- ■その1
今朝7時少し前にゆらりと床が揺れた。
ラジオのアナウンサーの声も揺れた。
それまでの話がいったん中断して、「今の地震により、津波の影響はないと思われます」と断ってから、アナウンサーに促されて経済アナリスト(と思われる)人は話を繋げた。私はそれがきっかけで、それまで注意を払ってなかったラジオに耳が傾いた。
『はてしない物語』や『モモ』の著者として知られるミヒャエル・エンデは、晩年に「お金」についての哲学的考察を残した。
エンデが企画しNHKが作成した『エンデの遺言』という番組があった。エンデが亡くなった後の1999年BSでの放送だったが、その後何度も再放送され、NHK総合でも放送された番組だった。
『エンデの遺言』において、エンデは「お金」を2種類に分けている。
パンを購入する「お金」と、株取引所で扱われる「お金」は、全く異るものであり、同じように扱ってはいけないと。
パンを買うためのお金は、自分の持っている物や労働等と交換するという実物を伴ったものである一方、株取引所などで扱われるお金については、---
とその扱いについて警鐘を鳴らしている。
「お金を作りだし、増やしてゆくのは、錬金術のやり方にきわめて似ています。錬金術は人間の欲望が作り出したものです。錬金術は、鉛から金を作りだそうというものですが、ありふれた鉛を金という価値のあるものに変えてゆくという考え方は、現代にも通じるものでしょう。通貨を印刷し、さらに利子がそれを増やしてゆくわけですから。そのお金が一人歩きし、自然環境やモラルに影響を与えています。お金を考えるとき、モラルの問題を忘れてはなりません。お金には倫理的問題が存在するのです」
---
経済アナリストは、ホリエもん事件を始めとして村上ファウンド事件、日銀総裁事件の一連の事件について、「エンデの言う倫理観が欠如している」とまとめていた。
- ■その2
- 売れている雑誌はキラーコンテンツ(ある一定数以上の購入者が見込める企画)を持っていて、定期的にその特集をする。
女性誌ならば、ダイエット、占い、人気タレントランキング……とか。その中にいつの間にか「初めての金融商品の取引」っていうのも入ってきた。
ちょっとは気にしてみようかと思って、ファイナンシャルプランナーの資格を持ち、外資系の銀行に勤めている友人と共に、「じょせーのためのはじめてのきんゆうおとりひき」講座なる無料セミナーに出てみた。隣にプロがいると、細かい疑問をその場で聞きやすいかんね。彼女は他の人の診断を聞くのは勉強になるって言うし。
- 【セミナー参加者メモ】
- 女性だけに限られている。独身者多し。
- 正社員だが寿退職を考えているという人や、非正社員多し。
- 服装や持ち物から、ブランドを2点以上持っている人多し。
- 【話の流れ】
- 「貯金をしても金利が低い」「終身雇用が減った(ダンナの給料には頼れない)」「将来は年金額が減る。貰えるのも定年(ここでは60歳)まで勤めたとしても収入がナイ期間(ここでは65歳で支給されるとしとく)を経てからになる」
- 「老後までに必要なお金を貯蓄しないといけない」
- 「独身者で自分で稼いでる人は、自分のだけの環境や性格で貯蓄計画を立てられる」
- 「体に不調があったり、扶養家族が出来てからでは、貯蓄計画が狂いがちになる」
- 「『死ぬまでにどのくらいのお金が必要なのか』という具体的な金額を算出するために、人生設計を立てなさい」
- 「立てた人生設計は、『結婚』や『出産』、『不動産の購入』など人生の転機には必ず、そうでなくとも3~5年に1度は見直しなさい」
ひ……ひぃぃぃぃ。
きょわいっ。
このセミナーに参加する前に、同行した友人にお金の話について聞いていたから、これは客を脅して物を売りつけようっていう悪徳商法ではないとは思う。
でもさ、手法がちょっと似てるな……なんて思ったりして。
真面目にファイナンシャルプランをアドバイスしてくださる方、ごめんなさい。
将来へのリスクヘッジの考えだとは、分かってはいるのデス。
で~も~さぁ~。
『子どもが1人生まれると、ファイナンシャルプラン的には、大きなロスだ』とか(あえて金額は書かないけど)。
『日本社会に格差が生まれると、スラム街ができる。そのとき、あなたの住んでいる地域が安全な地域とは限らない』とか。
怖いっすよ。
ホント。
エンデの倫理観も何もナイっすよ。
子どもを生み育てる事が、ファイナンシャルプラン的には大きなロスということに反応して、「子どもの存在はプライスレスですから」と、まるでCMみたいなことを言う人もいた。
これについて別の角度からこんな話も聞いた。
「女性の体は子どもを生み、母乳を与える事でホルモンバランスが取れるという性質がある。それをあえてしない道を選ぶということは、三大疾病と言われるトラブルの他に、重症の婦人病の可能性も考えていただきたい」
えええーーーー!!
キレイな格好をしたお隣のお嬢さん、思わず叫ぶ。
リスクヘッジとは、考えうる限りの最悪の事態を想定してそれを(この場合はお金で)乗り切ろうという考えのものだから、こういうことを言われるのは覚悟しよう。それが趣旨のセミナーに出席したわけだし。
それにしても、リスクヘッジを職業にしてる人はそれが毎日でツライとか言ってられないだろうね。ファイナンシャルプランナーの人は、自分の人生はもちろん顧客の人生についても常に最悪の事態を想定する癖がついていて、「友だちの結婚話とか聞くと思わず算出しちゃうし、トラブルを考えちゃうし、すごい疲れるわ~」という職業病があるそうな。
ところで、同行した友人によると日本人の成人のおよそ70%はなんらかの保険に加入してるとか。リスクヘッジしてる人、多いね。
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