キ上の空論

小説もどきや日常などの雑文・覚え書きです。

飛ばない教室

2007年12月24日 | みるいら
 いつもより遅く帰ってきた兄さんが、余ったからと小さな袋に入ったお菓子をくれた。小さなリボンが付いていて、開けるのももったいない気がする。
 均等に配ると、とめさんは荷物に入れ(甘い物好きの姉がいるそうだ)、大家はコップの横に置き(満足そうに眺めている)、石飛はすぐに袋を空けた。
 兄さんは台所で、多分、今日の夕食を作っている。
 とめさんは時計を見た。
「長居しちゃったね」
 と言いながらも、帰る気配はない。
 卒論の締め切りまであと少し。学校で顔を合わせることもほとんどなくなってきた。
 この時間を惜しみたい。
 いつのまにかぼんやりとテレビを見ていた大家が
「このシリーズさ、変身ヒーローのジャスティス先生とか出てこないかなあ」
 と石飛に振り返った。
 がたん。
 台所で大きな音がした。
 石飛は身を折ってふるえている。
 残念ながら、ぼくには何がおかしいのかさっぱりわからない。わからないけど、まあいいや。

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ケストナーの『飛ぶ教室』は“クリスマスの話”、正義先生(訳本によっては正義さん)が登場します。
“このシリーズ”はファンタ先生。個人的には将軍先生が一押しです。

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