※この記事は「マンチェスターU × ベンフィカ #1」からの続きです。
■ 大きな価値ある同点ゴール
この日のユナイテッドが敗戦から免れた大きなポイントは2つあります。
まずは先制されることとなった、あのスーパーなゴールが、前半の早い段階でのものだったことです。守備側からしてはどうしようもないシュートによる、まさかの失点でしたが、幸いにもそこから逆襲することのできる時間が多く残されていました。もしあれが、試合終盤でのベンフィカの先制点だったら・・・。ユナイテッドにとっては当然焦りも生じるでしょうし、致命的な状況となっていたかも知れません。
そして前半のうちに、しかもあの終了間際の時間帯に同点できたことが、相当に大きかったのは間違いないでしょう。あの時間帯のユナイテッドはどうしたことか、突如として全員が牙をむいた、この試合で一番ヒートアップしていた場面でした。それで得点できなければガクッときますし、何よりも、同点に追いついたという結末でもってハーフタイム、ならびに後半を迎えられたことが、余裕と落ち着きをユナイテッドにもたらしたでしょう。あのリードを奪われたままで後半に突入していたら、色々作戦を練ってくるベンフィカがどう対応を変化させてくるかわかったものでもありませんし、ずるずると時間が経過していってしまう恐れも十分にありました。それほどユナイテッドにとっては、今シーズンのここまでの数多い得点の中でも、最も価値の高い得点であったと言い切ってしまっても過言ではないでしょう。
ユナイテッドにとって、この試合で大きな武器となっていたのは、正確無比なサイドからのラストパスでした。左から右から、守る側としては一瞬も集中力を切ることのできない、精度の高いクロスを続出させていました。この得点を感じさせるラストボールで、チームは前後半通じてリズムに乗れましたし、結果としてペナルティエリアを横切るハイボールが、全3得点を生み出しました。
また、この試合で欠かせない存在となっていたのがロナウドです。豪快な直接フリーキックのシュート、猛然と突き進むドリブル突破、スペースへ飛び出す勢いある動き。自軍を前へ前へとけん引していきます。そして上記の、抜群のクロスボールまで上げて、1アシストです。同点となるフリーキックや、3点目となるコーナーキックも彼が獲得したもので、実に全得点に絡む、素晴らしい活躍でした。その攻撃的な技術力をいかんなく発揮し、自国のポルトガルを代表するチームを沈めました。
ただ一つ、ユナイテッドは立ち上がりに、ロナウドを左において、代わりにルーニーを下がり目とか、何だか色々と妙なことをやらかしていたフォーメーションを採りましたが、あれはやめておいた方がいいと思いましたね。確かにロナウドは、これまでもよく左右のポジションにとらわれずにプレーしてきましたが、ギグスはロナウドの真下で窮屈そうに何もできていなかったし、右サイドバックのネビルのオーバーラップも単発になりがちで、総合的に何の迫力も出ていませんでした。徐々に従来までのポジションへ修正されるとバランスがよくなり、左からはギグスとエブラ、右からはロナウドとネビルという、それぞれのサイドからどっしりとした攻撃を多発させることができたのです。ロナウドへのマンマークを散らす目的でもない限り、あのようなややこしい布陣は、自らリズムを崩していくだけのようにも感じられました。
■ こらえきれなかったサイドと空中戦
残念ながら敗れたベンフィカですが、不利な条件の中で、強敵を相手に採用したアイデアは悪くありませんでした。一本のパスで相手の中盤や最終ラインをかいくぐり、FWを走らせるという、一見オーソドックスなカウンターでしたが、なかなかに効果的でした。特にMFシモンをその最前線へ配置させ、その彼を、ユナイテッドの攻撃的なサイドバックであるエブラの裏へ、再三に渡って狙わせたのは面白かったです。スピードに優れるシモンは、この戦術で存在感を見せ、結果的には先制点の立役者にもなりました。惜しむらくは、ユナイテッドの守備に精一杯であった中盤の選手たちが一緒に押し上げられず、せっかくのシモンの突破にサポートがなかったことでした。
