日本の遥か先を行く中国・深センの超スマートシステムの実態

日本の遥か先を行く中国・深センの超スマートシステムの実態

現金お断りレストラン

テンセントは、1998年に、深圳大学を出て間もない馬化騰(マーフアタン)が立ち上げたITサービス会社である。「中国版LINE」ことWeChatで大成功し、いまや10億人が日常で使用しており、WeChatがないと中国人の生活は成り立たない

深圳の一般のレストランや、スーパーなどでは、WeChat Payとともに、アリババが運営するAlipayが使用できる。というより、このいずれかで支払いするのが「常識」となっている。

中国の全人口がスマホ決済!

いまや中国の都市部では、スマホ決済は、すでに常識と化している。WeChat Payを使っている人が約8億4000万人、Alipayを使っている人が約5億2000万人いる。合わせて13億6000万人!

なぜ、スマホ決済は中国でこれほど普及し、逆に日本では普及しないのか?

中国の事情から言えば、人民元という紙幣は、信用価値が低い。100元札(約1670円)のニセ札が大量に出回っているので、中国人民銀行(中央銀行)は、それ以上の高額紙幣を作れない。

クレジットカード・・一番の問題は、店員にクレジットカードを渡した時に、磁気を読み取られて、不正に使用されることだった。「信用カードは信用できない」と言って使わない中国人

紙幣とクレジットカードを飛び越える格好で登場したのが、テンセントとアリババのスマホ決済だったのだ。やや大袈裟な言い方をすれば、中国で初めて、「信用できる決済」が現れたことになる。だからこそ、一気呵成に普及していった。

WeChat Payを使って朝コンビニで買い物をし、昼にランチを食べ、夜に映画を観に行ったとする。すると、これらすべての消費情報が、テンセント社にストックされる

テンセント社の本社ビルの前には、前回の第2回で述べたように「共産党とともに創業する」(跟党一起創業)と書かれたモニュメントが建っているくらいだから、個人情報がテンセント社から共産党政権に流れる

プライバシーみんなで晒せば恐くない

それはその通りで、私の消費状況は政府に筒抜けだと思うわ。だけど、この国にいつ、個人のプライバシーが認められた時代があったというの? それに私は、違法行為は一切していないので、プライバシーが政府に知られても、やましいことは何もないわ

中国では、スマホ決済に続いて、プライバシーの点数化にまで広がっている。

アリババは、2015年1月から、ビッグデータとクラウド計算を利用した「芝麻信用」(ゴマ信用)を始めた。これは、ゴマ信用が個人の日々の消費動向を採点していく。そして、消費者の一人ひとりに、350点から950点までの「信用分」(信用点数)をつけるというものだ。

「ゴマ信用」の公式HPによれば、評点の基準は、以下の5点である。

信用履歴:過去の個人の通帳記録の履歴
行為動向:ショッピングや各種支払い、理財活動などの動向や安定性
支払能力:安定した経済源と個人資産
身分特徴:個人の基本的な情報
人脈関係:友人などの信用度

つまり、有名大学を卒業していたり、上場企業に就職していたり、レンタル・サイクルをルール通りに返却していたり、高級レストランで会食していたりすると、自分の点数も上がっていく仕組みだ。逆にそうしたものがなかったり、社会ルールを乱す行為を行ったりすれば、点数は落ちていく。

「ゴマ信用」では、個人を5段階に分けている。350点から550点が「ダメ」、550点から600点が「普通」、600点から650点が「良好」、650点から700点が「優秀」、700点から950点が「超優秀」である。

「普通」以上になると、ホテルのチェックイン時に保証金が不要だったり、飛行機のチェックインで優先的に搭乗できたり、賃貸住宅がスムーズに借りられたりといった恩恵を受けられる。

この「ゴマ信用」は、何と個人間でも使われている。例えば、ある初対面の会社同士が商談する際、互いの社長が自分の「信用分」を見せ合って、信用できる人間であることを示すといったことだ。

お見合いサイトなどでも、自分の「信用分」を公開する若者が増えている。「信用分」が高ければ、お見合いでスムーズに進むのである。

こうしたスマホ決済は、中国で今後とも、様々な形で応用されていくだろう。日本が「おもてなし文化」に安住している間に、中国の先端サービス文化は、不断に進化を遂げている

 


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