仮想通貨問題で再び注目「ダークウェブ」その誕生の経緯を辿ろう

仮想通貨問題で再び注目「ダークウェブ」その誕生の経緯を辿ろう

ダークウェブとは、匿名化ツールでなければ接続できないサイトなどが集まったサイバー空間のこと

ダークウェブ」に存在するサイトは、私たちが普段使うグーグルやヤフーのような検索エンジンでは見つけることができないが、「Torブラウザ」といった特定のブラウザをダウンロードすればだれでも見ることが出来る

一般人からは縁遠い違法な取引が横行している。麻薬や拳銃の密売、クレジットカード番号やパスポートの売買、さらには児童ポルノの提供なども行われている。地下空間でしか扱えない「商品」を取り揃えた様々なオンラインショップも存在する。アマゾンや楽天ショップの地下版といった趣

ダークウェブにアクセスできる「Tor」の背景には、「Onion Routing(オニオン・ルーティング)」と呼ばれる技術がある。その開発が始まったのは1995年のこと。ワシントンD.C.にある米海軍研究試験所(NRL)が諜報活動や捜査、情報源とのやり取りなどを秘匿する目的で研究開発を進めた。そう、現在では悪名高いダークウェブは、元を辿れば米軍が開発したもの

オニオン(たまねぎ)のように何層ものレイヤーの中にネットユーザーを隠すことが可能になるものだった。簡単に言えば、インターネットで目的のサイトに接続するのに、いくつものパソコンなどを数珠つなぎに経由することで、元のユーザーの匿名性を守る仕組み

その後、この技術は「The Onion Routing(Tor=トーア)」となり、非営利団体のプロジェクトとして引き継がれた。匿名の通信を確保する「Tor」は米政府関係者だけでなく、中国やイランなどで検閲をかいくぐったり、独裁国家で活動家らが当局の監視を逃れてやりとりをするために使われるなど重宝されてきた。中東の民主化運動「アラブの春」でも、民主活動家たちを裏で支えたのがこの「Tor」などのネットワークだった。

2016年7月の組織の変更が行われた後、Torは8人の幹部と中核となる80人近いメンバーで構成されている。運営は、個人からの寄付や、グーグルといった大手企業や米国務省などの資金提供で成り立っており、その高い匿名性を維持するためにソフトウェアの改良が続けられている

「なぜこのような通信が必要なのか」という疑問に、

今のインターネット社会では当局の監視の目だけでなく、企業の目にもさらされている。大企業はユーザーの(ネットでのアクセス先など)プライベートなデータを収集して金儲けに使っているからです」と、著者に述べていた。企業の「金儲けの手段」にならないためにも、私たちのような一般人でもTorのような匿名性のある技術の選択肢が必要になる、ということだ。

ただ匿名性が高いがために、その特性を悪用する輩もいる。いわゆる、サイバー犯罪者たちがそれだ。

匿名通信ができる「Tor」のネットワークには、独自のサイバー空間が広がっている。そこは「Tor」のブラウザーを使わないとアクセスできない"闇"の空間で、これこそが今改めて話題になっている「ダーク(闇)ウェブ」と呼ばれている空間なのである(ちなみにTor以外にも、I2Pといった匿名ネットワークも存在する)

「ダークウェブ」では、すでに述べた通り、匿名性を悪用してあらゆる犯罪が堂々と行われている。しかも薬物や偽パスポートなど、そこで行われる商品の売買などには、やはり匿名で利用できる「仮想通貨」が使われていることが多い

Torが多くの犯罪者たちからいまだに信頼されていることは確かだ

世界で悪事を働くハッカーたちは多くの場合、そうしたコミュニティにたむろしており、誰かが持ち込んだサイバー攻撃の「プロジェクト」ごとに自分たちの得意な能力を提供し、役割分担をしながら攻撃を行なっている

例えば標的のシステムの脆弱性を突くハッカーや、マルウェア(不正なプログラム)を組むのが得意なプログラマー、有効な換金手口を知るハッカーなどが徒党を組んで犯行に及んでいるのである。

そして彼らは「Tor」などを駆使して匿名性を保ったまま、犯行を繰り返している――。それが現実だ。

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