この記事 イランの現状を 簡明適確に 解説してます
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和弐年(2020)3月3日(火曜日)弐
通巻6387号
イランでなぜコロナウィルス死者が数百名も出ているのか?
中国はイランで、いったい何をやっていたのか?
イランの国会副議長がコロナウィルスに感染して死亡した。
防疫の責任者である保険相がせき込みながらの記者会見。副大統領も罹患、政府高官、市長クラスの高層部に感染が急拡大し、イランはパニックに襲われている。
イラン政府の公式発表で、死者が66名(3月2日)。誰もこの数字を信じていない。
中国共産党と同様に狂信的宗教指導者が統治するイラン政府は、不都合な情報を隠ぺいするか、操作している。
反政府組織は、死者は660名に及ぶとし、英国BBCは、330名が死んだのではないかと報じた。
嘗て筆者がテヘランへ行った折、イラン航空は北京経由だった。当時、北京往復チケットの格安は週一便のイラン航空で、北京で乗客が入れ替わった。東京からの客の大半は北京でおり、北京からは中国人がどっとテヘラン行きに乗り込んできた。軍人が多い。どうやら中国軍とイラン軍とは特殊な関係があるようだ、と観測していた。
イラン・イラク戦争では、中国は双方に武器を売却し、大いに外貨を稼いだ。
2017年統計で中国とイランの貿易は300億ドル、米国の制裁が本格化する前に、中国はイランのインフラ建設のために1200億ドルを投資するなどと、風呂敷を広げていた。
西側はイランへ経済制裁を強め、日本は今、イラン原油の輸入ができないでいる。中国も制裁に「同調」しているはずだが、実際にはダンピングで相当量のイラン原油を中国は買っている模様だ。
一日最大500万バーレルと言われたイラン原油輸出、昨今は一日100万バーレルに落ちており、国内は不景気、インフレ、とうとうガソリン価格を上げたため、イラン国内では反政府暴動がおこった。軍が出動して発砲、1500名が死亡したと言われる。スレイマニ革命防衛隊司令官殺害事件の前である。
米国への報復を鮮明したイランは国内の治安悪化をすり替えたが、そこに襲い掛かった恐怖が中国からのコロナウィルスという贈り物だった。