめなければ「軍事的行動を開始する」と通告しました。そして、21日夕方からは、韓国と対じする前線地帯でいつでも戦闘が可能な警戒態勢を取る「準戦時状態」に入りました。
>北朝鮮の国営メディアは、「万端の準備態勢を整えた軍人たちは、報復の炎を浴びせる一念で攻撃命令を待っている」として、北朝鮮軍の前線部隊の攻撃準備が完了したと伝えています。
>これに対し、韓国のハン・ミング(韓民求)国防相は、21日夜、国民向けの談話を発表し、「北の挑発には断固として対応する。わが軍は固い意志で国民の生命と財産を守るためあらゆる努力をする」と述べ、平静を呼びかけました。


 

「緊張緩和なるか 韓国と北朝鮮の高官が会談へ」(NHK 8月22日 17時54分

>韓国大統領府の発表によりますと、韓国と北朝鮮は22日午後6時から軍事境界線にあるパンムンジョムで高位級会談を開くことで合意しました。
>会談には韓国側からキム・グァンジン(金寛鎮)国家安保室長とホン・ヨンピョ(洪容杓)統一相が、北朝鮮側からファン・ビョンソ軍総政治局長とキム・ヤンゴン統一戦線部長が、それぞれ出席します。北朝鮮軍は20日、軍事境界線近くの韓国軍の部隊に向けて砲弾などを撃ち込んだうえで、韓国軍が11年ぶりに再開した北朝鮮に対する非難放送を日本時間の22日午後5時半までにやめなければ、「軍事的行動を開始する」と通告していましたが、その期限はすでに過ぎました。
>こうしたなか、南北が高位級会談を開くことで合意したのは双方とも、これ以上緊張が高まるのを避けたいという思惑があるとみられます。



結局は北朝鮮の「威嚇」。そして「駆け引き」である。
双方とも、本格的な戦争は決して望んではいない。もとより、戦争にでもなったら自殺行為であることは北朝鮮も充分承知だ。自暴自棄、自棄のやんぱちでしかない。
更に、北朝鮮が壊滅するようなことにでもなれば、大量の難民が中国、韓国、そして日本に流れ出る。周辺国も、ひいては世界が北朝鮮有事を望んではいない。思えば何のための経済援助や物資援助か。

一方、韓国には駐留米軍が居て、「米韓相互防衛条約」を結んでいる。
韓国の現有総兵力は約65.3万人、うち陸軍約52万、海軍約6.8万人(海兵隊2.8万人含む)、空軍6.5万人、予備役380万人である。さらに在韓米軍2万8,500人が駐在する。
しかし考えれば、北朝鮮の威嚇攻撃、挑発を以って、これが決して「抑止力」になっていないということを示したのではないだろうか。

例えて言い換えれば、「日米安保条約」がどれだけのものなのか、強いてはこの度の「戦争法案」が「抑止力」になるとは到底考えにくく、却って緊張を高めると見るのが極めてマトモな見方である。

韓国と北朝鮮の間で起きていること、早わかりQ&A
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ) 8月22日

韓国と北朝鮮の間で何が起きているのか。韓国は20日、北朝鮮の砲撃に対して数十回の対応射撃を行った。韓国は軍事境界線沿いの大型スピーカーシステムで北朝鮮政府を批判するプロパガンダを放送しているが、48時間以内にこれをやめなければ、さらに攻撃すると脅している。韓国はスピーカーの電源は切らないとしている。

Q:韓国はなぜ北朝鮮に向けてプロパガンダを流しているのか

A:韓国政府は、軍事境界線の南で4日に地雷が爆発し、兵士2人が負傷した事件を受けて放送を開始した。国連の調査では北朝鮮に責任があるとされたが、北朝鮮政府はこれを否定している。

Q:北朝鮮がプロパガンダ放送に武力で対応したのはなぜか

A:放送では北朝鮮の金正恩第1書記に対する批判もしているが、これは同国では最大の反逆罪とみなされている。専門家らによると、北朝鮮軍は金正恩氏への忠誠を示すために行動したようだ。

Q:戦争につながる公算は大きいか

A:北朝鮮が脅しをかけただけで終わるケースはたびたびある。だが、若い金正恩氏の動きを予測することは難しく、今回の応酬が制御不可能な状況に発展するリスクを高めている。韓国も、死者が出た2010年の攻撃を受け、北朝鮮に対する軍事力行使の制限を緩めてきた。

Q:注目すべき主なポイントは何か

A:北朝鮮は22日午後5時(日本時間午後5時半)を期限としている。この時点でスピーカーシステムが動いていれば、北朝鮮は再び攻撃に出るかもしれない。しかし、北朝鮮は韓国政府との協議も提案しており、これが解決につながる可能性もある。


「菅官房長官、韓国と北朝鮮を引き合いに安保法案の早期成立訴える」(FNNニュース 8月22日)