逆転負けを喫した要因は、自陣のゴール前へ上がってくるボールへの対処でした。思わぬ先制ゴールを守りきり通したかった守備陣でしたが、空中戦において3度もしてやられる失点でした。確かに、ユナイテッドの見せた好クロスの連発を阻止し続けろというのは、かなり困難なことではあります。それでも、同点に追いつかれたときの、相手のフリーキックの場面での動きは痛恨でした。上がってきたボールに、DFのルイゾンとレオが重なり合って崩れ、これが結果的にすぐ後方のビディッチをフリーとさせることになってしまい、その彼に点を取られてしまったのです。この同点弾は試合を左右する非常に意義あるもので、この局面での守りの連携力の欠如は、ベンフィカにとって大きくのしかかりました。
その後もマークがつききれずに、ハイボールから2失点。DFリカルド・ローシャの懸命な守備のプレーを筆頭に、中央からの攻撃にはよく耐えていましたが、クロスの対応には脆さを見せた試合でした。
あと、この3失点を喫するまでに至った直接の原因は、両サイドバックにあったと考えられるのです。試合終了後に、録画を巻き戻して注意深く失点のシーンを振り返ってみたのですが、いずれの失点もこの両サイドバックが演じてしまった失態から生じていたものでした。
驚愕のゴールでヒーローとなるべきであった右サイドバックのネルソンは、前半の終盤に猛攻を見せたユナイテッドの勢いに押され、あろうことか自陣で相手にパスを出してしまうというエラーを犯してしまいます。これを拾ったユナイテッドへ、あわててファールで阻止したベンフィカは、そこからのフリーキックで悔やみきれない同点のゴールを浴びることとなったのです。
また、後半15分。今度はベンフィカ陣内の左側で、左サイドバックのレオが、容易に相手にボールを渡してしまいました。その流れからキープされたユナイテッドのロナウドに対し、このミスを取り返すという意思も感じさせないマークの甘さであったレオは、そこからやすやすと得点のアシストとなるクロスをロナウドに上げられてしまったのです。
3失点目も、このレオが発端です。レオはロナウドの突破に追いついていけずに振り切られ、センターバックによるかろうじてのカバーリングでコーナーキックとなりましたが、このコーナーキックが駄目押しの失点へとつながってしまいました。しかも、そのゴールしたサハのマーク役で、これにつききれなかったのは右サイドバックのネルソンでした。
このゲーム、ユナイテッドのサイドアタックはかなり重厚なもので、そこから招いたピンチを全てこの2人の責任にするのは酷かもしれません。しかしそれでも、ユナイテッドは両サイドが起点となっていて、2人とも失点に直接関係したというのが事実であり、このサイドでの攻防に表れた優劣が、逆転負けへ多大に影響した要素であったことは確かでしょう。
今節、セルティックはすでに通過を決めていたこともあり、モチベーションを落としてコペンハーゲンに敗戦していました。よって勝利したユナイテッドが1位に返り咲いて、グループFは結末をつけました。
■ 決定!トーナメント進出の16チーム
さあ、チャンピオンズリーグも、この最終節でもって、いよいよ決勝トーナメントに出場する16チームが決定しました。この勝ち上がってきたチームを、現況とともに軽くおさらいしていみましょう。
・A組 1位: チェルシー(イングランド)
ご存知、イングランドの王者です。国内リーグでは連覇を果たしており、今シーズンはこのチャンピオンズリーグにおいて悲願の制覇を果たすべく、その意欲は並大抵のものではありません。潤沢な資金力から、選手の質・量ともに圧倒的で、紛れもなく優勝候補です。先制すればまず負けることのない、勝負強さが最大の売りです。
・A組 2位: バルセロナ(スペイン)
