箕面の森の小さなできごと&四季の風景 *みのおハイキングガイド 

明治の森・箕面国定公園の散策日誌から
みのおの山々を歩き始めて三千余回、季節の小さな風景を綴ってます 頑爺<肇&K>

おじいさんとおばあさんの野菜販売所

2020-08-26 | *編集・秋/9月

おじいさんとおばあさんの野菜販売所

 初秋のお昼前です・・・

私はこの日、鉢伏山から梅ケ谷を通り明ケ田尾山に登って
高山の里に下りてきたところだった。
そして府道茨木能勢腺を清水谷へ向かって歩いていました。
すると間もなく道の空き地で近くの農家の人であろうか?・・・
野菜が無造作に並べられた所を通りかかった。 
 
”こんにちわ・・・”  おじいさんとおばあさんが仲良く並んで
座っている・・・
みかん箱の上にちょこんと座ってしわくちゃの笑顔で応えてくれた。
なんだか嬉しくなって立ち寄ってみた。
 
戸板の上に新聞紙を広げ,野菜をただ並べているだけだが・・・
土のついたまま・・・
虫のついた穴のあいた葉っぱのままに・・値段も 100円と書いた
紙切れが一枚置いてあるだけ・・・
一見、素人の手作りの 粗末なしぐさだけど、なんともいえない
この素朴で温かい雰囲気はなんだろう・・・ と、
心惹かれるものがあった。
にんじん,白菜,大根,小松菜,キャベツ、トマト、ねぎ、きゅうり、
エンドウ、ホーレンソウ、それにシイタケや夏みかんだろうか? 
かんきつ類も少し置いてあった。
今朝自分の畑から採ってきたものばかりとのこと・・・
これをお二人で作っているのであろうか?
 
よく見るとスーパーで並んでいるものと違い、みんな不揃いで
大小さまざま、それにみんな土がついて,葉っぱも付いたままで
洗ってもいない様子。
いずれも畑から採ってそのまま持ってきて並べただけ・・・ 
と言った感じだ。
しかし不思議とみんな嬉しそうな生き生きとした顔をしている。 
”おいしいから・・たべてみてください・・” と おばあさん。 
その横でニコニコと頷いているおじいさん・・・ 
 
すると一台のワゴン車が停まって中から 二人のお子さんを
連れた若夫婦が・・・ 
   ”へ~え!” と言いながら降りてこられた。
とたんに子供が大きな声で叫んでいる・・
   ” おかあさん! このだいこん つちがついてるよ!   
 このキャベツあながいっぱいあいてるよ!  これトマト? 
 おかしなかっこしてるよ!   きゅうりもまがっているし・・・ ” 
おじいさんはそれを聞いてもニコニコしている。
子供はスーパーできれいに並んでいる野菜しか知らないのだ、
大根やにんじん、ごぼうが土の中で育っている事を知らない
子供が多くいることを、何かで聞いた事がある。  
毎日食べているお米が 機械で作るもんだと思っている子供も
いると言うから、この子の叫び声も都会の子には当然なのかも
しれない。
 
もっとも大人でもそうだが、はじめて見聞きすることには戸惑う
ものである。 
いつだったか北海道の民宿で、朝食に出た納豆を開けた
若者二人が・・・
  ” おばさん! この納豆・・ 糸引いて腐っているじゃないか? 
    こんなもの出して・・・”  と怒っていたとか・・・ 
おばさん大声で怒られたもんだから、何事か・・・!  と 
一瞬頭が真っ白になって気が動転してしまった・・・ と、
新聞のコラムに書いてあって, その後の若者二人の姿を
聞いてみたいと 笑ったものだが・・・ 
 
だから、このような自然の作物を自然な形で子供達に見せて
上げられるのは、貴重なことなのかもしれないな・・・ と。 
若いお父さんとお母さんは子供達の叫びを聞いてなにやら
説明をしていたが、やがていくつかの野菜を新聞紙に包んで
もらっていた。 
おばあさんもおじいさんも野菜たちを包みながら・・・
いかにもいとおしそうに・・・
丹精こめて作った野菜たちに・・・ よかったな~ と、言っている
ようで・・・
私にはその別れをおしみつつ・・・ おいしく食べていただく喜び
とが混じった笑顔で品物を渡しているように思えた。 
この若いおかあさんが作るであろう今晩の夕食に、子供達と
どんな会話が交わされるのだろうか・・・ と、何ともほほえましい
光景を思い浮かべた。
子供達がワゴン車に乗り、後ろ窓からバイバイと手を振って
いる・・・  
おじいさんとおばあさんも手を振って見送っている・・・ 
いい光景だな!
 
そんなに車の通る道じゃないので、これを全部売るまでには
まだ時間がかかるかもしれない。
でも、二人はまたみかん箱の上にチョコンと座って、ニコニコして
いる。
素朴で 自然で とつとつとした老夫婦だが、二人の人生にとって
それが 幸せないい間柄だった事を感じさせるものであった。
私はお二人がいつまでもお元気で過ごせるように願いつつ、
会釈をしてそこを後にした。
 
道の先で振り返るとおじいさんが手を振ってくれた。 
しかも葉のついた大根を高くかざして・・・
私は大根に見送られて・・・
それがおかしくて、懐かしくて、温かくて・・・  嬉しかった!
 06-9  (完) 
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