走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

鬱と不眠

2015年07月03日 | 仕事
ローラは鬱と不安症を以前に診断された。しかし薬は自分でやめてしまった。薬物依存があり、その相互作用が気になることと薬嫌い(と言いながら違法役は使用するところが不思議)が理由だった。

違法薬の使用をやめたいと言う気持ちは強い。薬物依存専門カウンセラーの治療も始めた。再就職の訓練にもすでに申し込んだ。シェルターに6月末まで住んで、7月からは低賃金の住むところが決まっている。

問題は不眠。抗うつ剤を服用したくないと言う彼女に、抗鬱剤だが睡眠薬としても使える薬を始めた。

服用量は1ー2錠。副作用が出るかもしれないので一錠から始めるように言ったのに2錠から始めたローラ。眠れるんだけど、なんだか疲れがひどいと訴える。心電図はQTの波長が伸びていた。副作用だ。一錠に減らすように指示し、QTの延長はなくなり倦怠感も回復したが眠れない。他の睡眠薬を頼まれるがこれ以外の薬は自己負担でローラはとても購入することができない。

シェルターは二段ベッドが二台入った共同部屋。ベッドがギシギシ、咳がコンコン、イビキがグーグーと静かにぐっすり眠れるような環境ではない。なので薬の変更は自分の住居に入って、それでも眠れなければ他の薬を考えましょうと話すがウンと言わないローラ。

まあ、睡眠不足が続けばやる気も起こらないし、心も身体の健康には良くない。薬物使用を辞めるときに不必要なストレス環境は避けたい。それから鬱と不眠は深い関係、鬱だから不眠、それとも不眠が続いて鬱症状か?鶏か卵が先かそういう話なのだ。

ローラを説得し鬱の治療を始め、睡眠薬のカバーを申請することで丸く収まった。薬の反応は人それぞれ。処方ひとつにも色々考えなければならないのです。



ロッキーを離れて恐竜の発掘現場に向かっています。果てしなく広がる菜種油の畑と地平線。


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