苦戦を強いられながらも、結局は勝ち上がってきた、言わずと知れた昨年度のチャンピオンです。基本的に広い展開を見せますが、ロナウジーニョを筆頭に、狭い局面からも巧みな技術で崩せてしまう、ゲームの制圧率と攻撃力が魅力です。前線で故障者が続出していますが、残された3トップが一体となってまとまりある好調さを見せ始めています。
・B組 1位: バイエルン(ドイツ)
ドイツの覇者であるバイエルンも、2試合を残して早々と16強入りを決めてしまいました。大黒柱のMFバラックが抜けた穴を、バルセロナから獲得したファン・ボメルがなかなかの健闘見せて埋めています。しかしながら、現在リーグ戦では勝ちきれない日々を送っている状況ではあります。突破力あるFWマカーイに、どれだけボールを集められるかがキーポイントでしょう。長期離脱していた貴重なチャンスメイカー、MFダイスラーの完全復帰も間近です。
・B組 2位: インテル(イタリア)
チャンピオンズリーグでは2連敗での発進という、まさかのスタートでしたが、その後は一転して安定してきました。大型補強による豪華な顔ぶれとは裏腹に、堅実で沈着にリードを守りきるという、これまでに見られなかった特長で、国内外において勝利を重ねています。10月以降は、公式戦において一度も黒星がない好調さを維持しています。
・C組 1位: リバプール(イングランド)
このチャンピオンズリーグにおいては順調でしたが、現在国内リーグにおいては調子の波が大きく、全く優勝争いへ絡んでいくことができていません。要因の一つとして、いまだに軸となる布陣が固まっていないことが挙げられます。この影響から、中心選手のMFジェラードも、あちこちのポジションを任され、その能力を存分に発揮できているとは言い難い現状です。
・C組 2位: PSV (オランダ)
国内で連覇を成し遂げている、オランダの王者です。持ち味は何と言っても守備力です。ブラジル代表のDFアレックス・ロドリゴを要として、中盤ではベテランのコクーがチームを指揮し、崩れることがありません。ここからの勝負強さを発揮し、現在もリーグ戦で首位を走っています。
・D組 1位: バレンシア(スペイン)
優秀な選手を豊富に抱えるこのチームは、チャンピオンズリーグを含め、快調な滑り出しを見せるシーズンとしました。しかしながら、その主戦力となる選手たちの故障が続発。それにともなって、一気に失速し始めている現状です。序盤の貯金で1位通過は決めましたが、今後の先行きはかなり不透明なものとなっています。
・D組 2位: ローマ(イタリア)
ご承知の通り、FWトッティが王様として君臨するチームです。そのトッティの調子が上向きになるにつれて、それに比例するように得点力が爆発してきました。しかしながら、先発メンバー以外の選手の層は必ずしも厚いとは言いきれず、トッティの出来不出来によってかなり試合内容が左右される不安定さもあるでしょう。また、現在このトッティが軽傷を負っていることも心配材料です。
・E組 1位: リヨン(フランス)
フランスリーグで5連覇中。今季もそのリーグにおいて首位をダントツで突き進み、国内では敵なしのリヨン。中盤で大きな存在だったMFディアラをレアルに放出したシーズンの幕開けでしたが、その穴を感じさせない、攻守がしっかりと噛み合う充実した内容を続けています。そのレアルにも、チャンピオンズリーグで1勝1分け。世界的名手であるジュニーニョのフリーキックという武器もあり、決してあなどることのできない存在です。
・E組 2位: レアル・マドリード(スペイン)
「銀河系軍団」レアルも、早々とグループステージを決定させました。例年のごとく、分厚い選手層を誇ります。今季はカペッロ監督の新体制の下、DFカンナバーロを始めとして守備的な補強にも成功し、これまでの破壊力あるサッカーに、「堅守速攻」というスタイルも併用されています。リヨンに屈して2位となったため、他の1位通過のチームにとっては、このレアルと初戦であたるのは避けたいところでしょう。
