ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団『シンデレラ』2012年12月18日(火) 21日(金)

2012年12月23日 | Weblog

Nさんよりシンデレラ3、4日目の寄稿頂きました。


「3日目は客席の殆んどを学校団体が占めていました。
最初は大人しい反応でしたが
第2幕で義姉の山本さんによる大胆華麗な登場姿が
彼らの心を掴み、舞台に引き込んでいました。

写真はホワイエで販売されていた
サンドイッチとオードブルの盛り合わせと赤ワインです。
立派なクリスマスツリーを前に、華やいだ気分になりました。」

とのこと。

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新国立劇場バレエ団『シンデレラ』2012年12月18日(火) 21日(金)

シンデレラ:長田佳世
王子:菅野英男
義理の姉たち:山本隆之 高橋一輝
仙女:湯川麻美子
父親:石井四郎
春の精:五月女 遥
夏の精:井倉真未
秋の精:竹田仁美
冬の精:丸尾孝子
道化:八幡顕光
ナポレオン:吉本泰久
ウェリントン:貝川鐵夫

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新国立劇場バレエ団『シンデレラ』3日目を鑑賞した。
シンデレラは長田佳世さん、
しっかり者で堅実そうな、知性あるヒロインであった。
姉達が大騒ぎをしていても場を上手く取りまとめつつ
自身の立場をわきまえ落ち着きのある大人の女性だった。
踊りは大きく優雅、 特に手が長いため上半身の美しさは絶品であった。

王子は菅野英男さん、 誠実で生真面目な民衆思いであろう王子であった。
王族にも関わらず、民衆のことを考えてばかりの
公務一筋な勤勉だったのであろう。
友人または道化、宮殿関係者が
王子、ときには気分転換も必要でございますと
舞踏会費が国の予算範囲におさまることを約束してどうにか説得、
開催を実現できたと思われる。

お2人のパートナーシップはどこかほっと和むあたたかさがあり、
身分は異なれど、ようやく心から愛する人物に出会えたことは共通、
その喜びが徐々に表れパ・ド・ドゥで花を咲かせていた。

この日も山本さん高橋さん姉妹は大活躍だった。
学校団体という手強い観客で埋め尽くされた会場で
笑いを起こしていたのは見事である。
恐らくは殆んどがバレエ初鑑賞者、
学校の授業だからと来ただけで
気の進まない生徒さんもいたはずだ。
そんな状況下、彼らの心を最も掴んだのが
山本さんによるお義姉様だった。
2幕での登場時、1階から上階までの客席へ目を届かせる
観客へ向けたアピール度がとてつもない迫力で
会場大爆笑、1幕では大人しかった生徒さん達も
声を上げて楽しんでいたのである。
魅せ方の上手さが半端でないダンサーだ。

四季の精では初登場ダンサーもいて新鮮だった。
夏は井倉真未さん、 爽やかで可愛らしく、
舞台をぱっと明るく照らす太陽のようであった。

秋は竹田仁美さん、 踊りが大きくて力強く、
他のダンサーと並ぶと小柄に見えるが
ソロのときは全くそんな印象を受けないオーラがあった。

冬は丸尾孝子さん、
独特のふわりとした不思議な魔力があり
ぐいぐいと引き込まれた。

ところで、この日は学校団体が入っていつもとは違う緊張があったのか、
小事件連発の1日であった。

1つ目はネックレス吹っ飛んだことである。
第1幕、宝石屋や靴屋さんが家を訪れた場面、
山本さんが首でネックレスをぶんぶんと歌舞伎のように回していると
鬘に引っかかり舞台中央まで飛んでいってしまった。
これからダンスレッスンが始まるのにどうなるかと見守っていたら
山本さんも一瞬苦笑、しかしながらその後
父親役の石井四郎さんが拾い、アドリブを効かせながら
家のどうしようもない娘が、とシンデレラと目を合わせて芝居、
そして進行とともに父親近くまで来た山本さんに手渡した。
ここで山本さん、私のネックレスに再会といわんばかりの笑顔で
受け取り、こちらも安堵したのであった。

2つ目は鬘の落下である。  
ネックレスが姉の首下に戻ってほっとしたのも束の間、
妹とダンス教師のレッスンがいつにも増して密着度が高かったのか
顔を上げたところで鬘が落下した。
しかし表情1つ変えずささっと取り付け音楽に遅れることなく再開、
高橋さんの早業に一同驚いたのであった。

