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「老いる」こと~『羊は安らかに草を食み』

2021-02-11 | 2022夏まで ~本~
最近、「老い」のことばかり考えている気がします。

夫が昨年、定年を迎え、わたし自身も立派なアラカン、
隣では、92歳の義両親が敷地内別居で暮らし
毎週、80歳の実母と一緒に実家の片付けをしている・・・

こうなると、嫌でも、考えさせられてしまうのです。
未知の領域ゆえ不安ばかり、明るく楽しくとはいきませんよね・・・
(ご高齢の皆様、お許し下さいませ)

ところが、宇佐美まこと『羊は安らかに草を食み』(祥伝社)は違いました!



痛快!!

あらすじは・・・
86歳の益恵、80歳のアイ、77歳の富士子は、俳句をきっかけに出会った、
20年越しの友人同士。

ある日、老老介護を続けてきた、益恵の夫から、
妻の人生をたどる旅の提案を受ける。
最近、認知症の出た妻のために・・・との申し出だ。

三人は、大津、松山、佐世保へと旅に出る・・・という
ロードノベルでもあります。


(この梅の花、しべが長くて可愛い!)


アイを語り手に進む旅の物語の合間に、
益恵の悲惨な満州からの引き上げ体験が挿入され・・・
また、松山出身の作者らしく、俳句が深みを加えています。

やがて、益恵の壮絶な半生が次第に明らかになると同時に、
アイも、老いた自分と向き合い始め・・・
長年の親友だった、富士子の秘密も知ることになるのです。

・・・正直言って、物語の流れは、伏線がはりめぐらされているため、
ほぼ予想通りでした。
ところが、最後の最後は、まさかの結末!

良い意味で裏切られました。



とにかく、おばあちゃんに快哉を叫びたくなります。
おばあちゃんのやらかしたことを、現実的に見るならば、
痛快などと言ってはいけないのでしょうが・・・

「ふん。死にかけた婆さんを甘くみるんじゃないわよ」(353頁)
と、言い放つアイが、かっこよすぎます!

老人は「弱って助けを求めるだけの存在」ではないうえ、
「後は死ぬしかない老人は自由」(329頁)と言い切るのです・・・

ここ最近、考えれば考えるほど、
「老い」のマイナス点ばかりに目が行っておりましたが・・・

この小説で思い出しました。
神沢利子『おばあさんになるなんて』、村田喜代子『飛族』・・・
年を重ね、しなやかに生きる先輩方を、たくさん知っていたんです・・・

なんだか、すごく元気が出てきましたw

一方で、まさに老人である、身近の三人(実母、義両親)についても
こちらの都合で決めつけて考えてはいけない、と
あらためて戒めてもいます。




本小説が、わたしにとって、初・宇佐美作品です。

作者の宇佐美まこと氏は、1957年生まれ・・・
年齢的にも、ご高齢の両親など近しい方々を看取り
また、老いることを自覚してもおいでなのかもしれません。

実は、宇佐美氏を男性だと思い込んでいて、
こんなに、女性の気持ちが細やかに描けるって、すごいなぁと
ずっと感心しながら読んでいました。

途中で、宇佐美氏についてググって、女性だと気づいたんですけどねw


ともあれ・・・

わたしも、「後は死ぬしかない老人」ゆえの「自由」を
絶対に手に入れてやりましょう!
アラカン以後の生き様が問われます!

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