地理総合の研究 付2018年センター地理AB本試・追試解説 

「地理講義」の続き。「地理総合」に「2018年センター試験地理AB本試・追試の問題と解答解説」を追加。

31. 鉄鋼業 地理総合

2019-04-05 11:14:20 | 地理講義

鉄鋼の原料 
鉄鋼の原料は石炭と鉄鉱石である。日本の石炭は採炭コストが高く、輸入炭に依存している。石炭は火力発電と鉄鋼業で大部分が消費される。2017年の石炭輸入量は1億9,284万トンであり、オーストラリアから61.8%、インドネシアから16.6%、ロシアから9.4%が輸入される。
鉄鉱石は2017年に1億2,653万トンが輸入された。オーストラリアから57.7%、ブラジルから27.0%、カナダから5.1%である。

製鉄所の立地
*新日鐵住金は日本製鉄に改称(2018年)

 鉄鋼業は巨大な装置産業であり、巨額の投資を必要とする。企業側が工場を建設、都道府県が道路・港湾を建設した。市町村が工場用地を取得したり、上下水層を整備しなくてはならなかった。1963年以降、国が企業・自治体に巨額融資・投資を行わせるために、新産業都市と工業整備特別地域が指定された。新産業都市と工業整備特別地域の巨大製鉄所は、大きな国民負担によって可能になった。

大分
1961年から富士製鉄、現在の日本製鉄によって建設工事が始まった。大分製鉄所の建設のために政府はのちに新産業都市として巨額の融資・投資を得る計画であった。大分の新産業都市の指定には、多くの政治家が興味を示し、全国各地に新産業都市、追加の工業整備特別地域が指定されることになった。
700haの工場用地は海岸の埋立、大分空港の国東移転によって得られた。日本製鉄大分工場は中国・東南アジアに近く、鉄鋼の重要な輸出基地になっている。従業員は2,000人。

鹿嶋(鹿島)
茨城県鹿島灘に面する砂丘地帯に、住友金属、現在の日本製鉄が、4,000haの巨大製鉄所を建設した。工業整備特別地域として国の財政援助、茨城県・鹿嶋市からは用地の提供があった。茨城県知事は、住金の工場建設を機会に人口30万の都市を建設する計画であった。現在まで6万人を越えなかったが、当初は農業と工業の両立の計画であり、農工両全といわれた。
鹿島砂丘に掘込み港が建設され、原料の鉄鉱石・石炭が大量に輸入されている。製品の高品質鉄鋼は中国・アメリカなどに輸出されている。

室蘭
新産業都市道央は実質的に、商業中心の札幌~小樽と、工業中心の苫小牧~室蘭の2地域から成る。室蘭は1950年から富士製鉄が埋立地に工場を拡大、433haの工場用地に、1963年の全盛期には14,000人の従業員が働いて、北海道に多くの鋼材を提供していた。鉄鋼生産額は1974年には20,177億円を越えた。現在は従業員1,000人、生産額は1,500億円である。自動車用の鋼材が台分を占める。

中国の鉄鋼生産
国営製鉄所が上海などの大都市にあり、生産量が多いが、国内外の需要を越えた生産量である。品質にも問題がある。それでも国営事業として大量の鉄鋼が生産されている。

 

中国の鉄鋼生産量の増加が著しい。国営製鉄所の低賃金労働者と国内の安価な石炭によるコストダウンができる。また鉄鉱石は日本同様、オーストラリアから輸入する。
中国の鉄鋼の品質が、現時点では自動車・建築用の高品位のものではないため、日本の高品位鉄鋼とは競合しない。
しかし、中国の生産技術の向上はめざましく、近い将来、高品位の鉄鋼生産が増加するであろう。日本の輸出産業としての鉄鋼産業は、さらなる技術開発で付加価値を高めるのか、生産縮小の岐路に立たされている。これまでも老朽工場の休止と、新鋭工場への生産集中を図ってきたが、当分はこのscrap & buid方式がつづけられるであろう。

 


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