「呼び捨て?」
その疑問はもっともだった。とは言え、類はただ驚いただけで、怒ってはいないようだ。
普通なら、兄さんを“灯守”と呼び、類を“兄さん”と呼ぶんじゃないかと言われたこともある。でもうちは家族構成自体が普通じゃない。
「……まあ、いいか。敬称がついても気色悪い」
ぼくが何も言わない間に、あっさり呼び捨てを許容した。
「そのかわり」
なんと呼んでいいものか定まらないまま、類は結婚して家を出たし、その六年後ぼくは進学して家を出た。お互いを何と呼んでいたかという記憶はない。多分、呼び合ったこともない。
「おまえのことはドリーと呼ぶ」
ニュースで見たクローン羊を思い出した。
「羊じゃあるまいし」
お互いに顔を見ないで話すのは、向き合って話すほどの仲じゃないからだ。今更、兄弟面してもしょうがないくらい距離のある相手。でも、嫌いあっているわけじゃなくて、用事があれば顔を合わせるのは当たり前なくらい。
「ヒツジは俺のヨメだ」
そんな名前だったかな。
どうやら、本気でぼくをドリーと呼ぶつもりはないらしい。
もしかしたら、ぼくが類を頭の中でずっと呼び捨てにしていたように、類はぼくを実際には呼ばないまでも〈ドリー〉という名で認識していたかもしれない。
そのくらいなら、まあいいか。
その疑問はもっともだった。とは言え、類はただ驚いただけで、怒ってはいないようだ。
普通なら、兄さんを“灯守”と呼び、類を“兄さん”と呼ぶんじゃないかと言われたこともある。でもうちは家族構成自体が普通じゃない。
「……まあ、いいか。敬称がついても気色悪い」
ぼくが何も言わない間に、あっさり呼び捨てを許容した。
「そのかわり」
なんと呼んでいいものか定まらないまま、類は結婚して家を出たし、その六年後ぼくは進学して家を出た。お互いを何と呼んでいたかという記憶はない。多分、呼び合ったこともない。
「おまえのことはドリーと呼ぶ」
ニュースで見たクローン羊を思い出した。
「羊じゃあるまいし」
お互いに顔を見ないで話すのは、向き合って話すほどの仲じゃないからだ。今更、兄弟面してもしょうがないくらい距離のある相手。でも、嫌いあっているわけじゃなくて、用事があれば顔を合わせるのは当たり前なくらい。
「ヒツジは俺のヨメだ」
そんな名前だったかな。
どうやら、本気でぼくをドリーと呼ぶつもりはないらしい。
もしかしたら、ぼくが類を頭の中でずっと呼び捨てにしていたように、類はぼくを実際には呼ばないまでも〈ドリー〉という名で認識していたかもしれない。
そのくらいなら、まあいいか。
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