・F組 1位: マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)
チャンピオンズリーグでは紆余曲折がありましたが、結局は1位通過を果たしました。今シーズンは久々に「強い」ユナイテッドが蘇っており、各選手の優れた個人技術が炸裂して、攻守にわたって絶好調です。この調子を維持するならば、優勝候補から外すことができません。唯一の懸念材料は、故障などによるFWの駒不足でしょうか。1月より、元スウェーデン代表のFWラーションの、期限付き移籍による加入が決定されています。
・F組 2位: セルティック(スコットランド)
最大の驚きは、ベンフィカを抑え、Fグループで一番にトーナメント出場を決めた、このスコットランドの王者でした。国内リーグで連覇に向けて、現在2位以下をぶっちぎって首位を独走しているチーム力は、欧州でも通用しました。セルティックにとって、そして中村俊輔にとって、ここから大いなる挑戦が始まります。
・G組 1位: アーセナル(イングランド)
昨年度はチャンピオンズリーグ準優勝。イングランドの強豪であることに変わりはありませんが、チームは現在若手中心の陣容で、過渡期にいると言っていいでしょう。実際に格下を相手に取りこぼしが多く、国内リーグでは3位ながらも、すでに優勝は絶望視されています。絶対的なエースとして攻撃を一身に任されるFWのアンリが、故障により約1ヶ月の離脱というのも心配な要素です。
・G組 2位: FCポルト(ポルトガル)
シーズン開幕直前にすったもんだがあって、監督が交代するという事件がありましたが、結局は国内リーグでも連覇に向けて順調に首位を走っています。チャンピオンズリーグでも、CSKAモスクワという好チームを退けて2位で通過しました。ポルトガル勢では唯一の16強入りとなり、同国を代表する立場となります。ポルトガルにおける新エース、本格的なストライカーのFWポスティガの得点力に注目です。
・H組 1位: ACミラン(イタリア)
1強3弱という、正直に言って恵まれすぎた感のあるグループの組み合わせで、1位通過は必然のものでありました。今シーズンは、今日に至るまで蔓延し続けている決定力不足に加え、堅守であるはずのディフェンスゾーンにも綻びが見られてきて、試合を重ねるごとに勢いは下降線をたどっています。1位のチームの中では、現在一番重い雰囲気に包まれているのではないでしょうか。楽勝と見られていたこのHグループでも、結局はたったの勝ち点10で終わりました。立て直しが急務です。
・H組 2位: リール(フランス)
ちょっとこのチームに関してはよく存じていません(笑)。ごめんなさい。最終節ではミランを破って、逆転でAEKアテネをかわし、突破を決めました。国内リーグでもリヨンに負けてからは9戦負けなしと、これらの勢いでもって、決勝トーナメントの1回戦勝利が大目標となります。
1位のチームと2位のチームが対戦することになる、トーナメント1回戦。注目のその組み合わせは、今月の15日に決定されます。果たして、どのようなカードが実現されるのでしょうか。2位通過のバルセロナ、インテル、レアルがどことぶつかるのか。そして中村俊輔の対戦相手はどのチームとなるのか。楽しみですね。
結果としては、セルティック以外は、波乱もなく進出の予想されたチームが出揃い、ハイレベルなトーナメント戦となることが大いに期待されます。その初戦となるのは、来年の2月20日。組み合わせの決定を受けて、それぞれのチームが対戦相手を研究しながら、自分たちの修正、さらなる強化、あるいは巻き返しのための再編成を、この長い期間を利用して図ることでしょう。ぜひベストなパフォーマンスでもってこれに臨み、白熱する好ゲームとしてくれることを願っています。
この「欧州CL」のカテゴリも、この記事を最後にしばらくお休みとなりますね。次回、決勝トーナメント1回戦、素晴らしい内容での試合を記載できたらいいなと思っています。
