研究留学ブログ~ボストン~

留学までの準備段階、ボストン留学の記録など

ディープインパクトとイプラトロピウム

2006-10-20 09:45:01 | その他
今日のニュースで一番驚いたのが、ディープインパクトが凱旋門賞前に気管支拡張剤であるイプラトロピウムを投与されていたことが、レース後の尿検査検体から明らかになったことです。A検体、B検体ともに陽性ということで、この薬物が投与された事実は否定できないでしょう。

うやむやな決着になる可能性も否定できないですけど、いくつか感じたことを。

まず、大前提になるのは出走馬は開催国の規定に従って競走を行うというものです。何も薬物に限ったことではないですけど、アメリカ、欧米、日本で規定が異なるのは常識。アメリカではスパイク鉄(蹄鉄の一種)が使用されているそうですが、日本では禁止されていますし、アメリカで使用可能なブタゾリジンやラシックスも日本の競馬では禁止されています。ジャパンCに出走する馬は日本の競馬規定に沿って出走しているわけです。フランス競馬の規定では「自然界に無いものはダメ」と、一切の薬物を禁止している反面、日本では禁止薬物のリストには入っていないとのことです。失格という最悪の事態になっても、フランス競馬統括団体ギャロを非難することはできません。彼らの規定に従うと明らかな違反になるわけですから。

そうなると陣営(馬主、調教師)の認識が甘かったということでしょうか。日本で禁止されていない薬物だからという理由で、処方を受けたとは考えにくいです。日本国中から注目されているわけですし、欧州のメディアも注目していたわけですから、体調管理だけでなく食餌として与えるものにも細心の注意を払って凱旋門賞に臨んだと思います。しかしフランス人獣医師の証言によると、禁止薬物であることを説明して処方したとあります。ではJRAが「今日のディープインパクト」で「万全の体調」を通していたのは嘘だったのでしょうか?ここが第一の疑問です。池江調教師も驚いているということを考えると、処方されたことすら知らなかったのではないかとも考えられます。

日本から獣医師が帯同したそうですけど、免許の関係で治療・処方はフランス人獣医師しかできなかったとのこと。とすると、そこで意思の疎通に問題があったのでしょうか?フランス人獣医師が「これは禁止薬物だが本当に投与するのか?」と確認したところ、日本の獣医師が「日本では禁止されていないから問題ないだろう」と判断して、関係者の承諾を得ないで投与を認めたのでしょうか?

疑問の種は尽きないもので、日本国内では家畜用のイプラトロピウムが存在しないそうです。家畜の場合は主にエフェドリンが使用されているようです。じゃあフランスに家畜用のイプラトロピウムがあるのでしょうか?それともヒト用のイプラトロピウムが処方されたのでしょうか?動物間で薬物代謝酵素の働きが異なるのは常識です。薬物が体内で代謝される速度も、ヒトと他の動物では大きく異なるわけで、ヒト用のイプラトロピウムをウマに投与するとヒトの場合よりも代謝速度が遅いかもしれません。レースまで間隔があるから大丈夫だという甘い認識だったのでしょうか?

薬物投与を陣営が承諾するような体調不備がディープにあったとしたら、JRAのディープ特集が嘘ばかりの「汚点」であり、陣営が投与された事実すら認知していないのであれば、誰がどこで投与したのかが問題でしょう。

それにしてもまたマスコミは叩き放題のようですね。

煽るほどに持ち上げる(楽観的報道)
  ↓
結果は敗退(事実)
  ↓
戦犯探しと批判的報道

この報道パターンから早く抜け出せないのでしょうか。WBCの場合は優勝したから問題無かったものの、あれで負けていたら城島や松井が悪者にされたり、スモールベースボールにこだわったメンバーを選んだ王監督が批判されていたのでしょうか。今回のディープ問題で、ある有名司会者が「日本の恥」とのたまわったそうで。お前は本当にディープインパクトを応援していたのかと問いたい。問い詰めたい。小一時間問い詰めたい(笑)

今回の件ではイプラトロピウムが競走能力に影響を及ぼすかどうかについては触れていません。影響がある=ダメ、影響がない=OKという図式ではないと思うからです。薬剤師らしい解説を期待されていた方はすいませんm(_ _)m

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
人気・話題というフレーズ (通りすがり人)
2006-10-22 14:32:40
こんにちは。

何気なしにインターネットをしていたらこの記事を見つけ、書き込みをしたくなりましたので書かせていただきます。



この国の報道(特にテレビ・新聞)は「人気・話題」というフレーズあるだけで一人歩きします。最近で言えばホリエモンも亀田弘毅のときもそうでした。

「人気・話題」というだけで対象者(物)のエリアいなかった人たちまでが群がって持ち上げる。悪者のレッテルが貼られそうになると蜘蛛の子が散る以上の速さで逃げ、批判・攻撃をする。

そういう行動をとる人たちのなかにも「人気・話題」というフレーズが付いている人たちがいて、自分がその対象者(物)になっていることに恐らく気が付いていないのでしょうね。



> ある有名司会者が「日本の恥」とのたまわったそうで。

というのは誰ですか?ほぼ毎日朝と昼にテレビで顔が見れる人ですか?
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Re: 人気・話題というフレーズ (筆者)
2006-10-23 08:04:51
通りすがり人様、書き込みありがとうございます。



こちらでは凱旋門賞すら話題になっていないので、ディープインパクトの問題に関しても情報はネット、日本にいる友人からのものに限られてしまい、どうしても伝聞調で書かざるを得ません。



「人気・話題」というフレーズに流される人たちの話、確かにその通りだと思います。もうひとつ問題なのは「人気・話題」に最初から批判・攻撃的に構える人たちが、世間の流れがそうなった時に鬼の首を取ったかのように大喜びすることだと思います。物事に対して好意的・批判的な立場を取るのは人それぞれですので、他人がとやかくいう問題ではないですが、物事の好意的な面、批判的な面の両面を考えず、片面だけしか考えてないのが原因かと思います。



私個人は様々なことに対して、中立から少し針が振れている立場を取ることにしています。コウモリ的という批判もあるかもしれませんが、こうすることで他人と議論する余地が生まれると思っているからです。最初から極端な立場を取っていれば反対の立場を取る人との議論は成立せず、自分の考えをそれ以上深めることができないと思います。



>> ある有名司会者が「日本の恥」とのたまわったそうで。

>というのは誰ですか?ほぼ毎日朝と昼にテレビで顔が見れる人ですか?



掲示板の書き込みからの情報ですが、想像されている方です。オーナー(金子さん)に対して「日本の恥」と言ったようです。まだ責任が明らかになっていない段階でこのような発言は残念でした。



長々とすいません・・。
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回答ありがとうございます (通りすがり人)
2006-10-23 14:57:09
こんにちは。回答ありがとうございます。



そう考えるとその批判の根拠が崩れた・全く逆の結果が出たときに訂正・謝罪をしないということも習慣化してますね。

批判した人が「人気・話題」の人なので『ありました?そんなこと。』みたいにして通りすぎますよね。



このディープの件に関してはすべてが明らかになってないから、ぼくはまだ意見が見出だせません。今意見が言える人は凄いですよ、ある意味。
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