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眠くならない、シューベルト弦楽五重奏曲

2021年07月11日 23時52分37秒 | シューベルト
いろんな報道によると、「自らの政権維持のために、巨額の赤字やコロナ感染拡大を全く顧みずに、なんとかなるやろ、という感覚で、東京五輪を強行した」って感じですかねえ。頼みのウィルスもなんだかよくわからないまま接種が中断。そして緊急事態宣言。飲酒店への厳しい対応。違反するお店には酒を売るなとか…。なんだか誰もう言うことを聞かなくなっている状況とか。これからのことを考えると、不安しかありませんねえ。日本はどうなるんだろう。

そんなこんなで、今回はシューベルトの弦楽五重奏曲です。シューベルトの若い最晩年の傑作群のひとつ。1828年夏、死の二か月前に完成。三曲のピアノソナタ、ミサ曲第6番など、ともに、まあこれだけの曲をわずかの時間で作曲できたなあ、と思うし、シューベルトの天才ぶりも知られますねえ。この弦楽五重奏曲も、全曲約50分。その中には、シューベルトの魅力的なメロディーが満載であります。

この曲、前回の村上春樹さんの本にも取り上げられました。おもしろかったのは、クリーブランドSQとヨーヨーマによるこの曲を聴くと「すぐ眠たくなって、とても気持ちよくすやすやと眠れてしまうのだ」です。確かにそんな曲はありますね。以前私もバッハの無伴奏チェロ(フルニエ)や平均律(グルダ)などを重宝しておりました(ごめんなさい)。クリーブランドSQなどの演奏は聴いたことがないのですが、一度聴いてみたいものです。

これまで、この曲は三度ほど取り上げました。今回は、アルバン・ベルクSQとハインリヒ・シフによる演奏です。1982年12月18-22日の録音。最近の演奏と思っていましたが、もう約40年前の演奏になりますねえ。この演奏は、決して眠くなるようなものではありません(笑)。約50分ほどの長丁場ですが、最初から最後まで高い緊張感と、強固な構成力、見事な演奏テクニック、そしてシューベルトの音楽に対する熱い共感などにあふれており、非常に立派な演奏であります。弦楽四重奏にチェロが加わったこの曲、そうでなくても安定感抜群のこのSQに低音増幅が加わり、鉄壁の低音。それによって弦楽四重奏とは比べものにならない曲の厚みとなり、これによって、シューベルトの意図した以上に効果的なものになっています。そんなこんなで、あっという間の50分であり、いろいろと他の演奏では聴けない、たいそうな充実感をもって聴くことができるのであります。やはりこのSQはすごいですねえ。

第1楽章、冒頭からの主題、ここでの思い入れたっぷりの演奏とそれに続く分厚い響き。そして幾度となく繰り返される主題も、けっして同じではなく、さまざまな変化なども存分に感じられあたりからも、この演奏の充実振りを感じさせる。加えて低音の優れたところも見逃せない。第2楽章、まずは第1ヴァイオリンのすすり泣き、そして消え入るような響きがとてもいい。 そしてもう一段高い泣きが入り、ここでもヴァイオリンの音色が実に美しい。転調を繰り返しながら、悲しみが静かに深まって行くところが実に明確に表現されています。もう耳は演奏に釘付けになっていまいますねえ。第3楽章スケルツォ。前楽章の悲しみを振り払うような力強い演奏。五重奏の枠を越えるかのよう。そしてトリオになると、ヴィオラとチェロによる一層深い慟哭が再び悲しみを表す。静かにゆっくりと悲しみが進む様が、実に巧い。消え入るような、終結から一転して前半の反復でも、実に弦の鮮明さが見事です。そして第4楽章。ここでも繰り返される転調や強弱などの変化が実に巧く表現される。それにそれぞれの弦のうまさが加わり、緊張感を持って終わりまで聴くことができる。やはり、アルバン・ベルクの技術の高さは尋常ではありません。50分、さわやかな緊張を持続させてくれるのでありました。

コロナだ、五輪だ、と言っている中、7月初旬の梅雨末期の豪雨がいろんなところで猛威を振るっています。これ以上の被害がでないことを祈るばかりですねえ。
(EMI 6 23079 2 2012年 輸入盤)

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2 コメント

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Unknown (クレモナ)
2021-07-18 22:53:07
梅雨が明けて、暑さが本番になってきましたが、如何でしょうか?音楽を聴く環境としては、あまり、良い季節ではなさそうです。
さて、シューベルトの五重奏曲ですが、アルバンベルクのものは、持っていなかったので、ラサールSQの演奏を聴いてみました。偶然ですが、ここにも、ハレルが加わっています。確か1971年録音ですから、アルバンベルク盤より、10年ほど若い時の演奏で、これも、なかなか良い演奏でした。やはり、シューベルトはメロディメーカーですね。長い曲ですが、聴いてしまいます。
前回の村上春樹の本では、好きな曲として、多数、取り上げられていますが、よく、睡魔が襲う演奏として、ヨーヨーマが取り上げられていましたが、村上春樹らしい、切り口ですね。さすが、作家。この本、何度も読んでいるのですが、曲の取り上げ方が、系統だっていないので、どのページを開いても、意外性があって、楽しいです。買った時は、高いなあと思ったりしましたが、今は、愛読書になっています。シューベルトから脱線してしまい、申し訳ありません。私は、シューベルトの音楽は大好きで、よく聴きます。これからも、シューベルト、取り上げて下さい。
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コメントありがとうございます。 (mikotomochi58)
2021-07-19 21:42:15
クレモナ 様、コメント感謝です。先週末からやっと夏らしい暑さになってきました。お変わりございませんか。暑い夏でしょうが、音楽聴いて暑さを吹き飛ばしていきたいですねえ(笑)。
ラサールSQのものは未聴です。ラサールSQの演奏は、それほど多いわけではないのですが、ベートーヴェンの後期のSQ以外はそれほど聴いていません。ぜひ聴いてみたいと思います。
ご指摘のとおり、シューベルトのメロディってほんとに魅力的ですよね。この弦楽五重奏曲も実にいい音楽が鳴っています。他にもたくさんあるので、またしっかり聴きたくなりますね。
また、ご教示ください。
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