■ 大きな価値ある同点ゴール
この日のユナイテッドが敗戦から免れた大きなポイントは2つあります。
まずは先制されることとなった、あのスーパーなゴールが、前半の早い段階でのものだったことです。守備側からしてはどうしようもないシュートによる、まさかの失点でしたが、幸いにもそこから逆襲することのできる時間が多く残されていました。もしあれが、試合終盤でのベンフィカの先制点だったら・・・。ユナイテッドにとっては当然焦りも生じるでしょうし、致命的な状況となっていたかも知れません。
そして前半のうちに、しかもあの終了間際の時間帯に同点できたことが、相当に大きかったのは間違いないでしょう。あの時間帯のユナイテッドはどうしたことか、突如として全員が牙をむいた、この試合で一番ヒートアップしていた場面でした。それで得点できなければガクッときますし、何よりも、同点に追いついたという結末でもってハーフタイム、ならびに後半を迎えられたことが、余裕と落ち着きをユナイテッドにもたらしたでしょう。あのリードを奪われたままで後半に突入していたら、色々作戦を練ってくるベンフィカがどう対応を変化させてくるかわかったものでもありませんし、ずるずると時間が経過していってしまう恐れも十分にありました。それほどユナイテッドにとっては、今シーズンのここまでの数多い得点の中でも、最も価値の高い得点であったと言い切ってしまっても過言ではないでしょう。
ユナイテッドにとって、この試合で大きな武器となっていたのは、正確無比なサイドからのラストパスでした。左から右から、守る側としては一瞬も集中力を切ることのできない、精度の高いクロスを続出させていました。この得点を感じさせるラストボールで、チームは前後半通じてリズムに乗れましたし、結果としてペナルティエリアを横切るハイボールが、全3得点を生み出しました。
また、この試合で欠かせない存在となっていたのがロナウドです。豪快な直接フリーキックのシュート、猛然と突き進むドリブル突破、スペースへ飛び出す勢いある動き。自軍を前へ前へとけん引していきます。そして上記の、抜群のクロスボールまで上げて、1アシストです。同点となるフリーキックや、3点目となるコーナーキックも彼が獲得したもので、実に全得点に絡む、素晴らしい活躍でした。その攻撃的な技術力をいかんなく発揮し、自国のポルトガルを代表するチームを沈めました。
ただ一つ、ユナイテッドは立ち上がりに、ロナウドを左において、代わりにルーニーを下がり目とか、何だか色々と妙なことをやらかしていたフォーメーションを採りましたが、あれはやめておいた方がいいと思いましたね。確かにロナウドは、これまでもよく左右のポジションにとらわれずにプレーしてきましたが、ギグスはロナウドの真下で窮屈そうに何もできていなかったし、右サイドバックのネビルのオーバーラップも単発になりがちで、総合的に何の迫力も出ていませんでした。徐々に従来までのポジションへ修正されるとバランスがよくなり、左からはギグスとエブラ、右からはロナウドとネビルという、それぞれのサイドからどっしりとした攻撃を多発させることができたのです。ロナウドへのマンマークを散らす目的でもない限り、あのようなややこしい布陣は、自らリズムを崩していくだけのようにも感じられました。
■ こらえきれなかったサイドと空中戦
残念ながら敗れたベンフィカですが、不利な条件の中で、強敵を相手に採用したアイデアは悪くありませんでした。一本のパスで相手の中盤や最終ラインをかいくぐり、FWを走らせるという、一見オーソドックスなカウンターでしたが、なかなかに効果的でした。特にMFシモンをその最前線へ配置させ、その彼を、ユナイテッドの攻撃的なサイドバックであるエブラの裏へ、再三に渡って狙わせたのは面白かったです。スピードに優れるシモンは、この戦術で存在感を見せ、結果的には先制点の立役者にもなりました。惜しむらくは、ユナイテッドの守備に精一杯であった中盤の選手たちが一緒に押し上げられず、せっかくのシモンの突破にサポートがなかったことでした。
