走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

貧富の差

2015年01月19日 | 仕事
カナダを福祉国家と勘違いする人は多い。医療は無料、高校までの教育費は無料。それだけだ。入院費、診察費、在宅診療/看護は無料だが、在宅介護、薬、デンタル、理学療法、マッサージ、老人ホームなどは自己負担だ(収入によって国や州が負担してくれるようになるが)。

社会全体の構造をみるとカナダは非常にアメリカに近い資本主義国なのだ。資本を持っている人にお金が集中する仕組み。貧富の差は益々広がってきている。先日公開になった報告書によるとBC州は子供の貧困率と貧富の格差ナンバーワンに輝いてしまった。BC州の中でも地域によって格差があるが平均して5人に1人の子供が貧困を経験している計算になる。

バンクバーの平均住宅価格が$1ミリオンになってしまった。住宅価格が上がれば賃貸価格も上がる。バンクバーの価格が上がればそれにつられて他の市の価格も上昇する。最低賃金$10.25のBC州。持ち家が持てない、レンタルもできない。しかし雇用は都会に集中する。このままでは家族ホームレスが生まれる状況になりつつある。

貧困が健康に与える影響は深刻だ。メンタルヘルス、循環器系の疾患、ガンの発生率を上昇させ、薬物依存、犯罪も増加させる。

国や州全体で取り組んでいかなければならない。

働こうとしない人間が悪いのだと言う人もいるであろう。

貧しい家に生まれ、薬物依存の両親に暴力を受け、食べるものもろくになし、学校にも行かせてもらえず、女に生まれれば親に体を売ることを強制され、男なら盗みを教わり、、、まともに育てと言う方がおかしいのだ。

親のようにはなりたくないと誓い、最低賃金で働いて自分の家族を守ろうとする。しかしシングルマザーがフルタイムで働いても手取りは月に$1500程度。6歳と2歳の子供を抱えて月$1000の家賃と食費で手取りは無くなってしまう。デイケアや、光熱費など他の生活費は一体何処から捻出すれば、、、働いても働いても楽にならない暮らし。子供の薬も買えない。こう言うストレスの高い生活を続け、鬱や不安症にならないわけがない。診断されれば、MCFDの観察下になり子供を取り上げられる可能性も。子供が取り上げられやけっぱちになり薬やお酒に走ってもおかしくない。子供は親から引き話され精神的に不安定なり、ADHD、ADDと診断され、、、、

人ごとではない。稼ぎ頭が働けない病気になった時、今の生活が一年以上続けられますか?





隣町にある道路沿いのブッシュキャンプタウン。100m以上にわたり17ぐらいのテントが立っていた。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。