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凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』

2020-11-24 | 2022夏まで ~本~
なに、これっ、バイオレンス小説!?
・・・
しばらく読んだら、気分が悪くなってしまいました。

凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』(中央公論新社)。

『流浪の月』(講談社)で本屋大賞を受賞し、
アタクシも、今年大注目の作家さん。
受賞後、第一作ということで、楽しみにして読み始めたのに・・・

・・・そもそも、「一ヶ月後、小惑星が地球に衝突する」という
設定からして、なんだかなぁ~と不安だったんだよね、
こりゃ、読まない方が良かったかも・・・
 
・・・などと思いつつ読み進めたら、
途中で止められなくなりました。

圧倒的な筆力。
希望の灯火に照らされて歩むような・・・

やっぱり、すごい!
読んで良かった、凪良ゆう・最新作でした。




「江那友樹、17歳。クラスメイトを殺した」

・・・というように、どの章も、衝撃的な一文から始められます。
第一章は、友樹が、高校の同級生にいじめられる、
過酷な日々から始まります。

ところが「小惑星が地球に衝突するため、世界は終わる」・・・
「ノストラダムスの大予言」のごとき情報は紛れもない事実で
・・・世界はひっくりかえるのです。

世の中が大混乱に陥る中、
友樹は、小学生の頃から好きだった、雪絵と
故郷・広島から東京へと向かいます。

そこで目にする光景は・・・
ここがバイオレンス小説かと感じた部分。
(以後も続きますが)

普段バイオレンス系どころか、ミステリーすらを読まないので、
そのジャンルを読み慣れている方から見たら、
さほどではないのでしょうが・・・

描写だけでなく、危機が迫ったとき、
破壊的になる人、粛々と任務に励む人・・・など
どこか、今の時代に重なって見えるからで・・・

いつもながら、オマエはどうなんだ?と問われているようで・・・

余談ながら、恐竜が絶滅したほどの衝突が起きるなら、
そのときが近付くにつれ、異常気象だって起きるんじゃないかなぁと・・・
そのあたりは全くなくて、ひたすら人間が引き起こす日々が描かれ・・・

それだけで十分、恐ろしいのです。
この上、天災まで起きたとしたら収拾が付かなくなりますわなぁ・・・

(書影はありませんが、BLの『愛しのニコール』<ショコラ文庫>
↑『真夜中クロニクル』<プラチナ文庫>も、
いじめシーンはあるのですが・・・)


ネタバレになるので詳しくは申しませんが・・・

語り手は章ごとに変わりつつも、
物語は進み、「そのとき」に確実に近付いていきます。

アタクシも、第三章くらいからは、落ち着いて読めましたw
慣れたのではなく、各章を読み終えるうちに、
恐怖の中にありながらも、光に触れられたからです。
まさに「滅びの前のシャングリラ(=桃源郷)」

それは、全方位からの光ではなく、
この角度なら光だよね・・・といった感じでしょうか。
見方を変えたら、それは光ではなく陰、絶望となることだってあります。

誰かにとっての善悪を越えて、幸せや好きという気持ちが存在すること、
そして、その気持ちを大事にすることが、
どんな状況であれ、自分にとっての生きることであると・・・

そんな想いが貫かれているのです。

ここが凪良ゆう作品らしいなぁと・・・
アタクシが彼女の小説に惹かれる所以です。

でも、もう一度読みたいかと問われれば・・・
現時点では・・・ダメかも。

今、小説の中でまで、殺人やレイプなどの凶悪犯罪を読みたくありません。
世の中が、十分に恐ろしいのに・・・
日々の不安だけで精一杯の、アラカンのココロには、辛いです・・





凪良ゆうさんの本は、『流浪の月』『わたしの美しい庭』に続き・・・

長くお書きになっていたという、BL小説も、2冊読みました。
BLは、途中、どんなに切なくとも、結末は明るいはずと予想でき
むしろ安心してめました。

・・・と書いていて、非BL系の初・単行本となった
『神さまのビオトープ』(講談社)を読んでいないことに、
今更ながら気づき・・・まずは、図書館です!

現時点での『滅びの前のシャングリラ』との相性は、
今ひとつながら・・・

凪良ゆうさんは、気になる作家さんであり、
これからも読んでいきたいという気持ちは変わりません!


◆書影は版元ドットコムより使わせていただきました。

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