走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

公私混同

2017年10月14日 | 仕事
師匠と慕う緩和医師と働いていた時、訪問診療の後に師匠は患者さんに自分の財布にあったお金を渡した($200 ぐらいだったかな?) 事があった。患者さんは癌の末期で、その上貧困の為に食事すら買えない状況だったからだ。

家を出た後、そんな事したらたかられますよ。毎回お金くれってせびられるんだから!それに公私混同して、、、と私は言いました(師匠と言っても友達でもあったので結構お互い思ったことをスパッと言う仲)。師匠はあの人は死に逝くのよ。あんな所で食事もないなんて、ほっとくわけにはいかないのよ。それに滅多にしない事なの!と。確かにこれ一回きりだ。

それでも私は心の中で、私は絶対そんなことはしない。きっぱり仕事は仕事と割り切るんだと思っていた。

しかし

生まれて初めて仕事中に患者さんにおごりました。師匠みたいに$200 ポーンと出したわけではないですが、お昼ご飯をおごりました。相手は昨日の妊婦さんです。

彼女を見つけたのは昼前。一緒に病棟へ行き彼女は色々な検査をしていました。産婦人科医や看護師さんに色々聞かれるので付き添いさながら病室にいた私。昼抜きなんて絶対できない私はどうしても何か食べたかった。彼女も昨夜の夜から何も食べていない。

病棟は昼食時間が終わっていたので食事はなし。カフェで何か買ってくれば良いけどお腹のすいている彼女を前にして食べるわけにもいかず、彼女の分も購入して病室で一緒に食べた。素直に喜んでくれた。色んな事を話してくれた。居心地の良い広い個室で窓辺のソファーに座って一緒に食べたサンドイッチとサラダ。私は紅茶。彼女はフルーツスムージー。なんだかピクニックみたいで楽しかった。診察ではない時間を過ごした彼女と私。

とても貴重な時間に思えた。そして師匠の気持ちが少しわかったような気がする。医療者と患者の関係ではなく人間と人間のふれあいもたまには悪くないなと。


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