mimonのブログ

面白そうなので、初めてブログを立ち上げてみました。
話題は、限定しません。更新も、不定期です。

地名論について

2010-01-11 23:03:59 | Weblog

お茶の水大学 理学部の冨永靖徳教授が今年の3月で退官なさいます
教授の前途が豊かなものとなるよう、祈念して、詩を引用したいと思います。
本来であれば、朗読するべき所ですが、私は、録音してブログに貼り付けるすべを知りませんので、
その代わりに引用します。そういう事情ですので、著作権の侵害は、大目に見ていただけると、幸いです。
作者は、大岡信で、その代表作のひとつの「地名論」がふさわしいかと、思います。
お茶の水大学で長く水の構造を研究なさって来られた方の前途ですから。
底本は、(株)新思潮社発行の現代詩文庫24「大岡信詩集」第18刷です。

地名論

水道管はうたえよ
御茶の水は流れて
鵠沼に溜り
荻窪に落ち
奥入瀬で輝け
サッポロ
バルパライソ
トンブクトゥーは
耳の中で
爾垂れのように延びつづけよ
奇体にも懐かしい名前をもった
すべての土地の精霊よ
時間の列柱となって
おれを包んでくれ
おお 見知らぬ土地を限りなく
数えあげることは
どうして人をこのように
音楽の房でいっぱいにするのか
燃えあがるカーテンの上で
煙が風に
形をあたえるように
名前は土地に
波動をあたえる
土地の名前はたぶん
光でできている
外国なまりがベニスといえば
しらみの混ったベッドの下で
暗い水が囁くだけだが
おお ヴェネーツィア
故郷を離れた赤毛の娘が
叫べば みよ
広場の石に光が溢れ
風は鳩を受胎する
おお
それみよ
瀬田の唐橋
雪駄のからかさ
東京は
いつも
曇り


大岡信の若いころの詩で、私が好きなのは、「春のために」あたりなのですが、
冨永教授のご定年を祝福するには、こういう、元気のいい詩が似つかわしいと感じます。

 

【2014.5.11追記】

朗読してアップロードしましたので、私の悪声が聞きたい方は、下のMP3TUBE画像をクリックしてください。

神戸で朗読した関係で、底本の版が第18刷ではなく高校生のときに買った第9刷ですが、内容は同じです。
上の引用は、朗読した元を参考用に引用したと解釈すれば、著作権侵害に言い訳くらいは、できると思います。
投稿時点と時間差が4年ほどありますから、かなり無理がありますが、……。


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