逆転負けを喫した要因は、自陣のゴール前へ上がってくるボールへの対処でした。思わぬ先制ゴールを守りきり通したかった守備陣でしたが、空中戦において3度もしてやられる失点でした。確かに、ユナイテッドの見せた好クロスの連発を阻止し続けろというのは、かなり困難なことではあります。それでも、同点に追いつかれたときの、相手のフリーキックの場面での動きは痛恨でした。上がってきたボールに、DFのルイゾンとレオが重なり合って崩れ、これが結果的にすぐ後方のビディッチをフリーとさせることになってしまい、その彼に点を取られてしまったのです。この同点弾は試合を左右する非常に意義あるもので、この局面での守りの連携力の欠如は、ベンフィカにとって大きくのしかかりました。
その後もマークがつききれずに、ハイボールから2失点。DFリカルド・ローシャの懸命な守備のプレーを筆頭に、中央からの攻撃にはよく耐えていましたが、クロスの対応には脆さを見せた試合でした。
あと、この3失点を喫するまでに至った直接の原因は、両サイドバックにあったと考えられるのです。試合終了後に、録画を巻き戻して注意深く失点のシーンを振り返ってみたのですが、いずれの失点もこの両サイドバックが演じてしまった失態から生じていたものでした。
驚愕のゴールでヒーローとなるべきであった右サイドバックのネルソンは、前半の終盤に猛攻を見せたユナイテッドの勢いに押され、あろうことか自陣で相手にパスを出してしまうというエラーを犯してしまいます。これを拾ったユナイテッドへ、あわててファールで阻止したベンフィカは、そこからのフリーキックで悔やみきれない同点のゴールを浴びることとなったのです。
また、後半15分。今度はベンフィカ陣内の左側で、左サイドバックのレオが、容易に相手にボールを渡してしまいました。その流れからキープされたユナイテッドのロナウドに対し、このミスを取り返すという意思も感じさせないマークの甘さであったレオは、そこからやすやすと得点のアシストとなるクロスをロナウドに上げられてしまったのです。
3失点目も、このレオが発端です。レオはロナウドの突破に追いついていけずに振り切られ、センターバックによるかろうじてのカバーリングでコーナーキックとなりましたが、このコーナーキックが駄目押しの失点へとつながってしまいました。しかも、そのゴールしたサハのマーク役で、これにつききれなかったのは右サイドバックのネルソンでした。
このゲーム、ユナイテッドのサイドアタックはかなり重厚なもので、そこから招いたピンチを全てこの2人の責任にするのは酷かもしれません。しかしそれでも、ユナイテッドは両サイドが起点となっていて、2人とも失点に直接関係したというのが事実であり、このサイドでの攻防に表れた優劣が、逆転負けへ多大に影響した要素であったことは確かでしょう。
今節、セルティックはすでに通過を決めていたこともあり、モチベーションを落としてコペンハーゲンに敗戦していました。よって勝利したユナイテッドが1位に返り咲いて、グループFは結末をつけました。
■ 決定!トーナメント進出の16チーム
さあ、チャンピオンズリーグも、この最終節でもって、いよいよ決勝トーナメントに出場する16チームが決定しました。この勝ち上がってきたチームを、現況とともに軽くおさらいしていみましょう。
・A組 1位: チェルシー(イングランド)
ご存知、イングランドの王者です。国内リーグでは連覇を果たしており、今シーズンはこのチャンピオンズリーグにおいて悲願の制覇を果たすべく、その意欲は並大抵のものではありません。潤沢な資金力から、選手の質・量ともに圧倒的で、紛れもなく優勝候補です。先制すればまず負けることのない、勝負強さが最大の売りです。
・A組 2位: バルセロナ(スペイン)
