地理総合の研究 付2018年センター地理AB本試・追試解説 

「地理講義」の続き。「地理総合」に「2018年センター試験地理AB本試・追試の問題と解答解説」を追加。

32. 世界人口の減少 地理総合

2019-04-19 10:19:22 | 地理講義

世界の人口 
地球的世界の人口は2016年には76億3,282万人である。出生率は1.89%、死亡率は0.76%、人口増加率は1.13%である。このままの人口増加率が続けば、64年後に2倍になる。
国連推計によれば、このように64年後に2倍になるのは高位予測の場合である。


 
高位予測
現在のままの人口増加が続くとみなすのが高位予測である。しかし、最近の人口増加率の世界的な低下は顕著であり、多分、この高位予測は外れる。
もし、高位予測の通りであれば、地球は満員、都市は爆発し、食料は不足する。世界の多数の者は、餓えと貧困に苦しみ、食べるための犯罪・戦争が激増する。医療は不足し、栄養失調と伝染病が蔓延する。社会福祉制度とは無縁の国家が多数となる。一人一人の寿命は短くなる。地球は悲惨な状態に陥るであろう。
18世紀、貧困層の救済は、貧困層の延命と貧困層の増加を促すだけで、壮大な無駄遣いである、との反救貧の発想が支配的になった。 21世紀に、貧困層を放置しておけば、早めに死んで、人口増加は結果的に抑制されるとの議論も出てくるであろう。
貧困層の救済の是非は18世紀のイギリスで人口増加の抑制との関連で議論された。マルサスは、等比的人口増加は、戦争・伝染病による解決もあると結論づけた。このような議論が、21世紀に、人口爆発の続く発展途上国でくり返されるかもしれない。




中位予測
先進国の人口増加はすでに止まっている。これからは発展途上国の人口減少が本格的に始まる。 地球規模の人口増加は終わり、静止人口の状態になる。最も可能性のある予測が中位予測である。
それでも21世紀中は局地的には人口増加による食料不足の問題、食料に収入のすべてをつぎ込むための貧困が問題になる。
しかし、人口増加が食料不足の原因であるとの考えは、地球的規模では誤りである。世界的には測量生産量が人口増加を上回り、大規模な食料不足は心配ない。
 

1961年の小麦生産量・米生産量・人口を100すると、小麦と米の生産は2016年では3.4倍に増えているが、人口増加は2.4倍である。食料の供給過剰による価格低迷が大きな問題になっている。貿易制限や輸入制限で安価な輸入穀物の増加をおさえ、自国の穀物生産を守ろうとする先進国が多い。
しばしば発展途上国で食料不足が深刻な問題になるのは、世界全体の食料不足が原因ではない。食料不足の起こる地域は戦乱の地域が多く、食料供給網が分断されて輸送ができなかったり、軍部・政権側が援助食料を横取りする事態が多発するためである。先進国からの援助資金が援助される国の汚職により、消滅することも、食料不足の原因になる。
食料不足がグローバルな問題にならないのは、食料不足は発展途上国内の地域的危険的な限定問題だからである。
中位予測の人口減少による食料問題などは、国際的食料援助と内戦の国際監視により、一応は解決できる。 中位予測では、食料不足や貧困の問題が、世界中に広がることはない。
 


低位予測
最近、人口増加の低位予測が最も確からしい、と言われるようになった。先進国同様、発展地上国も少産少死の傾向が強まっている。中国のような強制的な一人っ子政策を採用しなくても、発展途上国では所得の向上とともに出生率と人口増加率が急低下している。
発展途上国で、子どもに高い教育を受けさせなくては、ろくな仕事に就くことができないことが、共通の認識になる。多数の子どもを低賃金の職場で働かせるのではなく、一人二人の子どもに高賃金の一流企業で働かせる。そのためには、子どもは一人二人にとどめ、子どもにカネをかけて高い教育を受けさせることになる。子だくさんで子どもを労働力として使う時代は終わっているのである。子どもは少ない方が多い。子どもが多いと家族総倒れになる。 養育費用の高さのために世界の人口が減少すると、誰もが高等教育を受ける世界になる。それが具体的にどのような世界かは計り知れない。高等教育から落ちこぼれた者が、社会でどのように扱われるのかは、予想は難しい。
発展途上国では65歳以上が7%の高齢化社会から、14%への高齢社会への移行が急速に進んでいる。近い将来、高齢社会の問題として、社会保障の問題や社会の活性が失われることが、大きな尾問題になる。

 


日本の人口減少
2008年に日本の人口は1億2,810万人で、最も多かった。以後、減少を続け、2018年には1億2,521万人であった。10年間で300万人減少した。人口は減少傾向から増加傾向に転じるまでは100年かかるといわれる。21世紀中、日本人口は減少を続け、8,000万人程度まで減る。 日本の人口 高齢化

人口が減少すると、
①労働力が減少する。日本の18歳人口は1986年には185万人いたが、2028年には106万人に減少した。大学生が増加したための労働力の減少もあり、日本の労働力が減少した。アルバイトと外国人労働力への依存が強まる。また、若年層の減少のために社会の活性が失われ、消費・流行への関心が薄れてしまう。
②デフレが続く。高齢化社会では高額な物品を買わない。また住宅・マンションなども、人口減のために供給が減る。社会に出回る通貨量が減り、物価は上がらない。景気も停滞する。
③不動産価格が低下する。人口の減少する社会では不動産の価値が下がる。資産として保有する不動産価格が下落をする。住宅ローン残高よりも不動産価値が低い。資産が安定した生活を補償しない時代になる。
④社会保障が崩壊する。2人の若者が、1人の老人を扶養する時代になる。また、2018年の社会保障費用は33兆円であったが、年に1兆円ずつ増えている。財政は社会保障が中心になる。
⑤町の活性化が失われ、暗い町になる。町内を彩っていた商店街は消え、小さなコンビニエンスストアが点々と残るだけの商店街になる。大型スーパーやデパートは集約化され、はるか遠方の都市にだけ残る。住宅団地にも、旧繁華街にも、老人介護施設だけが目立つ。
⑥大学は定員割れであり、低レベルの大学に、日本語のできない留学生が殺到する。大学による格差が広がる。大学を出ても、労働力不足の社会で、単純低賃金の職場に行くことになる。
⑦高齢化により、公共交通機関の乗客が減って赤字となり、運行休廃止が相次ぐ。都市でも農村でも、自家用車を利用できない交通弱者の足がなくなってしまう。病院や大型スーパーが閑散となる。
⑧老人介護が大きな問題となる。介護専門の巨大企業ができる一方で、介護事業が赤字になるような地域においては介護の担い手が不足する。子どもあるいは家族の介護負担が大きくなって、失業や離婚の原因となる。


人口減少の打開策
子どもの数を増やすためには、子どもが産まれたら社会保障費用の先取りの形で、100万円~1,000万円を支給するのが、最も確実であるといわれている。


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