地理総合の研究 付2018年センター地理AB本試・追試解説 

「地理講義」の続き。「地理総合」に「2018年センター試験地理AB本試・追試の問題と解答解説」を追加。

21. カナダの小麦栽培 地理総合

2019-02-02 18:06:33 | 地理講義

世界の小麦生産国

 小麦生産量の多い国(地域)は、EU、中国、インド、アメリカ、ロシア、カナダ、オーストラリアなどである。
輸出の多い国(地域)は、EU、アメリカ、ロシア、カナダ、オーストラリア、ウクライナなどである。
日本は年間570万トンを輸入する。アメリカから51.8%、カナダから31.1%、オーストラリアから16.1%である。タンパク質の含有量が10%に満たない小麦は麺用・菓子用であり、パン用としては不適当である。日本の小麦自給率は14%だが、国産小麦のほとんどは麺用・菓子用である。また、オーストラリアからの小麦も、ほとんどが麺用・菓子用である。パンの原料となる小麦は、カナダ産・アメリカ産である。

 日本の米の年間消費量が600万トン、小麦が550万トンである。小麦の自給率は14%に過ぎないから、輸入小麦への依存は大きい。

日本の小麦
日本の小麦生産量は毎年の変動が大きく、年550万~600万トンである。日本の小麦の大半は冬小麦である。秋に播種、冬を越して、翌年の梅雨の前後が収穫時期である。台地・山地での小規模零細栽培が中心であり、生産コストは高い。水田の転作作物としても栽培されるが田植えの時期と重なり、無理な栽培をしている。、あた、軟質小麦であり、パンには適しない。
国産小麦の生産コストは1トン14万円、その販売価格は1トン5万7千円である。その赤字総額は1,300億円である。その赤字分を、日本政府が様々な形の補助金で補う。
日本政府は小麦を1トン2万円で輸入して、製粉業者などに5万5千円で売り渡す。その差額合計1,300億円が小麦農家への補助金となっている。

カナダの小麦
カナダ南部の平原3州マニトバ州・アルバータ州・サスカチュワン州は、肥沃なプレーリー土が分布し、春小麦の栽培適地である。春小麦は、冬小麦の突然変異種であり、春に播種、夏に成育し、4か月後の秋には収穫できる。カナダの春小麦はタンパク質13%以上の硬質小麦であり、その強力粉はパンに適している。
カナダの人口は3,700万人、小麦生産量は3,000万トン、輸出は2,000万トンである。日本には90万トンが輸出される。特に1CW(No.1 Canada Western)が日本に輸出される。1CWはパンに最も適した最高級の品種である。
小麦の価格が安いため、1農家の耕地面積は200~1,000haもあるが、農家の経営状態は良くない。50年前には60万戸もあった小麦農家が20万に減少、高齢化も進んだ。19世紀にスタートした小麦農家協同組合は小麦の集荷流通を独占していた。しかし、小麦の不作年があったり、小麦の国際価格が下落したりしたため、農協は赤字で運営が難しくなり、穀物メジャーの力が強くなった。脱落した小麦農家は、生産コストの低い遺伝子組み換え小麦を栽培しているが、販路が狭く、価格も安い。結局、経営の行きづまった小麦農家は農地を手放したり、肉牛飼育に転換したり、農業そのものをやめたりしている。

 

 世界的には人口増加と食料不足は深刻な問題である。しかし、現時点では小麦の供給量は十分である。むしろ小麦は生産過剰であり、価格の低下による生産農家の減少が、カナダ・アメリカで大きな問題になっている。
小規模農家の脱落によって大規模経営農家が増加しているが、大規模経営農家でも高齢化による労働力不足が問題になっている。機械化を進める資金が不足し、穀物メジャーの資金に依存せざるを得ない状況である。協同組合は潰れ、自立した小規模小麦農家は減り、商業資本支配下の大規模小麦農家が増えている。小麦の生産過剰、在庫増加、小麦価格の低迷の続く限り、この傾向は続く。

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。