苦戦を強いられながらも、結局は勝ち上がってきた、言わずと知れた昨年度のチャンピオンです。基本的に広い展開を見せますが、ロナウジーニョを筆頭に、狭い局面からも巧みな技術で崩せてしまう、ゲームの制圧率と攻撃力が魅力です。前線で故障者が続出していますが、残された3トップが一体となってまとまりある好調さを見せ始めています。
・B組 1位: バイエルン(ドイツ)
ドイツの覇者であるバイエルンも、2試合を残して早々と16強入りを決めてしまいました。大黒柱のMFバラックが抜けた穴を、バルセロナから獲得したファン・ボメルがなかなかの健闘見せて埋めています。しかしながら、現在リーグ戦では勝ちきれない日々を送っている状況ではあります。突破力あるFWマカーイに、どれだけボールを集められるかがキーポイントでしょう。長期離脱していた貴重なチャンスメイカー、MFダイスラーの完全復帰も間近です。
・B組 2位: インテル(イタリア)
チャンピオンズリーグでは2連敗での発進という、まさかのスタートでしたが、その後は一転して安定してきました。大型補強による豪華な顔ぶれとは裏腹に、堅実で沈着にリードを守りきるという、これまでに見られなかった特長で、国内外において勝利を重ねています。10月以降は、公式戦において一度も黒星がない好調さを維持しています。
・C組 1位: リバプール(イングランド)
このチャンピオンズリーグにおいては順調でしたが、現在国内リーグにおいては調子の波が大きく、全く優勝争いへ絡んでいくことができていません。要因の一つとして、いまだに軸となる布陣が固まっていないことが挙げられます。この影響から、中心選手のMFジェラードも、あちこちのポジションを任され、その能力を存分に発揮できているとは言い難い現状です。
・C組 2位: PSV (オランダ)
国内で連覇を成し遂げている、オランダの王者です。持ち味は何と言っても守備力です。ブラジル代表のDFアレックス・ロドリゴを要として、中盤ではベテランのコクーがチームを指揮し、崩れることがありません。ここからの勝負強さを発揮し、現在もリーグ戦で首位を走っています。
・D組 1位: バレンシア(スペイン)
優秀な選手を豊富に抱えるこのチームは、チャンピオンズリーグを含め、快調な滑り出しを見せるシーズンとしました。しかしながら、その主戦力となる選手たちの故障が続発。それにともなって、一気に失速し始めている現状です。序盤の貯金で1位通過は決めましたが、今後の先行きはかなり不透明なものとなっています。
・D組 2位: ローマ(イタリア)
ご承知の通り、FWトッティが王様として君臨するチームです。そのトッティの調子が上向きになるにつれて、それに比例するように得点力が爆発してきました。しかしながら、先発メンバー以外の選手の層は必ずしも厚いとは言いきれず、トッティの出来不出来によってかなり試合内容が左右される不安定さもあるでしょう。また、現在このトッティが軽傷を負っていることも心配材料です。
・E組 1位: リヨン(フランス)
フランスリーグで5連覇中。今季もそのリーグにおいて首位をダントツで突き進み、国内では敵なしのリヨン。中盤で大きな存在だったMFディアラをレアルに放出したシーズンの幕開けでしたが、その穴を感じさせない、攻守がしっかりと噛み合う充実した内容を続けています。そのレアルにも、チャンピオンズリーグで1勝1分け。世界的名手であるジュニーニョのフリーキックという武器もあり、決してあなどることのできない存在です。
・E組 2位: レアル・マドリード(スペイン)
「銀河系軍団」レアルも、早々とグループステージを決定させました。例年のごとく、分厚い選手層を誇ります。今季はカペッロ監督の新体制の下、DFカンナバーロを始めとして守備的な補強にも成功し、これまでの破壊力あるサッカーに、「堅守速攻」というスタイルも併用されています。リヨンに屈して2位となったため、他の1位通過のチームにとっては、このレアルと初戦であたるのは避けたいところでしょう。
