ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

グルジア国立ーニーナ・ウヴァーロフ 白鳥の湖 -2-

2007年07月20日 | Weblog

 続きです。

白鳥では比較的悲しげで表情を変えないニーナは、黒鳥では目をギラギラ光らせ、挑発的な女性へと変身。ツンっとお高くとまったオディールで、今度は弾力性を活かした踊りを伸び伸びと披露する。バランスの場面で、一瞬時間がかかってしまい、なかなかアンドレイが手を離せないという箇所もあったが、それも直ぐにそのままのアラベスクのバランスで克服。高いリフトには華やかなニーナが輝く。

グラン・フェッテでは、期待したようなかつでのスピードは見られなかったが、日本の気候や移動で疲れていたのかもしれない。何回転したかは判らなかったが、ゆっくりと、しかし最後までペースを変えずに、腕や脚もしっかりと着実に回転。回転時に前進する距離が大きいのが特徴だった。やはり、安心して見ていられるのがニーナだ。

アンドレイは、狭い日本の舞台を工夫しながらスペース配分し、できる限り大きく高く、距離を出さずに飛ぶことに務めていた。踊りや技術よりも、この日はどちらかと言うと表情、とりわけ瞳の表情の美しさが際立っていた。喜びの目、哀愁の目、怒りの目、悲しみにくれる目、などである。遠く宙を見つめるアンドレイの目と指先をついつい追ってみたくなる。彼だけが見える妖精でも空気の中にいるかのように、目が語り、チャイコフスキーの音楽に深く入っているのがわかる。

2幕一場の最後、裏切ってしまったオデットに詫びなければと舞台向かって左奥の裾に勢い良く駆けてゆく非常に熱い演技のアンドレイとは対照的に、残されたグルジアのダンサー達の演技は物足りなく、温度差を感じた。まるで大したことは起こらなかったかのように冷静で、「一応シナリオにあるから王女も気絶しときましょう・・・」と言った感じに見え、ドラマチックな音楽の割にはメリハリのないまま幕が下りた・・・。

湖の幻想的な場面では、ニーナとアンドレイの優美なパドゥドゥが繰り広げられる。

一度、長くポーズを引っぱる場面で、楽器の音が(ヴァイオリン?)途切れてしまったのが残念だった・・・少し興ざめ。

ニーナの白鳥は、誇張こそないが、とにかく人間味を帯びており愛らしい。羽ばたく腕の独特の柔軟性とスピードも、他に類を見ない。白鳥を踊るプリマは大勢いるが、私はニーナの白鳥が好きだなと改めて思った。

 

最後は、悪の力に勝てなかったアンドレイが稽古場で目を覚ますと、他のダンサーが寄ってくる。夢から覚めることになる。アンハッピーでは終わらずに若干明るい余韻を残して幕が降りるが、ここでもう一小節でも良いから、夢を抱きしめるアンドレイを見たかった。あまりにもあっけなく終わってしまう演出が残念!

カーテン・コールでもニーナはずっと他の団員を気にかけ、「皆で前に出ましょう!」と引っ張っているのが微笑ましかった。

皆良い表情をしていたので、2回目の日本での白鳥は成功に終わったのだろう。

朝から快晴だった三重県。出待ちの時間には雨が・・・ 公演後直ぐに主役以外のダンサーは出てきたが、バスが来ていないので皆楽屋口に溜まり始めた。15人ほどの日本人ファンの人数を上回るダンサーの数で出口はごった返した。その中、30分ほどたってからニーナが登場。付き添いの人に手伝ってもらいながら、皆のサインに応じる。黒一色でお洒落に上から下までキメていた。間近で見ても、デコルテや顔の肌年齢はどうみても20代である。驚き!

ファンには丁寧に接してくれた。

アンドレイは、急いで花道を駆け抜けるように行ってしまったので、ファンは誰もサインはもらえなかった。次の移動に急いでいたのであろう。

復帰と言われた公演。地方公演であったことも理由かもしれないが、それほど大きな感動や想い出となることもなく、意外と「すんなり」終わってしまったように私の中では思えた。もう少し「何か」が足りなかったように思えたのは、演出や振り付けの為か、2幕という短さの為か・・・ それとも、若干疲れていた主役2人の為だったのだろうか? 



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