3つ目は星の精の転倒である。
仙女がシンデレラに12時の約束を言い渡し、 星の精が登場する場面、
秋の精の踊りで撒かれた落ち葉に1人が滑り転倒した。
しかし何事もなかったかのようにすぐ立ち位置へ移動し
怪我はなかったもよう、安心したのであった。

4つ目はシンデレラの付けまつげが落下寸前であったことである。
パ・ド・ドゥの前から長田さんの目元に違和感があり
よく見れば片方の付けまつげが落下寸前、
菅野さんも気づいていたようで
マズルカのダンサー達が踊っている最中に
手を取り、暫く向かい合ってポーズをとる場面では
外すか否か話し合っていたのだろう。
何か会議を開始していた。
しかしながら、シンデレラと王子の惹かれ合いが
より鮮やかな描写となり、結果として良かったのかもしれない。

このようにハプニングの連続だったが
カーテンコールではアイドルのコンサート並みの声援もあり
生徒さん達は楽しんでいた様子だったのは幸いであった。
1人でもバレエに関心を持ってくれた方がいれば喜ばしい限りである。
21日(金)は4階後方席で鑑賞し、
1階では気づかなかった魅力を発見でき嬉しいひとときであった。

まず照明の繊細さ、
中でも四季の精のヴァリエーションでは約1分ごとに
背景、照明を変えていて技術の高さに脱帽である。

それから群舞の美しさ、
呼吸を合わせて意識を高く持っているからこそ
ぴたりと揃う美しさに見入るばかりであった。
シンデレラが登場したとき、
出会ったシンデレラと王子を祝福するかのように
四季の精、王子の友人、マズルカ、小姓達が
立膝をついた体勢で上半身を左右に揺らしながら
イソギンチャクのように優雅に両腕をひらひらとさせる場面、
上の階からの眺めは夢見心地になる美しさで
いつの間にか一緒に揺れている気分になる。

シンデレラの家にやってくる
靴屋さん、宝石屋さん、仕立て屋さん、帽子屋さん達も
それぞれ良い味を出している。
ただ準備の手伝いをしているだけなく、
姉妹のハチャメチャなダンスレッスンに思わず目を覆ったり、
隅にいたシンデレラが見事なステップを披露すれば
あたたかで優しい視線を送って喜びを分かち合ったりと
一体感が生まれている。
顧客が余りに強烈な姉妹なためか、
異業種同士ではありながらお互いを励ましあい、
妙な連帯感が生まれてくるのも一理ありそうだ。

小野さん福岡さん、米沢さん厚地さん、長田さん菅野さんペア、
それぞれもう1回ずつ登場する。
生の舞台では何が起こるか分からない。
前回とはまた異なる味わいを堪能しに劇場に通いたい。

公演は24日まで、
来年最初は1月6日の新潟公演『シンデレラ』である。
全てテープ演奏である点や
オペラ劇場に比べて広さが足りず、
演出が変わってくることもあるであろう。
しかしながら地方公演だからこそ味わえる面白さもある。
2007年1月のシンデレラ新潟公演での1幕ダンスレッスン場面では、
普段はプロの演奏者によるヴァイオリン演奏だが
このときは本島美和さん、千歳美香子さんが
男装してエアーヴァイオリンを披露した。
見事な弾き姿と宝塚顔負けの麗しさに感激した次第である。
東京とはまた違った魅力のある新潟公演に期待したい。



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2 コメント

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いつにも増して (aruyaranaiyara)
2012-12-23 20:54:29
豊富で、仔細にわたる細やかさ、
本当にNさんのリポート、素晴らしいですね!!
まるで、行って観たような気になります。

今夜、山本さんのアグリシスターズ、観てきました。
大嫌いなA・シスターズ、いつもは観ないようにしているのですが。
Nさんのお話もあって、いやいや観始めたのですが。

素晴らしいキャラクテイル。

こんなに、A.シスターズを長々見つめたのは初めてでした。

本当に、趣が満載で楽しめました。

Nさん、ありがとうございました。
返信する
ありがとうございます (管理人)
2012-12-24 08:26:33
Aruyaranaiyaraさん
いつもお立ち寄り又コメントありがとうございます。
Nさんの寄稿も参考に観劇楽しまれたとの事
何よりです。
今後共に時々お立ち寄り下さい。
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