忘れな草の花籠

確かハンドメイドブログだったはず・・・

人はかつて樹だった

2024-05-17 14:55:21 | BOOK
今日はいい天気になりましたね。
このお天気も今週までで
来週からは梅雨の走りになりそうとのことです。

さて先日長田弘さんの詩集を紹介したかと思うのですが
その記事を書いた当日の夜に待っていた本が届きました。

     

「人はかつて樹だった」という詩集です。
こちらはフェリシモの復刊リクエストにて無事に復刊となった本です。

長田さんの詩には欅がよく登場するのですがその欅は長田さんの家の近くにある、
一本の大きな欅の木だそうです。
毎日その木の下を通っているとのこと。

この欅がこの詩集の元になったかと思われます。

*ずっと以前から保護樹木として、
一本だけのこされている欅の木。
しかし、孤立しているように見えても、樹は、
あくまでも共に生きている存在だ。*(あとがき)

季節と、気候と、風景と、街と、時と共にこの欅の木によって
「共に在る」という感覚を覚えたそうです。

*ひとの日常の中心には、いまここに在ることの原初の記憶がひそんでいる。
たたずまう樹が思い出させるのは、その原初の記憶なので。
人はかつて樹だった。*

ひとも樹もいのちあるもの。
共に在る、共に自然を生きる存在。
けれども今日の人は「根のない木か、伐られた木か、
さもなければ流木のような存在でしかなくなっているのではないだろうか」、と提起しています。

この詩集は「思わぬがんの告知をうけた家人に付き添って、
傍らに、樹のように、ただここに在るほかない、
この冬からの日のかさなりのなかで編まれた。」と書かれてあります。
おそらく病に伏せる奥さまのそばで何もできない、
ただ在るほかない自分の姿を樹に重ねたのでしょう。

     

装丁も素敵でこちらのカバーは
ドイツの画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの
「孤独な木(朝陽のあたる村)」という絵だそうです。

絵は「孤独な木」となっていますが
孤独というよりは孤高といったほうがふさわしいかもしれませんね。

この詩集の樹で思い出したのが境内の欅。

     

とても存在感のある樹です。
ちなみに

     

きれいに撮ったつもりがなんか下の方しか写ってない画僧が撮れてた・・・。
・・・違う、そうじゃない・・・と思った一枚でした。

さてさて内容のほうですが
少しずつ丁寧に読んでいきたい詩がたくさんでした。

まずは「世界の最初の一日」という詩から。
世界の最初が描かれてる詩です。
水、空、日の光、風。
そして樹。
景色が浮かんでくるようです。
「人ひとりいない風景は、
息をのむようにうつくしい。」

自然への憧憬がつづられた「遠くからの声」、好きな詩です。
「昏てゆく霧の林は、
見えないものの宿る場所だ。
土のたましいを宿す土。
草のたましいを宿す草。
木々のたましいを宿す木々。
じぶんのたましいを探すんだ。
遠くから誰かの呼ばわる声がした。」
自分が自分である、
たましいの声に耳をかたむけたいものです。

時間が経つと変化していくものたち。
そしてその変化を通して学ぶこともたくさんあります。
「樹の伝記」にはそういったものも描かれています。
「老いるとは受け容れることである。
あたたかなものはあたたかいと言え。
空は青いと言え。」

そしてとても共感したのが「草が語ったこと」という詩です。
「ひとが一日と呼んでいるのは、
ただそれきりの時間である。
ただそれきりの一日を、
いつから、ひとは、慌ただしく
過ごすしかできなくなったのか?
タンポポが囁いた。ひとは、
何もしないでいることができない。
キンポウゲは嘆いた。ひとは、
何も壊さずにいることができない。
草は嘘をつかない。うつくしいとは、
ひとだけがそこにいない風景のことだ。
タビラコが呟いた。ひとは未だ、
この世界を讃える方法を知らない。」

ほかにもたくさん心に留まる詩があります。
書ききれません・・・。
「春のはじまる日」、沁みますね。
「いつの年も、春のはじまる日だ、
傍らに、幻の人がいると感じるのは。
わたしは一人なのではないと感じるのは。」

「地球という星の上で」はたくさんのものが羅列されてあります。
これらはおそらく幸福を与えてくれるもの。
幸福を気づかせてくれるもの。
それは何気ない暮らしの中にあるもの。
「住まうとは幸福な一日を追求することだと
<わたし>は思う。<あなた>は?」

「見晴らしのいい場所」は闘病中の八百屋のおじさんの詩。
「暮らしに必要なものは全部、土からもらった。」
「あとは、土にもらったものを、
土に、返すだけ。
天国はいちばん高い場所にあるんじゃない。」
地に足をつけて生きることのたいせつさ、感じました。

そしてラストは「私たちは一人ではない」です。
祭りの詩です。
祭りは魂とふれあう日。
「祭りの日、私は一人だが、一人ではない。」

一見孤独に見えても決して孤独ではない欅。
多くのものと共にある欅。
そんな欅の樹。
「人はかつて樹だった」んですよね。

とあいかわらず感想が長くなってしまいましたが。
すばらしい本なので折に触れて読んでいきたい一冊です。

では本日も一日がんばりましょう!
よい一日を♪
私は明日あさって超過酷な仕事と向き合ってきます。
がんばれ、自分!
足腰、もつかな~・・・。

コメント
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