>韓国と北朝鮮の緊張の高まりを引き合いに、安全保障関連法案の早期成立を訴えた。
>菅官房長官は22日、青森・弘前市で講演し、北朝鮮が韓国と対峙(たいじ)する前線部隊の「準戦時状態」入りを宣言したことにふれ、安全保障関連法案の今の国会での成立が必要だとあらためて強調した。
>菅長官は「北朝鮮は、ミサイル実験を何回もした。韓国との間で、この数日間、緊迫状況が続いている。安全保障関連法案が成立することで、国民の平和な暮らしを守ることができる」と述べ、法案の成立に理解を求めた。



格好の材料と見て、また政府がこれを煽る。国民はそろそろ気付き始めているのではないだろうか。

 * * * * *

また一方で、
「ロシアのメドベージェフ首相、北方領土の択捉島を訪問」(FNNニュース 8月22日)



>ロシアのメドベージェフ首相が22日、北方領土の択捉島(えとろふとう)を訪問した。
>メドベージェフ氏が、北方領土訪問を強行するのは、3度目となる。
>インタファクス通信などは、メドベージェフ首相が22日午前、択捉島の空港に到着したと伝えた。
>滞在中は、水産工場を見学したり、現在行われているロシア政府主催の愛国教育フォーラムに出席するとみられる。
>日本政府はこれまで、訪問の中止を強く求めていて、菅官房長官も21日、「絶対に受け入れられない」と表明していた。
>今回の訪問強行で、日本とロシアが調整しているプーチン大統領の年内の日本訪問などに影響を与える可能性がある。



「日本「隣人」、中韓「友人」 択捉島訪問のロシア首相」(朝日新聞 8月22日)

>ロシアのメドベージェフ首相が22日、北方領土の択捉島を訪問した。ノーボスチ通信によると、地域への外国投資の誘致に関し、中国と韓国を「友人」と呼び、北方領土の返還を求める日本を牽制(けんせい)。北方領土を「先行発展地域」に指定し、独自に開発を急ぐ考えを強調した。


「日本は大戦の結果認めず=岸田外相の訪ロ延期に懐疑的-ロシア」(時事ドットコム 8月23日)

>ロシア外務省は22日、声明を出し、メドベージェフ首相の北方領土・択捉島訪問に対する日本の抗議について「国際社会に重要な(9月の日本の降伏文書調印による)第2次大戦終結70年を前に、日本は大戦の結果に反対し続けている」と非難した。
>また、ロシア外務省筋はタス通信に対し、岸田文雄外相の訪ロが延期されるという見方が出ていることに「あり得ない」と懐疑的な認識を示した。
>岸田外相は22日、アファナシエフ駐日ロシア大使を外務省に呼んで抗議した。この際のやりとりに関して、同筋は「(岸田外相の訪ロには)双方とも言及していない。合意していないことを延期することはあり得ない」と主張した。



安倍は海外に対してあっちへふらふら、こっちへふらふら。内面(ウチヅラ)と外面(ソトヅラ)を使い分けているように見えるが、その実見透かされているということである。言わば、足元を見られ、舐められているわけだ。
かの、実に“中途半端な”『戦後70年談話』も切っ掛けになっているのは間違いなく、つまりアレは「日本の“いい加減な”姿勢」を明らかにしたもので、海外はそれをモノサシに日本を量るのである。どっちつかずの外交は何の意味も示さない。


そしてこれ。
「北朝鮮高官「拉致の再調査は終了」 民間の訪朝団に訴え」(朝日新聞 8月21日)

>北朝鮮の政府高官が13~18日に平壌を訪れた日本の民間団体に対し、「拉致被害者らの再調査終了と報告書の完成を外交ルートで日本政府に伝えた」と訴えていたことが20日、わかった。訪朝団に参加した「日朝友好京都ネット」の浅野健一理事が明らかにした。

>浅野氏によると、北朝鮮政府高官は日本側が報告書の受け取りを拒んでいると主張。拉致被害者について過去の調査結果を覆す結果は得られなかったと話し、「(生存者がいるとの)日本政府の従来の主張と食い違うので、誰かが責任を問われることになると懸念して受け取らないのではないか」と語ったという。

>菅義偉官房長官は20日の記者会見で事実関係を問われ、「そのような事実はない」と否定。「一日も早い拉致問題の解決に向け、行動対行動、対話と圧力の原則に基づいて全力で取り組んでいる」と述べた。



日本政府は頑なに報告を受け取らないだけで、ならばどうするという、次の手立てを見出せずにいる。

これもひとえに、周辺国を、そして自国民をも欺くような『戦後70年談話』が原因のひとつとなっている。「戦争法案」に邁進する余り、ますます実状と乖離し、実質外交との矛盾が出てくる。必然的に海外と国内、それぞれに言い方を変えて取り繕わなければならなくなる。結果、完全なる外交の失敗! ということになってくるのだ。

対中国、対韓国、対北朝鮮、対ロシアと、この先も政府は4枚舌、5枚舌を使い分けていくつもりなのだろうか。
「戦争法案」はもとより、それがため、既に日本の外交も破綻している。




《関連・参考記事》
「北朝鮮と中国は本当に脅威か 1」
「北朝鮮と中国は本当に脅威か 2」
「もはや「仮想」ではない「敵国」」
「崩れた「中国脅威論」」
 * * *
「うまく言い逃れた『70年談話』」
「か弱く未熟で優しい日本人」


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