・F組 1位: マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)
チャンピオンズリーグでは紆余曲折がありましたが、結局は1位通過を果たしました。今シーズンは久々に「強い」ユナイテッドが蘇っており、各選手の優れた個人技術が炸裂して、攻守にわたって絶好調です。この調子を維持するならば、優勝候補から外すことができません。唯一の懸念材料は、故障などによるFWの駒不足でしょうか。1月より、元スウェーデン代表のFWラーションの、期限付き移籍による加入が決定されています。
・F組 2位: セルティック(スコットランド)
最大の驚きは、ベンフィカを抑え、Fグループで一番にトーナメント出場を決めた、このスコットランドの王者でした。国内リーグで連覇に向けて、現在2位以下をぶっちぎって首位を独走しているチーム力は、欧州でも通用しました。セルティックにとって、そして中村俊輔にとって、ここから大いなる挑戦が始まります。
・G組 1位: アーセナル(イングランド)
昨年度はチャンピオンズリーグ準優勝。イングランドの強豪であることに変わりはありませんが、チームは現在若手中心の陣容で、過渡期にいると言っていいでしょう。実際に格下を相手に取りこぼしが多く、国内リーグでは3位ながらも、すでに優勝は絶望視されています。絶対的なエースとして攻撃を一身に任されるFWのアンリが、故障により約1ヶ月の離脱というのも心配な要素です。
・G組 2位: FCポルト(ポルトガル)
シーズン開幕直前にすったもんだがあって、監督が交代するという事件がありましたが、結局は国内リーグでも連覇に向けて順調に首位を走っています。チャンピオンズリーグでも、CSKAモスクワという好チームを退けて2位で通過しました。ポルトガル勢では唯一の16強入りとなり、同国を代表する立場となります。ポルトガルにおける新エース、本格的なストライカーのFWポスティガの得点力に注目です。
・H組 1位: ACミラン(イタリア)
1強3弱という、正直に言って恵まれすぎた感のあるグループの組み合わせで、1位通過は必然のものでありました。今シーズンは、今日に至るまで蔓延し続けている決定力不足に加え、堅守であるはずのディフェンスゾーンにも綻びが見られてきて、試合を重ねるごとに勢いは下降線をたどっています。1位のチームの中では、現在一番重い雰囲気に包まれているのではないでしょうか。楽勝と見られていたこのHグループでも、結局はたったの勝ち点10で終わりました。立て直しが急務です。
・H組 2位: リール(フランス)
ちょっとこのチームに関してはよく存じていません(笑)。ごめんなさい。最終節ではミランを破って、逆転でAEKアテネをかわし、突破を決めました。国内リーグでもリヨンに負けてからは9戦負けなしと、これらの勢いでもって、決勝トーナメントの1回戦勝利が大目標となります。
1位のチームと2位のチームが対戦することになる、トーナメント1回戦。注目のその組み合わせは、今月の15日に決定されます。果たして、どのようなカードが実現されるのでしょうか。2位通過のバルセロナ、インテル、レアルがどことぶつかるのか。そして中村俊輔の対戦相手はどのチームとなるのか。楽しみですね。
結果としては、セルティック以外は、波乱もなく進出の予想されたチームが出揃い、ハイレベルなトーナメント戦となることが大いに期待されます。その初戦となるのは、来年の2月20日。組み合わせの決定を受けて、それぞれのチームが対戦相手を研究しながら、自分たちの修正、さらなる強化、あるいは巻き返しのための再編成を、この長い期間を利用して図ることでしょう。ぜひベストなパフォーマンスでもってこれに臨み、白熱する好ゲームとしてくれることを願っています。
この「欧州CL」のカテゴリも、この記事を最後にしばらくお休みとなりますね。次回、決勝トーナメント1回戦、素晴らしい内容での試合を記載できたらいいなと思っています。
ぜひ、また何かの機会に閲覧していただいたら嬉しいです。